表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/93

064 いつの日か

 マリーの髪飾りが、何の前触れなくマリーの頭から落ちた。


「――――急に、どうして?」


 慌てたマリーは、髪飾りを急いで拾った。


 まるで不吉な前兆のように、マリーは拾い上げた髪飾りに視線を落とした。そして、再び荒れ狂う空に視線を戻した。


“グランド・エア”の中に向って、まるで吸い込まれるように突入する光景を、マリーは歯を食いしばりながら見つめていた。


 不思議と大聖堂の中に揺れは無く、目の前の光景が再び嵐の中に戻っただけで、何も変化はなかった。しかし、暫くしてマリーの眺めている映像が不規則に揺れはじめた。まるで湖に石を投げたように、映像が波立った。そして、嵐を映していた大聖堂の天井からぷつりと嵐の映像が途絶え、今までの薄暗い大聖堂の天井に戻ってしまった。


 マリーは何が起きているのか、ヴィクルトに尋ねた。


「きっと、嵐の影響で魔力が乱れたんでしょう。それに、この空域はすでに“キャメロット”――――“獅子の戦”時代の魔力の影響を受けているのですね。この空間は、魔法で作られているので影響は受けませんが、きっと船の中は相当揺れているはずですよ」


「この船、沈まないの?」


「大丈夫ですよ。この船の外装は特別な錬金術で作られていて、衝撃にはとっても強いんです。それにこの船を動かしている動力も、大きな魔法石を十個も使用しているので、どんな嵐でも突き進めますよ」


 それを聞いたマリーは、少しだけ考え――――そして躊躇いながらも、それを尋ねるために口を開いた。


「それは――――戦争をするために造られた船だから?」


 マリーの言葉に、ヴィクルトは深く傷ついたよう、瞳を伏せた。そして力なく首を振った後、静かに言葉を紡いだ。


「いいえ、マリーさん――――このアルバトロスは、戦争をするために造られたのではではありません。戦争を起こさないために造られたんです。そして、この私も――――」


 そこまで告げると、ヴィクルトは急に立ち上がり大聖堂のステンドグラスを眺めた。

 そして、未だ不安の消えないマリーに、ヴィクルトは言葉を投げかけます。


「今は分からなくとも、いずれ分かります。きっと、私たちが存在している意味が、いつの日か―――――」


 いつの日か。


 その言葉が遥か遠く、まるで永遠をさしているように、マリーには思えた。


 そしてm今にも消えてしまいそうなヴィクルトの言葉と表情に、マリーはそれ以上何も尋ねることができずにいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ