第参拾弐話 赤き姫
「全員、敵からくりを足止め。武蔵たちの後を追わせるなっ!」
あずさは隊員達に命令をし、戦いを再開する。
一体のからくりが、刀を振るってきた。
「キサマァっ!」
「はっ!」
からくりの身体が二つに千切れる。
「あいつら……大丈夫だろうか」
あずさの上空に怪しい風が吹くと、再び戦いへと戻る。
☆
「来たか」
菊夜京は、何かを察知したのか振り返った。
「よくぞここまで来られたものだ。誉めてやろう」
扉をこじ開け、部屋の中に入ってきたのは武蔵達。
「お前が、赤姫を……」
「ほほう。お主が、赤姫の主だったというわけだ」
菊夜京は、武蔵達に不気味に歩み寄る。
「こんなかわいそうなほど弱い主に仕えないといけないとは、からくりも可哀想な生を送らないといけなくなったか」
武蔵は途端に刀を振りかざす。
しかし、驚くべき速さで、菊夜京は間合いに入り、武蔵を蹴り飛ばした。
武蔵は、壁に打ち付けられ、床へと落ちる。
「まったく。この程度の力で、我に歯向かおうなど、笑わせてくれるッ!」
「お前……」
「我と戦おうなど百年早い。お主にはこれがお似合いだ」
菊夜京がそう言い終わると、武蔵は再び反撃に出た。
しかし、とてつもない衝撃を身体で感じたまま、武蔵は勢いよく床に叩き付けられる。
「さあ、相手をしてやれ――」
武蔵はかろうじて目を開くと、赤い一人の少女が目の前に立ちはだかっていた。
「――赤姫よ」




