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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第二章:決闘をする狩人
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第57話「黒煙-1」

『まあ、どちらの課題もゆっくりとこなす他ない課題じゃ。焦らずじっくり行くとしよう。あ、一瞬とは言え調査は出来たから、今日はこれでお終いじゃ。結果はまた後日教えるから、新しい魔法と魔具弓の練習でもして待っておれ』

 学園長はそう言い残すと、後始末を他の教職員達に任せて、闘技演習場から去ってしまった。

 そして、俺自身としては後始末を手伝いたかった。

 だが、他の教職員から返ってきたのは、『後始末はいいから、図書館にでも行って、少しでも早く課題をこなせるようにしろ』と言う言葉あるいは態度だった。

 確かに俺が新しい魔法を少しでも早く学んだ方が、彼らに対してかける負担と不安は少なくなるかもしれない。

 その為、この場で俺に出来る事は、後はよろしくお願いしますと頭を下げて、迷惑にならないように去る事だけだった。



------------



「さて……と」

 そうして地の塔の図書館にやってきた俺だが……正直に言って悩んでいた。

 次に俺が学ぶ魔法は闇属性下位紋章魔法である『黒煙(ブラクスモーク)』で問題はない。

 ソウソーさん曰くこの魔法はとても汎用性が高く、普通に使うだけでも、逃走時に敵の目をくらます魔法として非常に有用との事だった。

 命の危険にあの獣が出てくると言うのであれば、命の危険を減らせるこの魔法は必須だろう。


「一冊目は『黒き煙の書・闇の狼煙は万象を覆い隠す』」

 そう言うわけで、『黒煙』の魔法について、その応用編まで書かれた黒い革表紙の本を借りるのは確定。


「二冊目は『紋章魔法学-魔具連動技術について』」

 そして、こちらもソウソーさんに言われた事だが、『黒煙』の魔法に合わせて、魔具を使って紋章魔法を発動する為の方法も調べる。

 ベグブレッサーの弓が魔具弓としても使えるようになれば、それは俺にとって大きな戦闘能力増強になる。

 戦闘能力が伸びれば、当然あの獣が出てくる可能性も低くなるだろう。

 なので、この二冊目の普通の本も借りるのは確定。


「……」

 問題はここからだ。

 俺は強くならなければならない。

 狩人として生きるためにも、狩猟用務員として仕事をするためにも、他の人たちの安全のためにも、そして……爺ちゃんの仇を討つためにも。

 そう考えた時、『黒煙』の魔法だけを学ぶのではなく、他に何かしらの魔法を学ぶべきではないかと思ったのである。


「攻撃よりも……防御か」

 俺は考える。

 どんな紋章魔法を覚えるべきかと。

 攻撃に使う紋章魔法は後回しでいいだろう。

 使い慣れていない武器なんて、惨事しか招かないし、学ぶならそれだけを学ぶべきだ。

 回復や補助についても、まずは『黒煙』を学んでからでいいだろう。

 となると後は防御用の紋章魔法……素早く展開できて、身体全体を守れるようなものが有れば、かなり有用なのではないかと思う。


「……。聞いてみるか」

 と、そうやって考えていたところ、俺はカウンターで業務を行っているタイディーさんを見つける。

 タイディーさんはこの図書館の司書だ。

 司書ならば、図書館に所蔵されている本について詳しく、それならば紋章魔法についても詳しいはずである。

 そう判断した俺はタイディーさんに本を二冊持って近づいていく。


「お久しぶりです」

「あら、ティタンさん。貸出ですね」

 俺はまず、二冊の本の貸し出し手続きを受ける。

 貸出期間は二週間、本を読み、必要な内容を書き写すのには十分な期間だろう。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。それでひとつ相談なんですが……」

 二冊の本を受け取った俺はタイディーさんに対して、防御用の魔法が無いかと言う質問をしてみる。

 するとタイディーさんは一度溜息のようなものを吐き……何処か呆れのような物を含んだ瞳を向けながら、小さな声ではあるが、はっきりとこう言った。


「ティタンさん。紋章魔法という物を舐めすぎです」

「え?」

 それは間違いなく俺に対するダメ出しだった。


「少し説明しましょうか。先輩、ちょっとカウンターお願いします」

「分かった。行っておいで」

「えーと……」

 俺はタイディーさんに連れられて、手近な雑談用の小部屋へと移動する。

 抵抗する事も出来たのだろうけど、タイディーさんの鋭い目つきが俺に抵抗を許してくれなかった。


「さて、それで何処から話した物か……ああ、まずはティタンさんが適性のある属性について話してくれますか」

「俺の属性と言うと……火、闇、妖ですね」

「なるほど。となると舐めているを通り越して、無謀ですね。何も知らないのなら仕方がないですけど。これなら一から説明した方が早いですね」

「え……と……?」

 タイディーさんはそう言うと、小部屋に備え付けられている黒板の前に立ち、13属性を描いていく。

 ただし、列挙と言う形ではなく、立体図と言う形で。


「ティタンさんも知っての通り、現在紋章魔法として確立されているのは13属性……つまり、魔、光、闇、火、水、風、地、雷、妖、氷、木、金、天属性です」

「それは分かってます」

「位置関係としては、魔を中心として火、水、風、地で輪っかを作り、光と闇以外の属性は全てこの四つの属性の中間点に存在しているとされます」

 図は魔を中心として、上から時計回りに風-氷-水-木-地-金-火-天-風と言う並びで輪を作っている。

 そして、手前側の風と地の間に雷が、奥の火と水の間に妖があり、輪の内側の天に近い辺りに光があって、木に近い辺りに闇があるようだった。

 うん、此処までは俺も分かっている。


「そしてティタンさんの属性、火、闇、妖の三つですが……この三属性は防御能力が特に低い部類の属性です」

「え!?」

 だが、その直後に言われた言葉は想定外な物だった。

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