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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第四章:射抜く狩人
153/185

第153話「焚火-4」

「此処も異常なしだな」

「みたいですね」

「良い事だ」

 さて、その後も何事もなくポイントの確認と危険な魔獣の討伐は行われ、俺たち三人はオース山の中で学園の敷地として扱われている場所の最上部までやって来ていた。

 で、此処からは下りと言う事で、現在俺たちはちょっとした休憩を取ることになった。

 なお、『松明(トーチ)』については今も維持中である。


「それにしても……境界って役に立つんですかね?」

「ん?どういう意味だ?ティタン」

 俺は境界を見ながらふと思った事があり、本音を呟いてしまう。

 すると俺の呟きが聞こえていたのか、ゴーリ班長が質問をしてくる。


「えーと……オースティア城での一件はゴーリ班長も知っていますよね」

「ああ勿論だ」

「あの時の魔法使いの男を操っていた禁術使い……推定理神ですけど、俺の考えが間違っていなければ、アイツは空を飛べるんですよね。でも境界は空全体を覆っているわけじゃない。だからどうなのかなと思ってしまいまして」

「ああ、その事か」

 俺の言葉にゴーリ班長は納得してくれたのか、小さく頷いてくれる。

 なお、あの時魔法使いの男を操っていた禁術使いについては、その言動とライ・オドルの言葉から、理神を名乗る者ではないかとソウソーさんたちは考えている。

 そしてそれは恐らく正しい。

 ノンフィーさんから聞いた話が正しければ、ルトヤジョーニが理神を名乗るぐらいは普通にありそうだと感じたからだ。

 つまり、禁術使い=理神=ルトヤジョーニと言う事である。


「その件については境界以外の方法で対応すると学園長は仰っていたな」

「境界以外の方法?」

「ああ、それが具体的にはどんな方法なのかについては教えてもらえなかったがな。ただあの分だと……お互いの存在を知らない複数のチームがそれぞれ別に動いているんだろうな。禁術対策もあるし」

「なるほど」

 さて、俺の懸念についてだが、どうやら無用な心配であったらしい。

 ゴーリ班長の言う通りならば、こうしている今も何かしらの方法……恐らくは複数の手段でもって学園の上は警戒されているのだから。

 うん、樹や崖に隠れて見えない地上部分は境界で対応し、それ以外は別の方法で対応する。

 言われてみれば簡単な事だが、実に効率的な方法である。


「ああ、そう言えばもう一つ気になる事があるんですけどいいですか?それと、これはゴーリ班長だけでなくクリムさんにも聞きたいんですけど」

「何だ?」

「どうした?」

 と、話が理神の件に及んだ為か、俺は以前から聞こうと思っていたことを思い出す。


「矢除けの紋章魔法って存在しますか?」

 それはライ・オドルの闘技演習の際に恐らくは理神がライ・オドルにかけたであろう魔法について。

 あの闘技演習の時、ライ・オドルに向けて俺が放った矢は、不自然な軌道を描いて外れたものが数多くあった。

 他人にかけられて、自分に対して使えないなどと言う事は有り得ないだろうし、ルトヤジョーニとの戦いでまた使われる事は想像に難くなかった。

 そう言うわけで、俺はゴーリ班長とクリムさんにそう言う魔法が実際に存在するのかを尋ねてみたのだった。


「矢除けの紋章魔法か……まあ、色々あるな」

「色々?」

「具体的な原理や対象によって色々とバリエーションがあってな。目標とする結果は同じだが、過程が違うんだ」

「なるほど」

 ゴーリ班長とクリムさんの答えは、矢除けを目的とする紋章魔法は存在するという物。

 ただ、矢除けを目的とする紋章魔法は一種類だけでなく、何種類もあるとの事だった。


「で、そう言う質問をティタンがしたという事は、ティタンはそれを破りたいという事でいいんだな」

「はい、そうです。クリムさん」

 では、そんな何種類もある矢除けの魔法をどうやって破ればいいのか。

 どうやらクリムさんとゴーリ班長は人生経験が豊富なだけあって、当然の様に知っているらしい。

 ならば心を正して、きちんと聞くとしよう。


「そうだな……矢除けの紋章魔法を破る一番簡単な方法は、ライ・オドルとの闘技演習でお前がやったように、矢除けの紋章魔法など関係のない、距離、速さ、威力を持った攻撃を放つ事だな」

「まっ、ゼロ距離で撃ち込んじまえば軌道を逸らす暇もないしな」

「それは……まあ、そうでしょうけど」

 一番簡単な方法はゼロ距離で撃ち込む事。

 確かにそれならば矢除けの紋章魔法は関係ないだろう。

 発動する暇も方法も無いのだから。

 しかしその方法は……うん、何かが違う気がする。

 ではそれ以外の方法となると?


「それ以外の方法となると、矢除けの紋章魔法がどういう原理や条件でもって矢……いや、遠距離攻撃を逸らすかだな」

「条件……ですか」

「ティタンのように膨大な量の魔力と素材を常に備えているならともかく、普通の魔法使いでは流石に常時矢除けの紋章魔法を展開し続ける事は出来ないからな。何かしらの条件でもって発動するか否かを決めている場合が多い。だからその条件の穴を突いてやればいい」

「なるほど」

 クリムさんの言うように、相手の紋章魔法の発動条件や、どうやって逸らすかを読み取って、その穴を突くように攻撃を仕掛ければいいらしい。

 つまり、金属製の物に反応するならば、金属が付いていない矢で、視認することで反応するならば、死角から矢を射る事で。

 そうやって相手の矢除けの魔法の穴を突く事で破る事が出来るらしい。


「まあ、ゼロ距離が一番面倒がないがな」

「だな。反撃があるにしてもそれが一番早い」

「……。気持ちは分かります」

 尤も、総評として一番楽なのが、距離を詰めてしまう事と言うのは揺るがない事であるらしい。

 まあ、これについては俺も実際にやったから理解は出来る。


「うし、それじゃあそろそろ次に行くぞ」

「分かった」

「はい」

 さて、どうやら休憩時間は終わりであるらしい。

 俺たち三人は立ち上がると、次のポイントに向かうのだった。

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