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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第二章:決闘をする狩人
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第62話「黒煙-6」

今回は特に人が選び、場合によっては嫌悪感を抱く描写がございますので、ご注意ください。

「ニシュルルル……」

 蛇型魔獣ニクロムソン。

 簡単に説明してしまえば、自身の身体を微妙に熱湯を作れない程度まで加熱することが可能な魔法を操る魔獣であり、その魔法を生活全般に生かして、冬も夏も関係なしに活動することが出来る大型の蛇である。

 そう説明した時、熱湯も作れないのかとよく知らない人間は侮るが……そんな甘い魔獣ではない。

 高熱状態で巻き付かれれば全身の皮膚が火傷を負い、牙から高熱の体液を流されれば身体の中から焼け爛れる事になるのだから。


「~~~~~♪」

 蟷螂型魔獣ダンマンティス。

 こちらは簡単に説明してしまえば、まるで踊っているような独特のステップを踏む事と、鋭利な突起が付いた鎌と言う形の両腕を特徴とする大型の蟷螂である。

 勿論こちらも侮っていい相手ではない。

 踊るような動きは敵対者に自らの挙動を読ませないための物であるし、両腕の鎌は魔法によって状況に合わせた強化が施されるのだから。

 一瞬でも気を抜けば、その動きに翻弄され、接近され、切断力を強化された鎌によって切り裂かれるか、突起の貫通力と筋力を高めることによって引き倒されて殺されるかだろう。


「ニクロムソンが餌として狙うも、攻撃を仕掛ける前に気づかれた。ってところですかね?」

「まあ、それが妥当な所だろうな。でないとこうはならないだろう」

 そんな二体の魔獣は俺とクリムさんの二人から幾らか離れた場所で対峙をしていた。

 ニクロムソンは2m近い長い体の一部を持ち上げ、熱を発しながらしきりに舌を出し入れし、震わせている。

 ダンマンティスは独特なステップを踏みつつ、両腕の鎌を振り上げ、体高0.3m程と言うニクロムソンに比べれば小さい体を大きく見せる事に必死なようだった。


「ティタン」

「はい」

 このまま時間が経てば、二匹は少しずつ距離を取り、そのままこの場から去って行くだろう。

 どちらにとっても相手は正面から襲うのは割に合わない相手なのだから。


「両方とも狩るぞ。お前はニクロムソンをやれ、俺はダンマンティスだ」

「分かりました」

 だが、俺たちがそれを見逃す事はない。

 なにせニクロムソンもダンマンティスも十分に危険な魔獣であり、二匹が今居る場所は安全の確保が依頼されたポイントなのだから。


「好きなタイミングで射ろ。俺が合わせる」

「了解」

 俺はクリムさんが投擲用の短めの槍を構えるのを横目に、呼吸を整え、気配を消しつつベグブレッサーの弓を引く。


「……」

 ベグブレッサーの弓の調子はかなり良い。

 引けば引くほどに自分の手に馴染む感覚がある。

 それこそ、これから自分の手でオース山の樹から作ろうと思っている弓が出来上がっても、予備に回さざるを得ないだろうと思う程度には。

 そして、それほどの弓であるためだろうか、不思議とこれから放つ矢が外れる気はしなかった。

 だからと言って甘く狙うつもりも適当に射るつもりもないが。


「っ!」

 ベグブレッサーの弓から矢が放たれる。


「ふんっ!」

 それと同時に、クリムさんが槍を投げる。


「ニジュ!?」

 俺が放った矢は狙い違わずニクロムソンの首に突き刺さり、貫通。

 その勢いによってニクロムソンの身体を進路上にあった樹に縫い付ける。


「~~~!?」

 その光景にダンマンティスは翅を広げて慌てて逃げ出そうとする。


「『加速(ブースト)』」

「~!!?」

 だがそれよりも早くクリムさんがキーワードを唱え、投槍の中に仕込まれていたらしい紋章魔法が発動、橙色の光と共に投槍の石突部分で爆発が起きて、投槍は加速。

 俺の矢よりも速くなったであろう投槍は、軌道上に存在したダンマンティスの頭部を粉々に吹き飛ばすと、その先にあった樹に大きな音と共に深々と突き刺さる。


「よし、仕上げるぞ。援護を頼む」

「はい」

 ニクロムソンは既に痙攣を始めており、確実に死んでいる。

 ダンマンティスも頭部を失った。

 普通の生物なら確実に死んでいるだろう。

 だが、クリムさんは背中に挿していた槍を抜いて構えると、ダンマンティスに向けて油断なく近づいていく。

 その理由は単純だ。


「……」

「……♪」

 頭部を失ったダンマンティスがその場に倒れることなく、独特のステップを踏みながら、魔法で強化された両手の鎌を当たるを幸いに振り回し続けているからだ。

 頭部を失っても身体に残された魔力と生命力によって、しばらくは生命活動を維持し続けることが出来る。

 それが昆虫系と呼ばれる魔獣の特徴なのだ。


「さて……」

 そしてダンマンティスの場合、力尽きるまでただ遠くから眺めているわけにはいかない理由も存在している。


「ふんっ!」

「……!?」

 クリムさんの槍が振るわれ、両腕の鎌、胸、脚、翅と言った部位があっという間に切り離される。


「トドメだ」

 そして、クリムさんの槍がダンマンティスの腹に突き刺さった瞬間。


「ーーーーー!」

 ダンマンティスの腹を食い破る形で、鋼色の細長い触手のような物が何本も出てくる。

 そして、針あるいは槍のような姿になって、クリムさんに向かって突き出される。

 寄生魔獣ヤリガネムシ。

 ダンマンティスの体内に寄生する魔獣であり、その槍のような体によって鎧の隙間から人を突き刺し、体内から食い殺す事もある危険な魔獣。

 体液は金属性紋章魔法の優れた素材になるらしいが……そんな余裕など出していられない相手である。

 だが、ヤリガネムシたちの攻撃がクリムさんに届く事は無かった。

 何故ならば。


「『焚刑(ステイク)火葬(クリメイト)』」

「!?」

 それよりも早くクリムさんの槍から赤と橙色の光が発せられ、ヤリガネムシごとダンマンティスの腹が激しく燃え上がり、一瞬の内に炭と灰、それに煙と化してしまったからである。

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