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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第二章:決闘をする狩人
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第50話「新しい弓-5」

「……」

 ウエーホン魔具店の中は一言で言えば妙な空間だった。

 魔具店の名に相応しく、紋章を描くのに使う筆やペン先、魔具に加工できる魔獣の骨や角の粉末、チョークとして成形するのに欠かせない結合剤や金筒と言った物は当然のように置いている。

 紋章を描く対象として、羊皮紙や均等な大きさと厚みに成形された石も置かれている。

 だが俺に分かるのはそこまでだ。

 視線を少し横にやれば、細長い金属の棒や、その棒に近い長さを持った太さ違いの筒のようにどう使うのかまるで分からない道具類がまとめられている空間がある。

 更に視線を奥の方にやれば、剣、盾、槍、斧、そして弓と言った魔具店には普通置かれていないであろう装備品の類が所狭しと置かれていた。

 一体何に使うのだろうか?

 店内に漂っている妙な香りと言い、独特な空気を醸し出している店内の装飾と言い、本当に謎の空間である。


「こっちでやんすよ」

「あっ、はい」

 俺はソウソーさんの声がした方に向けて、細い通路を歩いていく。

 店内に他の人影は見えない。

 どうやら、今は俺たち以外に客は居ないらしい。


「さ、まずは自己紹介と行くでやんすよ」

「分かりました」

 やがて俺の視界にカウンターに肩肘を付いているソウソーさんの姿と、カウンターの向こうの椅子に座っている茶髪に緑色の目をした男性の姿が入ってくる。

 恐らくだが、彼がウエーホン魔具店の店主なのだろう。


「王立オースティア魔紋学園の狩猟用務員を今年から勤めさせていただいているティタン・ボースミスです」

 俺は店主と思しき男性に向けて小さく頭を下げながら自己紹介をする。


「ボースミス?」

「メテウスの弟でやんすよ。血は半分しか繋がっていないでやんすが」

「なるほど。ああ、吾輩がウエーホン魔具店九代目店主コルテ・ウエーホンである。メテウスの弟であるならば、是非ともよろしくなのである」

 そう言うと店主……コルテさんが右手を前に出して、握手を求めてくる。

 断る理由もないので俺はコルテさんとの握手を素直に行う。


「ソウソーさん?」

 で、コルテさんの言葉の意味が分からないので、ソウソーさんに疑問の瞳を向ける。


「あ、言ってなかったでやんすけど、あっし、メテウス、コルテ、それに学園の守衛をやっているリベーリオの四人は学園の同級生で、よく一緒に行動していた親友だったんでやんすよ」

「いやぁ、あの頃は毎日が楽しかったである。メテウスが策を練り、吾輩が策に必要な道具を作り……」

「あっしが仕掛けをした上で、リベーリオが動く。本当に楽しかったでやんすねぇ……」

 何だろうか……凄く気になりはする。

 だが、ソウソーさんたちが何をしていたのかを聞いたら、俺が今までメテウス兄さんに抱いていた畏敬の念が粉々に打ち砕かれるような……そんな予感がしてならない。

 うん、聞かないでおこう。

 俺がメテウス兄さんに会ったのは、メテウス兄さんが学園を卒業してからなのだし、俺が知っているメテウス兄さんの方が近い年なのだから、聞かないでおこう。


「ゴーリのハゲ熊は元気であるか?」

「バリバリ元気っすよ。先日もブランチディールの突進を正面から受け止めてたでやんす」

「相変わらずの剛力っぷりであるなぁ」

 そもそも今回店に来た理由は別にあるわけだし、そちらを優先しよう、そうしよう。

 よし、そうと決めたら会話を切るためにも行動あるのみである。


「あの、すみません。今日は俺の武器を買いに来たんですけど」

 俺は楽しそうに会話をしているソウソーさんとコルテさんの間に割って入るように声を上げる。


「あの時は……と、すまなかったである。武器であるか……種別は?」

「弓です」

「ふむ……」

 俺の言葉にコルテさんは顎に手をやり、何かを考え始める。

 そして、ソウソーさんに視線を向ける。


「ソウソー、魔具弓の説明はしたであるか?」

「してないでやんす」

 コルテさんの問いにソウソーさんは何故か胸を張って自信満々そうに答える。

 それにしても魔具弓?

 普通の弓とどこが違うのだろうか?


「それの説明をしないでウチに来られても困るのであるが……」

「いやぁ、ちょっと昼に面白い事が有って、機会を逃してしまったんでやんすよ」

「なら、今からでも説明をするのである。吾輩はその間にノンフィーのせいで食べれてない昼飯と、魔具弓のサンプルを幾つか持ってくるである」

「分かったでやんす。本当はこの時点で丸投げしたかったんでやんすがねぇ」

「相変わらずであるなぁ……」

 と、俺がそんな事を思っている間に、コルテさんはカウンターを離れ、店の奥の方に向かって行ってしまう。

 えーと、ソウソーさんが俺に説明するのは良いとして、店員も残さずに店主が何処かに行ってしまっても大丈夫なのだろうか?

 いやまあ、何かしらの魔法による防犯策は取ってあるのだろうけど……少し不安になる。


「さて、ティタン。折角でやんす、魔具について一通り話してしまうでやんすよ」

「あ、はい。ちょっと待ってください」

 俺が気にする事ではない。

 そう判断すると、折角なので俺はカウンターにメモ取り用の羊皮紙を広げる。


「これで大丈夫です」

「本当に生真面目でやんすねぇ。そこまで詳しくはやらないっすよ……ま、始めるでやんすよ」

 そして、俺の準備が整うと共に、ソウソーさんによる魔具の説明が始まった。

09/01誤字訂正

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