VRMMOでネカマをした結果
勢いで書いたやつだけどせっかくなので
VR技術の発達でフルダイブが可能になってから3年が過ぎ、念願のVRMMOが発表されたのは記憶に新しい。
【パラレルワールド】という名で発表されたソレは、日本国内の大手ゲーム会社が力をあわせて共同で作り上げた、日本の技術の結晶とも言える物だった。
外見や性別は脳への影響も考えられて変更不可なものの、映画の様なファンタジー世界に入り込めるゲームは老若男女に受け入れられ、サービス開始から2年が過ぎてもその人気は衰えるどころか加速する一方だ。
俺もそんなゲームに惹かれた一人だった。
ミーティアという女性キャラを使って戦場で暴れまわった結果、付いた称号は鮮血姫。噂ではファンクラブが最近出来たとか出来ないとか。
まぁ、そうは言っても俺は違法コードを使って性別を変更している、いわゆるネカマなんだけどね。
外見はそこまで弄れなかったけど、元が女顔なので気付かれなかったのはラッキーだったと思う。
いや、別にホモとか、そういう方向に興味があるわけじゃなくて、俺は単純に可愛い物が好きなだけだ。
女性キャラの方が可愛い装備が多いし、羨ましいと思っていたらチートコードの事を知って、どうせだったらと思って。
勿論姫プレイみたいな事はしてない。
言い寄って来る男とか気持ち悪いだけだし。
その証拠に今では女性か、相棒のフリードとしかパーティも組まないしな。
相棒のフリードは男だけど何ていうか、弟みたいな感じのやつだ。
俺がフリードの危ない所を助けてから妙に懐かれちゃって、そこから腐れ縁みたいな関係が続いている。
「そろそろ今日は帰ろうぜ、フリード。」
「そうですね。」
今日も2人で狩りをして、そろそろ終わろうとしている所だ。
夕日を背に、フリードは何かを決意したような顔をして俺の方を見た。
「ミーティアさん、ちょっといいですか?」
「なんだよ?」
「実は僕、貴方の事が好きなんです!」
顔を真っ赤にしながらの告白だ。
フリードの顔は真剣で、だからこそ俺もこのまま嘘を吐き続けるのはダメだと思った。
今まで言っていなかったけど、俺がネカマだと打ち明けよう。
信じて貰えなかったら違法ツールの事を教えて、何だったら現実の俺の写真をメールで送っても良い。
これが原因でゲームを追放されたとしても、後悔はない。
「すまないフリード、私は、いや俺は実は男なんだ!」
「知ってます!」
そうか、知ってたか。
って、あれ? 聞き間違えたかな?
「あなたが山田 新太郎(26)だって事も、住所が○●県△×市にある事も既に調査済みです!」
「あれ? え? ちょっと待って?」
「大丈夫、僕は両刀です! どっちもイケますし、新太郎さんは寧ろ好みです!」
「いや、ちょっと落ち着こう? 何か思ってた感じと違う。」
あれ? なんで俺の本名知ってるの? 住所もバレてるっぽいんだけど。
どういう事なの? ちょっと訳が分からないよ。
「すまない、少し混乱してしまったみたいだ。今日はログアウトさせてもらうよ。」
慌てて俺はフリードの制止を振り切りログアウトした。
なにあの子怖い。どうしよう、俺もうアイツに会いたくないんだけど。
VRMMO用のヘッドギアを外して深呼吸する。
どうしよう。住所が知られてるっぽいし、早めに引っ越さないとなマズイかな?
そうだ、明日にでも不動産屋に相談に行こう。
ピンポーン
チャイムが鳴った。
「誰だろう、こんな時間に?」
カチャリ
玄関の鍵が開けられる音がする。
あれ? 俺は誰にも合鍵何て渡してないハズなんだけど
「ミーティアさん、来ちゃいました。僕、フリードです。」
玄関には全裸の細マッチョが立っていた。
彼の下半身には臨戦態勢の獣が1匹、涎を垂らしながら俺に照準を合わせている。
あ、これやばいやつだ。
玄関の扉がゆっくりと閉まる。
迫りくる細マッチョ、逃げる俺。
そこから先の記憶は残念ながら、俺にはない。