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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第一章:学園にやってきた狩人
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第12話「適性検査-2」

「此処がそうだ」

 風の塔を出た俺とクリムさんは、黄色に塗られた扉を出て、赤く塗られた扉が付いた塔……つまりは火の塔に入る。

 そして、クリムさんの案内で、火の塔一階の中でも、用務員小屋と森に近い方の部屋の前にやってくる。


「検査室……ですか」

「そうだ。ここで適性検査を行う。後は……そうだな、未知の素材が見つかった時に、どの属性に適した素材なのかを調べるのもこの部屋だ」

「なるほど」

 部屋の名前は検査室。

 扉は火の塔特有の構造として、金属で補強されている見るからに頑丈そうな扉になっているし、壁も他の塔より頑丈そうに見える。


「では入るぞ。クリム・ゾンロールです。ティタン・ボースミスを連れてきました」

 クリムさんがノックをした後、大きな声で中に呼びかけをする。

 すると、少し時間が経った後、中から低い男性の声で入れと言う声が返ってくる。


「失礼します」

「失礼します」

 俺とクリムさんは扉を開けると、一礼をしながら中に入る。


「よく来たな。私はスキープ・レストールム。火の塔の管理人だ」

 部屋の中に居たのは、長袖の白い衣服……白衣を着た、白髪混ざりの茶髪を持った男性、見た目からして、恐らくは学園長と同じくらいの年齢ではないかと思う。


「今日はよろしくお願いします。スキープ先生」

「よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 検査室の中には……色々な物が置かれていた。

 俺でも用途や正体が分かるものから、どういう用途で用いられるのかの想像すらも出来ないような物品まで置かれていた。

 ただここは検査室なので、紋章魔法に何かしらの形で関わりがあるものなのだろうとは思う。


「では、こちらの準備は整っているし、早速始めるとしよう」

 スキープ先生はそう言うと、俺に小刀と、底から少し離れた位置に線が引かれたコップを手渡してくる。


「検査にはその線を超える量の血が必要だ。出してくれたまえ」

「えと……」

 線の位置からして、それなりの量の出血が必要そうだった。

 俺は一応クリムさんに大丈夫なのかという視線を向ける。


「安心しろ。スキープ先生は回復魔法の達人でもある。手が滑って動脈まで切ってしまっても、スキープ先生が居るなら大丈夫だ」

「消毒用のアルコールも、血止め用の軟膏も、ヘモティの葉で淹れた茶も揃っているから安心するといい」

「なるほど」

 クリムさんが大丈夫だと言う横で、スキープ先生が酒瓶、軟膏の入った壺、湯気が出ている紅茶色の液体入りのコップを順に指さしていく。

 スキープ先生の腕は分からないが、これだけ揃っているのなら大丈夫だろう。


「それとも自分で切れないかね?なら、私が切るが……」

「いえ、大丈夫です」

 俺はスキープ先生の提案を断ると、小刀を酒瓶の中身で清めた後、腕のいつもの場所を普段より少しだけ深く切って血を出す。

 そして十分な量の血を出したところで血止め用の軟膏を傷口に塗り、俺の血の入ったコップをスキープ先生に渡す。


「では、後は私の仕事だな」

 スキープ先生はそう言うと、近くにある机に向かい、そこで俺の血をガラス製で筒状になっている器具で量り取ると、大きな器に量り取った物を入れる。

 そして、その大きな器に透明な液体を大量に二種類入れ、その後に細かい塩のような物体を少量入れると、ゆっくりと掻き混ぜ始める。


「ティタン。ヘモティの葉で淹れた茶だ。一応飲んでおけ」

「ありがとうございます」

 俺はクリムさんから紅茶色の液体が入ったコップを受け取ると、微妙に鉄臭い独特の風味を味わいつつ、ゆっくりと飲み始める。

 ヘモティの葉には強力な造血作用があるはずなので、このコップ一杯分の茶でも、ついさっき失った量の血を補うには十分すぎるぐらいだろう。


「それでその……」

「スキープ先生がやっている作業が気になる。か?」

「はい」

 俺がヘモティの茶を飲んでいる間に、スキープ先生は大きな器をかき混ぜるのを止めると、大きな器の上に蓋をかぶせて放置し、自分は金属製の巨大な板の様な物体を調べ始めていた。


「今さっきスキープ先生が作っていたのは、検査用の液体でな、ジャッジベリーの果汁にミガワリーフの汁、ニュートライ塩、それに対象者の血液を一定の比率で混ぜ合わせることによって作られるものだ」

「えーと?」

 ジャッジベリーにミガワリーフは俺でも分かる。

 ジャッジベリーは簡単な紋章魔法ならどの属性のものでも発動できると言う優秀な素材だ。

 ミガワリーフは記憶が確かなら、紋章魔法に欠かせないはずの術者の体液を肩代わりできる植物である。

 が、その二つにニュートライ塩と言う初めて聞いた物質を組み合わせる理由が分からない。


「あー……要するにだ。お前の血の影響を受けつつ、誰でも発動できるようになった紋章魔法の触媒を作ったんだ」

「ああなるほど」

 と、俺の無知を察してくれたのか、クリムさんが掻い摘んで説明してくれた。

 そしてその説明で俺も納得する。

 俺の血の影響を受けつつ、誰でも発動できる。

 それなら検査する人が一定の感覚で紋章魔法を発動してみれば、発動した属性の強弱によって、どの属性に適性があるのかが分かるだろう。


「となると、あの巨大な板は……」

「現在、属性として確立されている13属性。その13属性の基礎クラスの紋章魔法を発動するための紋章が刻まれている。だから、あの盤にさっき作った触媒を流し込めば、それだけで紋章が出来上がる」

「凄いですね……」

「国一番の学園だからな。これぐらいの設備はある」

 そして、更なる正確性を求めて、紋章を描く手間や、紋章を描く際のブレなどによる誤差を減らすべく、あの金属製の盤が用意されているようだった。

 何と言うか……俺の想像のはるか先へと、最新の紋章魔法という物は行っているようだった。


「ふむ。良さそうだ。ではティタン君、君のメダルを表面を上にして、盤の中央へ。検査と一緒に君のメダルへの刻印もやってしまえるからな」

「分かりました」

 俺はスキープ先生の指示に従って、金属製の盤の中心に造られたくぼみに、先程総務課で貰ったメダルを指示通りに填め込む。


「では、ただいまよりティタン・ボースミスの適性検査を開始する」

 そして、俺が元の席に戻ったところで、スキープ先生がそう宣言をした。

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