プロローグ
私の名前は相沢アオイ、中3の男子である。特に才能がある訳ではなく、女子から見た「モテる男」でもないので、男友達と細やかに中学生生活を過ごしていた。
ある日私は友達の家に泊まることになった。と言うのも、小学校から中学校に上がる時に転校した友達と偶然再会し、近場の公園で遊んでいたら日がくれてしまったので泊めてもらった、と言う訳だ。学校の宿題が終わっている事もあり、その日は楽しい時を過ごす事ができた。
翌日の朝である。
起きると友達の母親が、
「おはよう、あらら、寝癖酷い事になってるわ。折角の可愛い顔が台無しよ、ほら、直してきなさい」
と、私にピンクのタオルを渡してきた。ピンクが好きだといった覚えはないし、どちらかと言えばカッコいいと言われたいものだ。
そんなことを考えつつ洗面所に行き鏡を見ると、そこには美少女が立っていた。年は高2、いや中3位か。長めの黒髪ツインテールという、容姿はまさに「男子が転校生に期待する女子No.1」みたいな感じだった。
「え、だれ?」と言いながら自分の顔をペタペタと触ると、鏡の美少女も同じことをする。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
半狂乱で洗面所から出てきた私を見て友達が、
「どうしたヒナタ、顔にテントウムシでも付いてたか!」と言う。
「違うって!ってか今なんて言った!?」
「テントウムs」
「その前!」
そんな私たちのやり取りを見て友達の母親が言った。
「あらあら、最近の中学生は盛んねえ」
「「ちげーから!!!」」
重い足取りで家に帰る。最悪の事態を予想し冷や汗をかきながらアオイの家に着く。しかしそこには相沢ではなく、「神埼」と書かれた表札があった。確か友達が私の名字を神埼と言っていたが・・・。
恐る恐るチャイムを押す。すぐに見慣れた母親がでできた。
「あらお帰りなさい、楽しかった?」
どうやら私の家ではあるらしい。
「母さん、でいいんだよね?」
「何言ってるの、痛い思いして産んだ子供にそんなこと言われるとは思わなかったわ。そんなに友達のお母さん優しかったの?」
「ううん、そういうことじゃなくて。それじゃあ母さんが痛い思いして産んだのは元気な男の子?」
勇気を出して聞いてみる。しかし返ってきた答えは、
「元気なのは認めるけど、私はあなたを女の子として育ててきたつもりよ?あなたもクラスでアイドルだのモデルだのってよく言われるって言ってたじゃない」
「な・・・」
こうして私の奇想天外な人生が始まる。