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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第一章:学園にやってきた狩人

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第35話「護衛任務-4」

「では、魔獣について……そうですね、彼らがどういう基準で獲物を決めて、襲うのかについて話しましょうか」

 朝食である乾燥野菜を戻したスープが出来上がり、パンを食べ始めた所で俺は魔獣について話す。


「どういう基準で襲うか。ですか?」

「肉食性の魔獣なら目に付いた生き物ならば、見境なく襲うのでは?」

「いえ、彼らは割と分かり易い基準で襲う相手を決めてますよ。それに……」

「それに?」

 俺は森の方に指を向け、メルトレスたちの視線を森の奥の方へと誘導する。


「あ……」

「アースボア……」

「え、でも……襲って……来ない?」

 幾らか離れた場所、木々の間に居たのは一匹のアースボアだった。

 そのアースボアはメルトレスたちの事をしばらく見つめていたが、やがて諦めたように踵を返し、森の中へと消え去って行く。


「もしも、彼らが見境なく襲ってくるのであれば、この場でも山道でも襲われています。メルトレスさんたちは気づいていないようでしたが、山道でも何度か魔獣たちは俺たちに近づいていましたよ」

「「「……」」」

 俺の言葉にメルトレスたちは信じられないと言う表情を浮かべている。

 だがそれも当然の事なのかもしれない。

 メルトレスたちにとって魔獣とは遭遇した時点で攻撃して仕留める相手であり、出会えば戦う以外に手はない存在であると言う認識なのだから。


「……。ティタン様、あのアースボアはどうして私たちの事を襲わなかったのですか?」

「簡単に言ってしまえば、割に合わないからです」

「割に……」

「合わない?」

 魔獣に知性があるような俺の物言いに、メルトレスたちの表情が困惑に変わる。


「肉を食べる魔獣が攻撃を仕掛ける相手は、基本的には子供や病気または怪我を負った者、あるいは油断している者……つまりは一方的に狩れる相手であり、成長した者や万全な状態にある相手は襲おうと考えないんです」

「反撃を受けて傷を負えば、自分が獲物にされるから。ですか?」

「その通りです」

 だが俺が魔獣が獲物として見る相手について話すと、メルトレスは少し嫌な顔をした後に納得は出来たのか、襲わない理由を自分で考え、話してくる。


「なのでこちらが油断ならない相手である。そう示すだけで、大抵の魔獣は去って行くんです」

「では、もしもこちらが反撃の姿勢を示したのに、襲い掛かって来るとしたら?」

「その場合は魔獣が冷静な判断力を失っていると考えていいですね。具体的に言えば、子連れ、極度の飢餓、あるいはお互いの距離が近すぎる。と言ったところでしょうか。まあ、ドラゴンのように強力な魔獣だと、こちらの姿勢なんてお構いなしですが」

 ゲルドの質問に対して俺は具体的な例を示しつつ答える。

 例としてドラゴンを出したのは……実際に我が身を持って、経験したからだ。


「ちなみに、こちらが油断ならない相手だと示すにあたっては、相手の目を見るのが有効です。逆にやってはいけないのは、背中を向けて一目散に逃げ出す事ですね。相手に狩れる相手だと思わせてしまいますから」

「そうなると『コード2』と言うのは……」

「こうした対応をしてなお襲い掛かってくるような相手では、反撃か逃亡の選択を採るしかありませんから、そういう時用です。俺の説明不足でしたね。すみません」

 俺は自分の目を指差しつつ、イニムの質問にも答える。

 それにしても、学園は何故、魔獣に対して最も簡単な対処法であるこの方法を教えていないのだろうか?

 状況に合わせて戦う戦わないの判断をしてもいいと思うのだが……いや、偶々メルトレスが知らないだけの可能性もあるし、後でゴーリ班長に確認を取ってみるか。


「それで、油断ならない相手だと示すのと同じくらいに大切なのが、相手の接近にいち早く気づく事ですね」

「襲われる前に気づければ、こちらが気付いている事を相手に教えられるから。ですね」

「そうです」

 俺は次に隠れている魔獣を発見する方法について話し始める。

 ただこちらについてはあまり言えることはない。


「ただ、見つけられるかどうかは、魔法を使わないのなら、慣れや経験によるところが大きいです。これは俺もやっている事ですが、足音を出さないように気を付けたり、周囲の風景と同化するようにしたり、相手の風下に立って臭いが伝わらないようにしたりと、狩る側は相手に自分の情報が伝わらないように細心の注意を払いますから」

「まるで暗殺者ですね……」

「実際、似たような物だと思いますよ。狩人にとって獲物を狩る際の理想は、正面から一対一で仕留める事ではなく、相手の頭に矢が刺さるまで自分の存在を認識されないように狩る事ですから」

「まるでじゃなくて暗殺者なんですね……」

「でもそうなると気配と言うのは……」

「ええ、音や臭いだけでなく、体温や魔力といった自分がそこに居ると示すような情報全てを一括りにしたものと俺は考えています。ですから、普段から抑えておいて、必要なときには可能な限り消すんです。ただ、そうだと分かっていれば見つける事は幾らか簡単になると思います」

 俺の言葉にメルトレスたちは何処か感心したような雰囲気を出しながら、頷いている。


「と、魔獣についてはこんな所ですね」

「なるほど。とても興味深い話ありがとうございます。ティタン様」

「何かの役に立ててもらえれば、ありがたい話です」

 魔獣について話を終えると、俺たちは後片付けを行ってから、拠点を出発する。

 予定ではこれからもう少し山を登り、昼を迎える少し前ぐらいから降りる予定である。


「では、出発しましょうか」

「「「はい」」」

 そして俺たちは再び山道を歩きはじめた。

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