訪れた知らない人~7~(side流星)
ここが最後の部屋か…かなり奥まで来たからここが最後の部屋だろう。途中、矢が飛んできたり火がでたり、床がなかったりと色々なトラップがあったが、なんとかここまで無傷で来た。
「ここが最後の部屋だ。多分ここにアルと美香がいるだろう。なぜアルがここに美香を連れてきたのかわからないが、とにかく行くしかない。」
「よし、開けよ」
中に入るが、真っ暗で何も見えない。
「玲奈が命じる、光の精霊よ、我に力を恵め!」
無駄な魔力…と思った矢先、部屋の光がついた。やっぱり玲奈はやればできるな。
「玲奈ちゃんすごいね!代々魔法成功したよ!」
「さあ、気ままにおしゃべりできるのも今のうちだよ。」
出てきたのはアルと、颯治さん!?
「お兄ちゃん!なんでそこにいるの?」
「あぁ。忌々しい弟か…そんなの決まってるだろ。この世界を支配するためだよ。」
「美香を返して!」
「ちょっと、待てよ。」
煙がたってからおさまったら、口を塞がれ、檻に入れられた美香がでてきた。
「この子はもう用済みだ。ネックレスはもうもらった。その前にここまで来てくれたお礼をしよう。
颯治が命じる。重力の精霊よ。俺に力を恵め!」
た、立てない…俺らは膝だちになった状態で動けなかった。どうすれば…
「火の精霊よ、俺に力を貸せ!」
「冬希が命じる。重力の精霊よ、僕に力を恵めっ!皆、飛べっ。」
俺を始めとする四人が飛んだ。冬希が重力をほとんどなくした状態にしてくれてたから高く飛べた。多分、普通に飛んだだけなら、今頃丸焦げだ。
「外したか…まあ、いい。こいつは返してやる。」
美香が入った檻がこっちに飛んでくる。どうやって出せばいい…
「流星…代々魔法…」
「玲奈さえてるな。
流星が命じる。時の精霊よ、俺に力を恵めっ!」
檻の鍵も外れたし、口止めも外れた。なんだか、だいぶ疲れてる。
「さっき気づいたんだけどな、人間って現夢界では大丈夫だけど、悪魔界は耐えられないんだ。それでこのネックレスが守ってたってわけ。早くネックレスを付けるか、人間界に返した方がいいよ。」
「人間界に帰る方法は見つかってません。ネックレスを取り返すしか…」
「あーあ…つまんねぇな。返してしまうのか…もう一回するか。
火の精霊よ、悪魔の名のもとに火を出せっ」
「冬希が命じる。重力の精霊よ、僕に力を恵め!」
俺は美香を支えながら飛んだ。
「うあっ…」
後ろからうめき声が聞こえる。玲奈の足が火に当たってしまったのだ。この傷じゃ俺達の治療でも無理だ。
「れ……な…」
美香が近寄る。
「ごめんねごめんね…私のせいだよね。本当にごめ…ん」
美香が泣く。美香の涙が玲奈の傷に落ちた。次々と落ちた。
「大丈夫だよ。美香のせいじゃない。美香、泣かないで。」
「おいおい…ちょっと待ってくれよ…」
俺が玲奈の足の異変に気づいた。治ってる…?涙が当たったところから治ってる。
「な、治ってる?美香ちゃん、どうやったの?」
「これは、魔法?」
「わかんない…なんで…治ってるの」
相変わらず涙が出ている。そうしている間に玲奈の足は治ってしまった。
「もう治った!ありがと、美香!」
「よかっ…た…」
「咲良、美香を安全なところに!」
「うん!美香ちゃん、立てる?」
「えー。もう人間返しちゃうの?つまんないなぁ。
水の魔法よ、悪魔の名のもとに、水よ流れろ!」
「植物の精霊さん、私に力をかして!」
水は咲良が出した植物によって誰にも当たらずに済んだ。
「さっきから、玲奈ちゃんや美香ちゃんに手を出して…許されると思ってるの?
咲良が命じる、音の精霊よ、私に力を恵んで!
後は頼んだよ。3人とも。今はあいつら、声出せないから魔法使えないから、とっととネックレス返してもらって。」
咲良って、怒ると怖いんだな…
「玲奈ちゃーん。颯治さん、アルの暗示に、かかってるから!アルを倒してー!」
美香がかすれた声で精一杯叫ぶ。アルを倒すのか…どうすればいい。
「植物の精霊よ、僕に力を貸してください!
流星!つたがあいつらの動きを封じてるあいだに水責めを!その後、玲奈の火で最後にしましょう!」
「冷たいのは好きかな。お二人さん。
水の魔法よ、俺に力を貸せ!」
それなりに威力はあるだろうが、水ならある程度しても大丈夫だろう。
「玲奈!最後、お前の持ってる最大の力で燃やしてしまえ。」
「うん。冷えた後は温めないとだよ。
火の精霊よ、私に力を貸せ!」
すごい火の大きさだ。玲奈と言えば玲奈らしい。
玲奈の火の威力があまりに強かったため、植物が焼けてしまってアルはどっかに行ってしまった。
逃がしてしまったか…颯治さんは気を失ってしまった。アルの暗示がそれなりに強かったんだろう。俺は内側にあるポケットからネックレスを抜き出した。すると、玲奈がネックレスを俺から奪いさって行った。
「美香、大丈夫?これ、今すぐ付けるね」
玲奈が美香にネックレスをつける。
「ありが…とう。」
美香の体調がある程度良くなったところで俺達は帰った。