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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第四章:射抜く狩人
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第179話「決戦-6」

「ガアアアァァァッ!?」

 イマジナの絶叫が響き渡り、(ルトヤジョーニ)が乾いた音を立てて地面に転がる。

 が、俺はそんな絶叫など気にもせずに、ベグブレッサーの弓に次の矢をつがえる。

 そして同時に攻撃がどれだけ逸れたのかを頭の中で考える。

 今の攻撃、俺はイマジナの身体を頭から股間にかけて射ぬくつもりで放った。

 だが、実際にはイマジナの右腕が消し飛んだだけだった。

 つまり、消し飛んだ範囲と俺が矢が存在する可能性を持たせた範囲の大きさから考えて、身体の中心部から、横に伸ばした右腕に当たるだけ……ほんの数十cmだけ矢の軌道はイマジナの右斜め前か斜め後ろにずらされた事になる。


「なら、次はこれぐらいか」

 俺は次の矢を左手で右腕の切断面を抑えているイマジナに向けて放つ。

 当然、致命傷を確実に与えられるように矢の存在範囲を曖昧化させた上でだ。


「くっ……!」

「……」

 だが矢が届くよりも早くイマジナは動く。

 痛みを堪えつつ前に跳び、俺の矢の効果範囲外に飛び出て、俺の矢が地面にあたって土煙が巻き上がる中で

宙に居る俺を睨み付けてくる。

 その目は痛みを堪えてはいるが……戦意は全く衰えていないようだった。


「はぁはぁ……空を飛ぶとは……文字通りの化け物だったという事ですか」

「……」

 俺は翼を動かし、次の矢を……確実に相手を仕留めるべく込められるだけの魔力を込め、材質そのものも出来る限り良くした矢をつがえつつ、ゆっくりと地上に降りる。

 そして、イマジナとルトヤジョーニの間に入るように動く。


「これ以上会話をする気はない。と言う事ですか」

 イマジナの右腕は既に赤い氷に覆われ、それ以上出血することが無いようになっていた。

 どうやら氷属性の魔法によって止血したらしい。


「いいでしょう。そちらがその気ならば……」

「……」

 イマジナが左手に魔力を集め出す。

 やはり、イマジナに諦める気という物はないらしい。

 同時に俺の背後ではルトヤジョーニが普通の人間には分からないように静かに魔力を高めていた。


「こちらもそれ相応の対応をさせてもらうだけです」

 イマジナの左手に細長い刃を持った氷の剣が生成される。

 そしてそれと同時にルトヤジョーニは魔力を動かし始め、俺もそれに合わせるように振り返る。


「なっ!?」

『っツ!?』

「『魂狩り(ブラドボーンド)の血矢(チェイサー)』」

 驚くイマジナとルトヤジョーニの前で俺の弓から衝撃波と共に矢が放たれる。

 矢は赤黒い光を残しつつ真っ直ぐにルトヤジョーニの下へと飛んでいき……


『ぐぎ……ィ!?』

 まずは杖……ルトヤジョーニの肉体そのものを破壊。


『だ……ガ……?』

 続けてルトヤジョーニが放とうとしていた魔法を破壊。


『ナ……!?』

 そして最後に……


「終わりだルトヤジョーニ」

『そんな馬鹿なあああぁぁぁァ!?』

 魔法の繋がりを辿る事によってルトヤジョーニの魂を捕捉し、『黒き獣の鵺』の爪を以って魂そのものを破壊する!


「そんな……馬鹿な……」

「さて……」

 破壊に伴って舞い上がった砂煙が晴れた時。

 既にルトヤジョーニだった杖は跡形もなく、その場には人骨のようなものの欠片が幾つか転がっていただけだった。

 どうやら、今までは俺と同じように何かしらの魔法によって外見を変えていたらしい。

 だがそれだけだ。

 再生する前兆のようなものは見えないし、気配も感じない。

 ルトヤジョーニは……完全に死んだのだ。


「後はお前だけだな。イマジナ・ミナタスト」

「……」

 俺は次の矢をベグブレッサーの弓につがえる。

 既にルトヤジョーニがイマジナにかけていた矢除けの魔法は消滅している。

 つまり、普通の矢でも当てる事が出来るのであればイマジナを殺す事が出来る。

 そう、当てる事が出来れば。


「いいでしょう」

 イマジナが左手に持った氷の剣を構え直す。

 そこには油断も慢心も……痛みによる動きの鈍りさえも既になかった。

 あるのは己の全てを一本の剣に込める戦士の姿だけである。


「相手をしようではありませんか。私だけの力を以って」

 故に恐ろしい。

 ルトヤジョーニと一緒に居た先程よりも遥かに。

 一瞬の油断すらなくとも致命傷を負いかねないこの状況が。


「命乞いをする気はないのか?もしかしたら効くかもしれないぞ」

「はっ、馬鹿らしい。命乞いなどするぐらいなら初めからこんな道は歩んでいませんよ」

「こんな道……か。悪党の道でも極めるつもりだったのか?」

「いいえ、私が求めるのは卑小な才しか持たぬ私が自らの技術を、周囲の人間を、この世のすべてを利用すれば何処まで行けるのかと言う探究の道ですよ」

 イマジナの顔に笑みが浮かぶ。

 尋常ではない殺気と悍ましさを伴って。


「そう、善も悪も私には関係ない。私が求めるのは究極の自己満足です。ですから……」

 イマジナの剣の切っ先が俺に向けられると同時に、何時でも突けるように肘が曲げられ、脚も片足が前に出される。


「ティタン・ボースミス。貴方はこの場で殺します。ただただ私が勝利の快感を得る為だけに」

「やってみせろ。この俺はお前如きにやられるほど弱くはない」

 対する俺も呼吸を整えつつ弓を引き絞り、イマジナの胴へと狙いを定める。


「ふふふふふ……はははははっ!」

「すぅ……」

 そしてイマジナが動き出すと同時に俺の弓から矢が放たれた。

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