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BBC-黒い血の狩人  作者: 栗木下
第三章:夜に舞う狩人

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第111話「茶会-3」

「今日は私の茶会によく来てくれました。ティタン様、ハーアルター君、セーレさん」

 部屋の中央に丸い机と茶会のための道具、それに四人分の椅子が置かれた707教室に入って、俺がまず初めに感じたのは?

 メルトレスが今日の事を素直に嬉しそうにしている事、ゲルドとイニムの二人が己の職務を忠実にこなそうと周囲に気を配っている事、後は……うん、視線が一つに、聞き耳を立てている気配が一つあると言う事だ。

 そして、視線と聞き耳はどちらも俺が知っている人物によるものである。


「さあ、こちらへどうぞ」

 この時点で俺はハーアルターとセーレが今日の茶会に参加するという情報が俺に伝わらなかった理由も、そもそも誰がメルトレスに二人を招くように言ったのかも察した。

 察したが、口には出さず、気配の源に視線を向けるような真似もしなかった。

 こういう事は後で直接言った方が効果があるからだ。


「申し訳ありませんが『鋼鉄姫』様、僕には茶会の席に着く前に貴女に問い質したい事があります」

「問い質したい事……ですか。なんでしょうか?」

 さて、俺がそんな事を考えている間に、真剣な表情をしたハーアルターが行動を起こす。

 そして、ハーアルターの行動によって表情は全く変わらないが、メルトレスがほんの僅かに不機嫌になる。


「貴女はそうなると理解した上でセーレに装飾品を贈ったのですか?」

「「「?」」」

 ハーアルターの言葉にメルトレス、ゲルド、イニムの三人はセーレの身に付けている品に目を向けつつも、訳が分からないと言いたそうな表情をする。

 俺もハーアルターの言葉の意味はよく分からなかった。

 が、ハーアルターの表情と気配から察する限りではあるが、相当な重大事であるのは確かなようである。


「ハーアルター君、それはどういう事でしょうか?私は彼女を招く者として、この場に着けて来ても恥ずかしくない装飾品を贈ったつもりだったのですが」

「つまり、考えなしに贈ったと」

 ハーアルターの表情が険しくなる。

 その背後ではセーレが心配そうにハーアルターの事を見つめている。


「なっ!姫様が考えなしに贈っただと!?それはど……」

「考えなしだろう!平民に王家の紋章付きの装飾品、それも高価な宝石を付け、職人の高度な技を以て造られた品を突然渡した場合にどうなるのかを良く考えてみろ!」

 ハーアルターの言葉にゲルドが反論しようとする。

 だが、言葉を言い切る前にハーアルターが怒気を含んだ言葉を発し、ゲルドを威圧。

 その言葉の強さは年上かつ実力も上の筈であるゲルドを怯ませるのに十分な程だった。

 そしてハーアルターのこの言葉で、俺も何が拙いのかを悟れた。


「まさか……」

「ライ・オドルのような生徒が他に居ないとも限らないんだぞ。今回は受け取って直ぐセーレが僕に相談してくれたから、ターンド伯爵家で装飾品を預かる事で問題が起きる事は無かったが、一歩間違えていればセーレを殺してでも装飾品を奪おうと考える輩が出て来てもおかしくなかった!」

 そう、メルトレスはセーレに装飾品を贈った。

 それ自体はセーレが平民で、今日のような場に着けて来られるような装飾品を持っていない事を察しての事であり、相手の事をきちんと思ったが故の行動だ。

 だが、贈った装飾品が高価な物過ぎたのだろう。

 ハーアルターの怒りから察するならば、それこそセーレの元では安全に保管する事もままならず、妬む者、羨む者、欲に駆られた者によって何時盗まれてもおかしくない、それどころか悪意を持った者次第ではセーレを殺してでも奪おうと考えてもおかしくないような品だった筈だ。

 それを突然贈ったとなれば……うん、ハーアルターが言うように考えなしに贈ったと思われても仕方がない事だろう。


「『鋼鉄姫』様……」

「っつ!?セーレさん、申し訳ありませんでした!私の考えが至らないばかりに、貴女様を無闇に危険を晒してしまいました。本当にごめんなさい」

「い、いえ、その……ハー君が何とかしてくれましたから」

 メルトレスがセーレに向けて頭を下げる。

 そして、メルトレスの後ろでゲルドとイニムの二人も、本当に申し訳なさそうに頭を下げる。

 そんな三人の動きに合わせるように視線と聞き耳の気配が揺らいでいるのは……まあ、そう言う事なんだろう。


「本当にごめんなさい……そして、ハーアルター・ターンド、ありがとうございます。貴方のおかげで大事に至らなくて済みました」

「ははははは……」

「ふんっ……貴族として当然の義務を果たしたまでの事です」

 さて、そろそろ頃合いか。

 このままだとメルトレスに謝られているセーレが緊張で倒れそうな気がするし、場の空気を良くするためにも本来の流れに戻した方がいいだろう。


「コホン」

「ティタン様?」

 俺は一度咳払いをして、自分に注目を集める。


「ハーアルター、それにセーレも、メルトレスさんも自らの非を認められたようだし、仲を良くするためにも、そろそろ茶会を始めてもいいと思うんだが、どうだ?」

「セーレに対しても謝罪をしてくれたし、僕から言う事はもう何も無いから安心しろ」

「えーと、私ももう心配してもらうのは十分です。はい」

 そして、茶会を始められるようにハーアルターとセーレの二人に問いかけて答えを貰う。


「だそうです。メルトレスさん」

「は、はい。では至らぬ点も多々あるかもしれませんが、茶会を始めましょうか。どうぞこちらへ」

「分かった」

「はい」

「では失礼して」

 そうしてハーアルター、セーレ、俺の三人はメルトレスの案内に従って椅子に座り、茶会が始まった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 二重に危ないよね。 ころしてでもうばいとる、と、 王女から下賜されたものを紛失したという瑕疵と。
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