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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第三章:夜に舞う狩人
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第141話「事情聴取-2」

「じゃ、状況を整理するでやんすが、まず昨晩に起きた事件は二つ。ティタンが暗殺者に襲われた件と、メルトレス様が正体不明の魔法使いに襲われた件でやんす」

 ソウソーさんの言葉に部屋の中に居る全員が頷く。


「前者については発生そのものについては予定通りっすが、後者の件の魔法使いに事件を利用され、暗殺者とは言え死者を四人も出てしまったでやんす。まあ、おかげで暗殺者のリーダーが口を簡単に割ってくれるようになったでやんすが……正直気分としては微妙な所っすよね」

「そうですね。どうにか出来なかったのかとは思います」

「複数の禁術が使われていた以上、ティタンにどうにかしろとは間違っても言えない件でやんすけどね」

 俺が暗殺者に襲われた件は……うん、少々悔しくはある。

 あの魔法使いが関わっていなければ、あの場で死人が出る事は無かったはずなのだから。

 それに禁術が使われていたと言っても、ノンフィーさんのような手練れが居れば、生け捕りも可能だったはずなのだから。


「で、この件の首謀者についてでやんすが、既にほぼ全員捕縛済みでやんす」

「ほぼ全員?」

「貴族主義者の貴族四人に、その部下たち数名、裏切り者が数名、ああそれとティタンを襲った暗殺者のリーダーも一応は捕縛扱いっすね。と言っても、仲間をあんな風に使われた事もあって、とても協力的でやんすが」

 俺の件の首謀者と言うのは……まあ、元々吊り出して掴まえる予定だった貴族の事だな。

 そいつらが捕まった事は素直に嬉しい事だ。

 なにせ彼らがソウソーさんの言うとおりの貴族主義者なら、ライの実家だったオドル伯爵家と同じように、多くの人間に迷惑をかけて来ているはずなのだから。

 今回の件で捕まえる事が出来たなら、過去の罪ごとまとめて裁けるはずである。

 しかしほぼ全員と言う事は……逃げているのが居るという事か。


「ん、ティタンの想像通りっす。一人だけでやんすが、首謀者格の貴族が逃げているでやんす」

「何者ですか?」

「名前はイマジナ・ミナタスト。ミナタスト子爵家の当主で、最近貴族主義者として彼らの輪に加わったらしいっす。ミレット……ああ、暗殺者のリーダーの事っすが、ミレットからも雇い主の一人として今回の件に加わっていた事の証言は得られているっす」

「ミナタスト……」

 ミナタストと言うと……闘技演習場に仕掛けられている紋章魔法を造り上げたヒフミニ・ミナタストの子孫か何かだろうか?

 家の名前が同じだし。

 しかし、逃げた?

 一体何処にどうやって逃げたというのだろうか?

 俺が見た限り、オースティア城はそんな簡単に逃げ出せるような構造や警備ではないと思うのだが……。


「で、ティタンに一つ確認でやんすが、ティタンが舞踏会の時に感じた殺気。アレの出元の男はどんな男だったでやんすが?」

「どんなって……」

 俺はソウソーさんの言葉に答えるべく、あの時の事を思い出す。

 そして、素直に答える。


「黒い髪に金色の目を持った男でしたよ」

「他に特徴は?」

「いえ、特には」

 しかしなぜこの場であの男の事を聞くのだろうか?

 あの男はメルトレスの件には関わっていても、俺の件には関わって……いや、まさか……そう言う事なのか?


「ソウソーさん、もしかして……」

「ティタンの思っている通りでやんす。今逃げている一人、イマジナ・ミナタストは黒髪に金色の目を持った男でやんす」

「それじゃあ……」

 ソウソーさんは一度頷いてから口を開く。


「今オースティア王家では、イマジナ・ミナタストをオースティア城に暗殺者を連れ込んだ罪で捜索しているでやんす。が、ティタンの証言が確かならば、イマジナは禁術を使い、王族を狙うという大罪までも犯している可能性があるでやんす」

「……」

 ああなるほど、そう言う事なら色々と納得がいく。

 暗殺者たちを陽動として使えた事も、兵士たちに禁術を掛けれたことも。

 暗殺者を雇っている側なのだ。

 暗殺者に何処で事を起こすかの指示も出せるだろうし、警備の兵士たちが何処を通るかも把握しているはずだ。

 そしてその裏でどうやって動けば自分は問題なく逃げれるのかも。

 禁術と呼ばれるような紋章魔法まで使えるのであれば、尚更だろう。


「あー、ソウソー殿。少しいいですかな?」

 と、此処で見覚えのないメモを取っている男性が一人手を挙げる。


「何でやんすか?」

「ティタン殿の殺気を感じ取る力と言うのはどれほどの物なのでしょうか?イマジナが禁術使いである、あるいは禁術使いと繋がりがある可能性は否定すべきではないと思いますが……」

「ああ、信頼性の問題っすか。その点についてはほぼ心配しなくていいっすよ。ちょっとした壁ぐらいなら無いも同然に扱えるレベルでやんすし、森の中なら百m以上離れた場所に居る魔獣の位置と動きを正確に把握して見せるでやんすよ。確実とまではいかなくても、十中八九間違いはないっす」

「そ、それほどですか……」

 どうやら俺の気配の探る能力に疑問を感じて手を挙げたらしい。

 まあ、妥当な質問ではないかと思う。


「まあ、とにかく現状ではイマジナは禁術使いとして扱い、追うべきでやんすね。使われてから気づいたのでは手遅れな紋章魔法も多いでやんすから」

「分かりました。連絡しておきましょう」

 ただあの殺気を感じ取った張本人としては、あの男がイマジナ・ミナタストかは分からないが、メルトレスに襲撃を仕掛けてきた魔法使いの男と関わりがあった事だけは絶対に間違いないと思う。

 あんな悍ましい気配を発する事が出来る人間がそんな何人も居るとは思えない。


「と言うわけで、メルトレス様の件に話を移すっすよ。イマジナの件以外にも色々と聞きたい事があるでやんすからね」

「あ、はい。分かりました」

 さて、次の話はメルトレスの件についてのようだが……何となく聞かれるのは俺自身の事についてではないかと思った。

 そしてその考えは正しかった。

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