清楚可憐、クールな幼馴染みを夜の営みに誘ったんだが、なかなかOKしてくれない
俺には幼馴染みがいる。
そいつとは家が隣同士できから時間を共にしてきたと言っても過言ではないだろう。現在もそれぞれの家に行き来して勉強をしたり、料理を食べさせてもったりなど、円満でテンプレーションな幼馴染み付き合いをしている。
だが小さい頃からずっと続いてきた清らかな関係も、年を重ねるにつれて変化していってしまうわけで…端的に言うと、そいつがいつものようにエプロン姿で料理をしている様を見て、俺は、ムラっとしてしまった。
男子諸君なら分かってくれるだろう? 二人きりの家で、同い年の幼馴染みの女の子が、自分に手料理を振る舞ってくれている。
よく考えたらなんて素晴らしいシチュエーションなんだ。
この状況の中を当たり前のように生きてきた自分を褒めてやりたい、お前は仏かと。
問題は、一度そういう目でそいつを見てしまったら、やはり今までのような、ただの幼馴染みとして見ることはできなくなってしまうわけで、よく態度に出てしまってるらしい。そいつ曰く「最近挙動不審ですね、どうしたんですか? それに視線がやらしい」とのこと。申し訳無い。
長年付き合ってきた仲だ。隠し事はしたくない、でも嫌われたくない。という葛藤がしばらく続いた。しかしいつまでも隠し通せることでもないだろうし、正直収まりが効くような気が全くしないので、もう色々と開き直ってしまうことにした。
舞台は俺の部屋、家にはそいつ、いや、彼女と二人きりである。
「なあ」
「はい」
「俺と、結婚を前提にS○Xしてくれないか?」
「だめです」
…………
だめかですよねー、でも俺は諦めないぞ。
☆☆☆
彼女は美少女である。
腰まで伸ばした長い黒髪は風呂上がりのように艶々だし、目鼻立ちはキリッとしてながらも、優しさをまみえることができる。唇もなんかエロい。
こんな美少女である彼女は、昔からよく告白される。当然であろう、俺も幼馴染みじゃなかったらまず惚れてた。
だがその山のような告白を受けたことは、これまでに一度もない。側で見てきたから知っている。つまり彼氏もいるはずがない、だから頑張ってみようと思う。
「だめか?」
「だめです」
「だめなのか」
「だめなのです」
「そうなのか…」
「ここ最近の挙動不審はそれが原因ですか」
「そうだ、いつものように料理してるお前の姿見て、なんかグッときてしまった」
「どうしよう、私これからも貴方の前ちゃんと料理できるでしょうか」
彼女は腕を組んで顔をしかめる。
なかなかの大きさだ、服が偉く押し上げられている。
あ、息子が。
「なんでですか」
「ん?」
「なんで、私の姿にその、グッと来ちゃったんですか」
彼女はこちらを真剣に見据えながら言う、これは中途半端なことを言うとやばい……ここまで来たら正直に言ってしまおう。
「分からないんだ」
「分からないんですか」
「そうだ、分からない。たまたまかもしれないが、少なくとも俺はその時から、お前のことをそういう目で見てしまってる。申し訳ないとは思ってるんだが、なかなか耐え難い。今日ついに我慢が限界を迎えてしまった」
「なるほど…はあ」
彼女は組んでいた手をほどき、左手を額に当ててため息をつく。良かった、最初から嫌われるというルートは無くなったっぽい。
「てなわけで俺と」
「だめです」
だめだった。
「えーっとですね、結論から言ってしまうと」
彼女はクッションの上からベットの上に移動し、そこに正座する。それを見習い俺も向かい合って正座する。
「男の子なんですから、異性をそういう目で見てしまうということに関してはある程度理解できます、むしろこの十年以上そういう素振りが全く無かった分、安心したという思いの方が強いです」
「嫌われてない?」
「今更嫌えるわけがない」
まずその言葉をきいただけでも気が楽になった。普通ならドン引きされて距離を置かれてもおかしくはないだろうし、彼女の寛容さにとことん感謝した。
「でもですね」
「ん」
「一つだけ、納得できないというか、疑問に思うところがあるんですよ」
「言ってみてほしい」
「私じゃなくても良かったのかな、と」
どういうことだろう。
「自分がそういう目で見られてる、まあそれは百歩譲って良しとしましょう。むしろもっと見てくれても構いません。ただ、それが私に対してそうなったという訳ではなく、たまたま近くにいた異性だったからっていうのは、ちょっとモヤモヤが残るんですよね」
「えーと、なんでだ?」
「だって、そんなの私じゃなくて誰でも良いってことじゃないですか」
「なるほどな」
「で、どうなんですか? 貴方は私じゃなくて、クラス一のおっぱいを持つ富士山さんもそういう目で見ちゃったりするんですか?」
そういわれて、考えてみる。
クラス一の巨乳を持つ富士山さんは、その名前に負けないくらいの巨乳の持ち主だ。俺の友達にも富士山さんをズリネタにする奴だって大勢いるし、俺だって…あれ? 考えてみると富士山さんの巨乳をすごいと思ったことはあっても、エロいと思ったことはない気がするぞ。
他だってそうだ。思えば俺は、女子をエロい目で見たことがないぞ。
いやいやちょっと待て、そりゃ俺だって高校生だし、処理くらいは経験あるぞ。俺はいったい何をネタにして処理を行ってたんだ?
「どうしたんですか? そんな難しい顔して」
「っ!? いや……よく分からないんだが」
彼女からの声がやけに耳に響く、凛とした少々低めの声だ。色々とよく分からないが、とりあえず頭のなかでまとまったことを口にしてみる。
「無かった。俺は、女子をそういう目で見たことがない」
「へえ、でも、私のことはそういう目で見ちゃったわけですよね?」
「ああ」
「そうですか」
彼女はなぜか、口角を持ち上げてニヤニヤと笑う。普段無表情であることが多いくせに、こんな表情も出来るんだよな。外で笑うところは見たことがないけど。
「それでは、今度はなんで私なのかっていうことが知りたいですね」
「なんでお前なのか…か」
目の前にいる彼女を改めて見つめてみる。
「…………」
思えばいつも側にいた。
高校ではお互い部活はやってないから、帰りはほぼ毎日一緒で、隣り合って道を歩いて。
少、中学では周りにカップルとからかわれることがすげえ多かったけど、そんなの全く気にならなくて、やっぱり隣りにいてくれて。
幼稚園のときもやっぱり仲が良くて、将来の約束もして……約束? 約束ってなんだっけ。
確か公園で、ブランコに揺られながら、今よりもずっと幼い彼女がこっちを見ながら言うんだ。
「あのね」
「これからもずっと、いっしょにいたいとおもえるひがつづいたのであったら」
「そのときは、わたしと──」
ああ、なるほどな。
なんだ、簡単なことだったんだ。
「わかったよ」
「?」
「俺は、」
口にするのが怖い。今までの関係が全て壊れてしまうんじゃないかという恐怖が全身にのし掛かる、それでもこの気持ちは嘘はないから、最後までふっきってしまおう。
「俺は、いつからは分からないんだけど、昔からずっとお前のことが好きだったんだと思う。いや、好きだ」
「はい」
「この気持ちがふとした拍子に表に出てきてしまったことが、俺はお前をそういう目で見てしまったという錯覚を引き起こしたんだと思う」
「はい」
「でも、この気持ちに嘘偽りはない、だから! 俺と結婚を前提にS○Xを」
「だめです♪」
…………
え、だめなの? だめですかー。
なんでよ、今めっちゃ良い雰囲気だったじゃん。
「なんで、なんでだめなんだ…!」
「決まってるでしょう、それは」
という彼女の言葉と共に彼女の顔が近付いてきて、視界が真っ暗になる。唇に、なにか柔らかいものが触れた気がした。
少し時間が経って、顔が離れる。
また、普段は見せない無邪気な顔をしながら、彼女は言う。
「私をここまで待たせた罰です、今はこれで我慢してもらいます」
そっか、俺たちはこれからもずっと──
「まずは、結婚が先でしょう? それまではお預けです」
一緒にいられるんだって。
「って、え? 結婚するの?」
「え? しないんですか?」
まだまだ先は長そうだけど。
ありがとうございました。
私は幼馴染みものが好きです、いつでも側にいてくれて、お互いのことをなんでも分かっていて、っていうそんな関係が大好きです。
本作は作者の処女作であり、短編ということもあり書きたいこともあまり書けてないので、皆様の評価次第では連載版も書くかもしれません。
あ、ご指摘などは為になりますので歓迎します。どうかお手柔らかに(震え声)
それでは、またどこかで会える日が来たら。