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戦国バスターズ  作者: 石清水斬撃丸
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第伍話 旧校舎のち豪雨

 武蔵たちは入学式をやり遂げた。さらにそのまま適性試験も受けてきた。

 その結果、武蔵、秦、つばさは見事に、見事すぎるくらい簡単に才能無しの判定になり、疾風だけを残し旧校舎へとやってきた。

 そして話は変わるが、旧校舎は新校舎から少し離れた所に存在する。つまり旧土地に今も存在しているのだ。三階建ての古臭さが残る木造の校舎だ。しかし、今は学園側に土地の権利はなく、他者に権利が渡っている。要するに、新校舎より好き勝手に扱えるわけではない。

「ここが旧校舎か……」

 武蔵は着いたばかりの旧校舎を目にしてそう言った。

 武蔵の第一印象、ボロい。

「中々、雰囲気ありますね」

 秦の第一印象、肝試ししたらおもしろそう。

「意外と綺麗だね……」

 つばさの第一印象、汚い。

 それぞれこれから過ごす旧校舎(まなびや)に深い印象を持ち、いざ校舎の中に潜入――入ろうとする。

 ところが、真っ先に問題が起こる。

「なんだこれ? がっちり閉まりすぎだろ……」

 武蔵がどれだけ玄関の戸を開けようとしても開かないのだ。

 戸は簡単に開きそうなのだが、何か引っかかっているのだろうか。思うように開かない。

 ちょっとこの戸、抵抗しすぎじゃないのかな?あんまり、こんな所で力は使いたくないんだが……。

「武蔵くん大丈夫? 手伝おうか?」

「いや、大丈夫! これくらい……」

「開けられないと男じゃありませんよ」

「口だけじゃなくてお前も手伝え!」

 武蔵が秦にツッコミ注意した時、戸が外れた。

 どうやら注意した時に力が入ってしまったようで、完璧に外れてしまった。

 ヤバい。このままでは、俺に容疑がかかってしまう。それだけは何としても……。

「お前ら何やってんだ?」

 後ろから聞きなれない声が聞こえた。

 その場にいた武蔵たちは緊張しながら後ろを振り向く。

 振り向くとそこには、小柄ながらもがっちりとした男性がいたのだ。口の周りには、立派?な髭が生えている。そして、全てを引き立てているのが手入れもなにもされてないと見えるぼさぼさの髪だ。簡単に例をあげるとすれば山男だ。典型的な山男だ。

 ヤバい。怒られる気がしてならないんだが……。どうにかして避けたい。それだけは。

「人の土地でお前ら何してるんだ?」

 なまりがある口調で男性は聞いてくる。

 土地?……ああ。そういうことか。この人は旧校舎の管理人なのか。それなら、大丈夫だな。……いや、待てよ。この状態で普通に答えたら、怒鳴られるんじゃ……。そう、考えたら言わない方がいいのか?でも、もう本人この状態に気が付いてるし、隠さない方がいいのか?でも、やっぱり――

「早く言ってみ。それとも言えないことでもあんのか?」

 未来と相談している武蔵に不審を抱いたのか男性は聞き直してくる。

 おっと。少しばかり間が空いてしまったようだ。ここはなるべく相手を怒らせないように言わないと。でないと、俺の命が終わる……。

「えっと実は……戸が外れてしまいまして……」

 武蔵は恐る恐る答える。というより少しおびえ気味だ。その証拠に発言が敬語になぅている。

 頼む、怒らないでくれ。俺は開けようとしただけなんだ。悪気はないんだ。

「なんだと……」

 ほらな。予想はしてたけど、やっぱりこうなるんだ。毎回、神様はここぞという時に力を貸してくれないよな。そういうのマジ勘弁してくれ。

 怒られると思い込んでいた武蔵だったが、予想外の受け答えが帰って来る。

「そういうことならしょうがないね。じゃあ、それは壁にでも置いといてくれ」

 外見とは裏腹に優しい答えが返ってきた。

「ああ、はい! わかりました!」

 武蔵はまだ男性の性格が半信半疑なので、きびきびとしたいい返事をした。

 そして、外れた戸を壁に立てて置いた。

「勢いがあっていいね。新入生か~い?」

「そ、そうです! きょうからこの旧校舎で学ぶ火花武蔵と言い――」

 武蔵が喋っている時に、男性に背中をバンバンと叩かれた。

「おう! がんばりなよ! アタイも応援してるからさ❤」

 武蔵――というより秦もつばさも違和感を覚えていた。

 なんだろう。この人、いい人だけど……。独特の喋り方って言うか。妙に、女っぽい喋り方をするんだよな。

「今まで学園(ここ)のいろんな生徒を見てきたけど、アナタが一番かわいいわね~❤」

 武蔵は男性に対し違う恐ろしさを覚えた。

 この人、結構ガチな奴だ……。早くここから離れないと俺の体が――

「アナタ(なん)て言う名前?」

「それについては……また後日――」

「早く言えよ?」

 男性は突如、武蔵に脅すように聞いてきた。

 こわっ。言っても言わなくても未来は同じか……。ならもう、どうにでもなれ!

「火花武蔵と言います!」

 武蔵は覚悟を決めて男性に教えた。

 その様子を秦とつばさはやっちまった感たっぷりの表情で見ていた。

「あら武蔵ちゃんって言うの? かわいい名前ね~。……イツカアタイガ、タベテアゲルカラ……楽しみにしてよね~」

「「「(ひ、ひぃぃぃぃ!!!)」」」

 武蔵、秦、つばさはその言葉を聞いた途端、背筋が凍り、一斉に心の中で悲鳴を上げた。

「(誰か助けてくれ!)」

「(無理ですよ。あきらめてください)」

「(見捨てる気か! それでも友達かお前は!)」

「(友達? はて? 何のことですか? いつ武蔵さんと友達になったんですか? というか、友達とはどこからが友達で、どこからが友達じゃないんですか?)」

「(こんなときに質問攻めやめろ! あと、なんか怖い!)」

「(まあまあ、落ちついて。秦くんも見捨てないで助けてあげようよ?)」

「(でも白羽乃さんも何気に見捨ててますよね?)」

「(そ、それは……)」

「(つばささん! 頼む! 俺を救うのとついでにここから逃げよう! そうじゃないとあの人に皆殺される!)」

「(そ、それはそうだけど……)」

「(じゃあせっかく(なん)で誰か声をかけてきて下さいよ)」

「(じゃあ、琵琶之秦な)」

「(それは酷いですよ。友達失格です。辞めますよ)」

「(わかった! じゃあ、俺が言ってくる! これでいいんだろう?)」

「(ありがとうございます。それでは精々がんばってください)」

「(ムカつく……)」

「(何か言いましたか?)」

「(いや、何でも!)」

「(武蔵くん……おきばりやす)」

 長く仲間たちと意識会議、通称イギをした結果、無理やり感満載ではあるが、武蔵が先陣を切ることになった。

 武蔵は男性に断りを得ようと聞いた。

「そろそろ中に入ってもよろしいですか?」

「ああ、すまなかったね。どうぞ」

 思ったより、案外簡単に道は開けたので一同安心感に包まれた。

 そして、中に入ろうとした時だった。

「あと一つだけいいか?」

「な、何でしょうか?」

 男性はまた武蔵に聞いてくる。

 まだ何かあるのか……。さすがに入らせてほしい――とは言えない!

「そこの彼女とは友達? ……ソレトモ――」

「「友達です!」」

 男性は少し妄想が膨らんだ話を聞いてきて、武蔵とつばさはすぐに否定した。

 なんでいきなりこう……デリケートな事を聞いてくるんだ?この人、外見にしろ性格にしろそうだけど中々恐ろしい。いや、とんでもなく恐ろしい!

 武蔵たちは話が終わった後、すぐに中に入って行った。


 中に入ると、古い外観とは裏腹に真新しいホワイトボード(多分外国から入ってきたのだろう)が用意されていた。

 ボード上には、一枚の紙が張りだされている。

 武蔵と秦、つばさは内履きに履き替え、その紙を確認し始める。

 何が書かれているかというと、才能無し組の学級が発表されていたのだ。

「ついさっき試験があったのに、もう張り出されてるんだな~」

「この学園は国の中でも最高の位置にあると言われてます」

「そうなのか琵琶之秦?」

「昔、聞いたことがあります」

 武蔵は納得顔を浮かべる。

 そうなのか。初めて知った。結構、真面目に初めて知った。よく俺、この学園に入れたな。あんなドタバタだったというのに。

「あったよ! 私たち同じ学級だよ!」

 つばさが嬉しそうに報告してくる。

「これで三年間とりあえず同じ校舎だな」

「ですね」

 学級が同じでホッとする武蔵と秦。

 よし。まずは、第一関門?は突破だな。だが、ここで三年間は厳しいな。何か起きそうな予感がぷんぷんするぞ。

「で、何組?」

「……負け組壱」

 つばさは自信なさそうに武蔵に言った。

「負け組壱か~。がんばらないと……な? ……て、えぇぇぇぇ!」

「反応遅すぎません?」

「いやいやいやいやいや! 何その組の名前!? いかにも弱そうなんだけど!」

 武蔵はつばさに聞くが、どうやらつばさもどういう学級かは分からないようだ。

「……負け組壱というのは、壱学年で一番才能がない人を集めた学級です」

 いきなり左の方から低い声で説明をしてくれた人物がいた。

 武蔵は反応し、左を振り向く。

 するとそこには、灰色の浴衣を着た丸眼鏡をかけた坊主頭の男性教師がいた。外見的特徴から言えばどこにでもいそうなおっさん、だ。

「……君達は今回の負け組壱の生徒ですか?」

「そ、そうですが……」

「……なら、もう教室に行った方がいいでしょう。学級会が始まると思いますから」

「わ、わかりました。失礼します」

 武蔵は男性教師にそう言い、秦とつばさと一緒に三階にある壱年負け組壱の教室に向かった。

「……あと、それからそこ気をつけて下さい」

「えっ――うおっ!」

「武蔵さん!?」

「武蔵くん!?」

 武蔵の右足は吸い込まれるように床を突き破った。

 その武蔵に対し、心配を寄せる秦とつばさ。

「……床が痛んでいるので落ちない……と言っても遅かったですね」

 男性教師は武蔵たちに警告したが少し、多少、大分言うのが遅かった。それがこの始末である。

 俺、この学園でちゃんと生きていけるのか心配なんだけど……。ていうか、この校舎ボロすぎるだろ!どんだけほったらかしなんだよ!

「武蔵くん! とりあえず引き上げるから手を差し伸べて!」

「わ、わかった! わかったから、もう一歩だけ下がってくれ!」

「え?」

「その……つばささんの……スカートの中から白いパン――」

 つばさは武蔵の位置から見たことを考え、一気に顔が赤らめる。

 さっきからすごい具合にチラついてるのが見えてしまって、メッチャ恥かしい。いや、俺より白羽乃さんの方が恥かしいのだろうけれどほおぉぉぉ!

「いやあぁぁぁ!」

 つばさは華麗に、綺麗に床の下に落ちた武蔵に向かって必殺とび蹴りを食らわしたのだった。


 そのあと、主に秦がつばさと武蔵をなんとか救出し、三階の壱年負け組壱の教室前まで来た。

「武蔵くん大丈夫?」

 つばさが武蔵に対し、心配そうに聞いてくる。

「ああ、大丈夫だ……」

「武蔵さんは弁慶並みに丈夫なので、さっきのは屁でもありませんよ」

「琵琶之秦……。心配の声ぐらい聞かせてくれよ……」

 そんな雰囲気を秦が一気にぶち壊す。

 俺、前から思ってたけど、秦は前から言い方がきつい気がするんだよな。いや、それを嫌だとは思っていない。個性だから。うん……。

「そんなことより早く教室に入りましょう」

「そうだな」

 秦がそう言うと、武蔵(また先陣)は教室の戸を開ける。と同時に、

「ふごぉぉぉ……」

 武蔵の股間に黒板消しが勢いよく突っ込んできた。結論からいえば、急所を打たれてその場に倒れ悶える。

「お、わりわり。手が滑った」

 男子生徒が軽い感じで謝ってくる。今の武蔵的には許してはおけないだろう。自分のかわいい双子が泣きわめいているのだから。

「ふざ……けるな……」

「それより大野。早く続きやろうぜ」

「おう。今行く」

 武蔵の怒りの声は、華麗に、完全に、完璧すぎるぐらい無視されてしまった。

 こういう奴は、後でどんどん嫌われていく奴なんだ……。皆は覚えておこう。後で役に立つ情報だからね。

 男子生徒の仲間だろうか。奥にいたもう一人の男子生徒が武蔵を苦しめた男子生徒を呼ぶ。男子生徒は、武蔵の股間にぶつかり地面に着地した黒板消しを再び持ち、呼ばれた方向に行く。

「じゃ、また黒板(こくばん)卓球(たっきゅう)やろうぜ」

「おう!」

 再び武蔵達が来る前にやっていた黒板卓球という遊びをまた始めた。

 黒板卓球とは、黒板道具を用い卓球のように遊ぶことである。ラケットは黒板消し、ピンポン玉は丸まって使われていないチョークを使用している。

「武蔵くん……だいじょう――」

「――ぶじゃない……」

「そうだよね……」

 つばさがまた心配そうに聞いてくるが、武蔵は速攻で返事を返した。

 この状況を見て大丈夫?と聞いてくる白羽乃さん。なんだかんだで、意外と実態は恐ろしい子だ。……まあ、現に今日の朝、疾風を軽くじご――天国行きにしたからな。あらかた間違ってはいない。

「さすがの武蔵さんも、あそこだけは鍛えられませんでしたか」

 秦は相変わらずのんきに戦況分析を報告する。

 鍛えられるわけないだろ……。ていうか、鍛えられてもただの変態になるだけじゃ……。

 武蔵の心の中と現実はどうやら今日は豪雨らしい。

 武蔵が出入り口付近で悶えているとここの担任であろう教師がやってきた。

「……はい、皆さん。席について――ん、君、こんな所でどうしたんですか? 何か嬉しいことでも――」

「……察してください」

 先程、見た地味な浴衣着がとてもよく鮮明に、はっきりと記憶に残っている。そう、ここの学級担任は、さっき玄関で接触した男性教師だったのだ。

「もしかして先生が担任か何かですか?」

 秦が半信半疑で聞く。

 おいおい、琵琶之秦。何かは失礼だろ。相手を選べ、相手を。

「……ええ、そうですよ。言ってませんでしたっけ?」

 そんなこと気にもせず男性教師は話す。

 否定も何もない。まっすぐに、ただただまっすぐに。直球に、真人間のごとくそう言ったのだ。

 否定してほしい気持ちの方が俺的には大きかった。せめて、副担任でいてほしかった。なぜ、この先生が担任なのだろうか?多分――というか絶対的に学級崩壊する予感しかしないのだが……。

「……まあ、とりあえず。皆さん、適当に腰をおろして――」

 学級担任の教師が言いかけている時だった。それは突然やってきた。

 教師の足元が突如崩れ、教師は消えたのだった。一瞬にして、何の前触れもなく、突然消えたのだ。この場から。簡単にいえば、下の階に落下したのだ。その場には、かけていた丸眼鏡が悲しげに落ちている

「せ、せ、――」

 武蔵がおどろおどろしく言った。。

 その場にいた学級全員、さっきから黒板卓球をしていた男子生徒も、後ろで少数人で集まり駄弁っていた女子生徒も、学級担任のすぐ近くにいた秦とつばさも、起き上がりかけで学級担任と話していた武蔵も発した。

「「「せんせ――――いぃぃぃぃ!!!」」」

 全員が悲鳴を上げた。

 そしてこのとき、入学初日で初めて全員の心が通じ合ったのであった。

 やっぱり、不安になってきたよ。俺、ホントにここの学園で生きていけるんかな?というより、死なないで生活できるんかな?

 武蔵の今日という日は、まじめに豪雨だ。

 ふと、耳を澄ませば窓の外から聞こえてくるではないか。ゴウゴウと(おけ)をひっくり返したような雨の音が。


第伍話です。お待たせしました。


今回は前回の続きでした。毎回そうですが。

つばさちゃんの可愛さ且つ殺人的体力が目立ちましたね(笑)。

琵琶之秦も中々安定してきました。

武蔵は……。うん、ね?


新キャラもどんどん出てきますので今後ともよろしくお願いします。

疾風ファンの方も、疾風ルートをどこかで書こうと思いますので、

楽しみにお待ちいただけたらなと思います!

では次回の六話目でお会いしましょう!

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