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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第二章:決闘をする狩人

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第55話「検査-1」

本日は二話更新です。

こちらは一話目でございます。

 火の塔七階、闘技演習場。

 一辺が20m程有る正方形の闘技場では、昔のとある天才魔法使いが造り上げた特殊な紋章魔法によって致命的な怪我を負う事が無いと言う事で、生徒同士が実戦とほぼ変わらない訓練を行える場として訓練、そして……決闘の真似事に活用されている。

 勿論、使用には事前の申請が必須であるが。


「関係者以外立ち入り禁止……か」

 そんな闘技演習場が存在している火の塔七階への階段は、緊急メンテナンスと言う題目の下、関係者以外立ち入り禁止と言う形で昨日今日と封鎖されていた。

 これは異常な事である。

 確かに闘技演習場がメンテナンスを理由として封鎖される事はある。

 だがその場合は事前に通知されており、今回のようにその日入っていた闘技演習場の使用予定を詳しい理由の通達もなく無かった事にして、二日もの間、半ば無理矢理封鎖する事はまずない。

 例え今が四月で、新年の生活や新しい授業に慣れる途中であるために闘技演習場の使用頻度が低いと言ってもだ。


「……」

 俺は関係者以外立ち入り禁止を告げる看板の横を通り抜け、ゆっくりと階段を昇る。

 狩猟用務員である俺の姿を誰かに見られれば何かを言われるかもしれないが、何と言われようとも俺が今回の封鎖の件の関係者……いや、当事者である事は間違いないので、何も問題はない。

 問題はないが……足取りはどうしても重くなる。

 封鎖の原因が俺一人にあると言う事実の為に。

 学園長による解析の結果が今から不安で仕方がないがために。


「うむ、時間通りに来たようじゃな」

「今日はよろしくお願いします。学園長」

 闘技演習場には既に学園長と非番であるらしい教職員たちが武装した状態で何人も居り、俺の位置からは見えないが、闘技場を囲むように設営された観客席にも人が居る気配がした。

 そして、闘技演習場の白めの石の床には、俺の語彙と知識では複雑で緻密としか称しようのない紋章が様々な色のチョークで描かれていた。

 どうやら学園長による俺にかけられた魔法を調べる準備も、万が一の事態が起きた時の備えも既に整っているらしい。


「……。言っておくが、この準備については……」

「分かっているので大丈夫です。俺でも必要だと思いますから」

 俺は闘技場の台の上に乗り、学園長に近づく。

 学園長はそんな俺の挙動と反応から、周囲の物々しい状態について説明すべきだと判断してくれたようだが、その心配は無用という物である。


「万が一俺がまた獣の姿になったら、その時は躊躇いなくお願いします」

「そんな事態にならない事を儂としては望むがの。それと、この備えは君だけを警戒しているわけでは無い」

「『破壊者(ブレイカー)』も警戒している……と?」

「うむ、儂自身は無いと思っているし、例え何かを仕掛けられても何も出来ない可能性が高いが……それでも備えは必要だと言う意見が多くての。この状況じゃ」

「なるほど」

 が、どうやら学園長たちが警戒しているのは俺だけでなく『破壊者』もだったらしい。

 尤も、もしも『破壊者』が邪魔をするつもりなら、また時間を止めて仕掛けてくるだろうし、学園長が言うように何も出来ない可能性の方が高そうだが。


「まあ、何にしてもじゃ。面倒事が起きると言うのなら、早く済ませてしまった方がいいじゃろうし、面倒事が起きなくてもこの件は早く済ませてしまうべきじゃ」

「そうですね」

「と言うわけで、ティタン君。こっちに来るんじゃ」

「はい」

 俺は学園長の後について、闘技場の床に描かれた巨大な紋章の一角、人一人が丁度立っていられる程度の大きさの円の中に入る。

 その円の中だけは、他の場所と違って何も紋章が書かれていなかった。

 恐らくだが、これから発動する魔法の内容的に、ここが対象者が立つ場所と言う事なのだろう。


「さて、改めて説明しておくぞい」

 円の中に入った学園長が俺に対してこの巨大な紋章を使う紋章魔法についての説明をしてくれる。

 学園長の説明によれば、この紋章魔法の名称は『魔紋発動(スペルブート)履歴探査(ヒストリー)』と言い、対象者が使った紋章魔法がどのような物かを調べる紋章魔法であるらしく、本来は紋章魔法を使った事件の捜査などに利用される魔法だそうだ。

 ただ、闘技場を埋め尽くすようなサイズから分かるように、普通の『魔紋発動履歴探査』ではなく、隠蔽呪文対策を仕込んだり、効果を対象者にかけられた紋章魔法の調査に変えるなどのアレンジが幾つも仕込まれているとの事だった。


「そんなわけで君に危険が及ぶ可能性はない。ないが……万が一何かしらの違和感を感じたら、直ぐに左手を上げるように。その時は即座に魔法を停止すると約束しよう」

「分かりました」

 俺は学園長の言葉に小さく頷く。


「では、始めるとしよう」

 学園長が距離を取り、真剣な顔つきで紋章の端の方に手を付ける。

 俺もそれに合わせて、少しでも学園長が調べやすいようにと全身の力を抜くようにする。

 周囲に詰めて、俺たちの事を見守る教職員達も、何が起きてもいいように構える。


「『魔紋発動(スペルブート)履歴探査(ヒストリー)・改』」

 そうして学園長がキーワードを言った瞬間、闘技場に書かれた紋章が色とりどりの光を放って輝きだし、辺り一帯に光が満ち溢れていく。

 そして……


「む……!」

「へ?」

「「「!?」」」

 闘技場全体を包み込むような巨大な爆発が起きた。

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