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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第二章:決闘をする狩人
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第86話「第一決闘-1」

 火の塔七階、闘技演習場。

 元々ほぼ常に誰かしらが使っており、多くの生徒と教職員を連日集めている闘技演習場であるが、その日は特に多くの生徒が詰め寄せていた。


『さあさあ、やってまいりました。期待の一番。天候は晴れ、時刻も昼を少し過ぎた頃と絶好の決闘日和でございます』

 闘技演習場に底抜けの明るさを感じさせる声が響き渡り、その声が何処から来ているのか分からない生徒は思わず周囲を見渡す。

 そんな生徒たちの視点は、やがて南側の席の一角、横長の机が置かれた場所へと集まる。


『実況は私、報道部五年、ヨコトメ・エスケーがさせていただきます。ちなみに現在私が使っている魔法は風属性下位紋章魔法『拡声器(ラウドスピーカ)』でございます。それともう一つ、本実況は先生方から容認されていますが、基本的には報道部主導でやっている事ですので、興味がある方は是非報道部にお越しくださいませ』

 机の前には細い棒状の物体を持った人間が二人座っていた。

 その内の一人、黒髪の青年の名はヨコトメ・エスケー、メルトレスの侍女であるイニムの兄である。


『では続きまして解説の紹介を』

『きゅっきゅっきゅー、解説のソウソー・スクイルでやんすよ。まあ、あっしの事は狩猟用務員の一員として、この場に居る全員が知っているでやんすよね。今回は観客に一年生が多いと言う事で、出来る限り分かり易く解説するでやんすよー』

 もう一人はソウソー・スクイル。

 ティタンの先輩であると同時に、学園の卒業生でもある人物である。


『はい、ありがとうございます。今回はよろしくお願いしますね。ソウソーさん』

『了解でやんすー』

『では、続けて今回の闘技演習が特別たる由縁でもある、立会人の紹介と行きましょう』

 二人はお互いに一礼をすると、視線を闘技演習場の一角、貴賓席として周囲から隔離されている場所へと目を向ける。

 それに合わせるように観客たちの視線もそちらへと向けられる。


『今回の闘技演習の立会人は三人。まずはオースティア王家第三王女、学園の四年生メルトレス・エレメー・オースティア様!』

「……」

 ヨコトメの紹介に合わせるように、貴賓席に座っていたメルトレスが笑顔のまま、周囲に向けてゆっくりと手を振り、愛想を振りまく。


『続けてメルトレス様の護衛にして学園の四年生であるゲルド・ゴルデン嬢』

「……」

 メルトレスと同じように、ゲルドが小さく礼をする。


『最後に、我が愛する妹にしてメルトレス様の侍女でもあるイニム・エスケーでございます。っておいごらぁ!そこの糞ガキ何イニムに色目を……あばあっ!?』

『ただいま見苦しい音声が流れたでやんす。申し訳ないでやんす』

「ソウソーさんありがとう」

「「……」」

 妹に対する色目を見つけて暴走しかけたヨコトメに対して、ソウソーは容赦なく帯電した手によるツッコミを入れる。

 そんなソウソーに向けてイニムが小さくガッツポーズを取りつつ、表情には出さずに小さく礼をする。

 なお、会場はヨコトメの行動によって若干微妙な空気に包まれてしまっている。


『うぐぐっ……』

『さ、続けて審判に行くでやんすよ』

『あー、はい。分かりましたとも……分かりましたとも』

 ソウソーとヨコトメの視線が闘技演習場の中央、一辺20mの石で出来た正方形の舞台へと向けられる。

 そこには既に三人の男性が姿を表している。


『え、主審を務めて頂くのは闘技演習場の管理人、ヨークシー・デューエル先生。副審を務めて頂くのは、デコン・ポズノレッジ先生とセイゾー・キリダシ先生です』

『副審のお二人には協力ありがとうと言う他ないでやんすね。デコン先生もセイゾー先生も今日の為に休講にしてくれたんでやんすから』

 三人の男性……ヨークシー、デコン、セイゾーの三人は、ヨコトメとソウソーの言葉を気にした様子もなく、幾つかの確認事項を確認し合うと、それぞれの配置につくべく動き始める。

 そして、ヨークシーが舞台の中央、デコンがオース山に近い側の舞台外、セイゾーが王都オースティアに近い側の舞台外に出た所で、次の実況が始まる。


『さて、それでは選手が入場する前に、闘技演習のルールについておさらいしておきましょう。まず舞台は一辺20mの石造りとなっております』

『適度に硬く、適度に柔らかい、色も適度に白いと言う、こういう場に相応しい石材でやんすよー』

『決着がつく条件はシンプルで、一方が舞台外に出る、死亡する、あるいは深刻なルール違反を犯して審判から失格を宣告されるとなっております』

『まあ、勝敗が付く条件に一方が死亡するなんて言っているでやんすが、この闘技場は大紋章魔法使いヒフミニ・ミナタストが作り上げた特殊な紋章魔法……致命的な怪我を負いそうになったら、その攻撃を無かった事にして、場外に転移させると言う方法で保護されているでやんす。なので、安心してみていられるでやんすよ』

『その他細かいルールにつきましては、ルールブックが地の塔の図書館にありますので、そちらをご確認くださいませ』

『まあ、今回はとりあえずとして、遠距離攻撃を行う場合には、必ず何かしらの形で魔法を用いる必要がある。と言う事だけ覚えておけばいいでやんす。これは破ったら一発退場っすから、気をつけるっすよー』

 実況の内容は闘技演習のルールについて。

 尤も、要約してしまえば、魔法を使って相手を舞台外に出せば勝ちと言う至極単純なルールである。


『さて、それではそろそろ選手の入場と行きましょう』

 そうして実況、立会人、審判、ルールと確認が終わったところで、闘技演習場の周囲を囲う観客席の下から、四人の人物がその姿を観客の目に晒しつつ、舞台の上に向けて上がり始めた。

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