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戦国バスターズ  作者: 石清水斬撃丸
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第弐拾陸話 尋問

「では、質問させてもらおうか。何故、あの暗殺者に手を貸した?答えろ、火花武蔵っ!」

 耳に付けられた機械から、怒鳴り声が聞こえてくる。

 暗殺者……。一体、誰のことを……。

 武蔵はあの時、あの場所で、確かに一緒にいた人物を思い出す。久々に味わったあの感情。あれを思い出させてくれたのは、黒い少女……まさかっ!

「その反応からだと、覚えているらしいな。さあ、教えてもらおうか?」

 口を開けたまま硬直している武蔵を見て、その人物はそう言った。

 しかし、武蔵は答えなかった。いや、答えたくても、答えられなかったのだ。

「あ、あぁ……」

 武蔵の口から出てきたものは、弱弱しい掠り声だけだった。

「答えたくないというのか?なら……」

 その人物はそう言うと、鞘から刀を抜き出し、そして、武蔵の首に突き立てる。

 首筋に当たる刀の感触。武蔵は、これが自分の生死を分けると、咄嗟に判断した。

「脅してでも聞き出すまでだっ!おっと、動くなよ。動いた瞬間、貴様の首に刀がぶっ刺さるからな」

 武蔵は、出来るだけ、頭を動かさずに、じっとするよう心掛けた。脈動が早くなり、額から汗が早くも流れ出る。

「貴様のせいで、私の可愛い部下達が亡くなった……。この鋼薔薇あずさの部下がなっ!」

 俺のせいで……? 嘘だろ……。

「貴様が動いていなかったとしても、負傷はしていただろう。だが、貴様が我々を、いや、我々だけではない。この事件の関係者全員を、貴様は裏切ったのだ。分かるか?貴様が裏切ったせいで、隊の陣形が乱れた。そして、亡くなった。殺された。裏切らなければ、助かっていた部下もいたかもしれないというのに。手で数えきれないくらい死んだんだぞっ!貴様のせいでなっ!火花武蔵っ!」

 あずさは感情が高ぶりさらに刀を突きつける。武蔵の首から少し血が垂れる。

「貴様のその甘い考えが、犠牲を生んだのだっ!」

 俺の甘い考え……。そういえば、今まで、俺は深く考えないで、行動して、それで問題を起こしていたような気がする……。「あの日」だって、俺が赤姫の様子に早く気が付いていれば、疾風達を巻き込まなくて済んだかもしれない……。俺って、やっぱり……。

 武蔵の目周辺に巻かれた包帯が淡く赤く湿る。

「貴様、泣いているのか?」

 あずさが武蔵に聞いてきた。それに対して、武蔵は掠れ声で返事をした。

「ふっ。泣かしに来たわけではないのだがな。まあ、今日はここまでにしておく。貴様も騙されていただけらしいしな」

 あずさはそう言うと、突き立てていた刀をしまい、ベッドの外へ出ようとした。その時、武蔵に再び告げた。

「ただし、私は貴様を許したわけではない。これからも絶対に許さない。それだけは、その小さな脳みそに叩き込んでおけ」

 あずさは、そう一言だけ告げると、今度こそ仕切り内から、室内から部下と共に出て行った。

「もう少し、優しく言えないものなのか。それより、大丈夫か?泣いたらしいが、眼球が沁みるんじゃないのか?」

 今の出来事を隅で見ていた麻道が、仕切り内に入って来る。武蔵は、ゆっくりと頷いた。

「うむ。やはり君は、優しい人の方が数倍好きらしいな」

「何を言ってっ!」

 武蔵は初めて声を上げた。しかし、すぐに噎せて、首を抑えながら苦しんでいた。

「反応をするな。完治が遅くなる。それと、あずさは言わなかったが、お前のお仲間は、しばらくここで拘束することになった」

 武蔵は「ピクリ」と止まる。

 何だとっ……。琵琶之秦、それに疾風やつばささんまで……。

「そう、感傷的になるな。ほら、また湿ってきてる」

 武蔵の目周辺に巻いていた包帯がまた湿る。

 そうは言われても……。これ以上俺のせいで、誰かを巻き込むのは嫌なんだよ……。

「何も全部、お前のせいではない。不具合に気付かなかった博士もいけなかったわけだし、容易に脱走を許してしまった私にも責任がある」

 麻道は、そう言いながら、包帯を巻くのを完了すると、武蔵を抱きしめる。そして、優しく語りかけた。

「今は休め。赤姫は、その後、皆で考えよう。取り返しに行くのも、助けに行くのも、皆で考えよう。お前は少し、自分に頼りすぎた。今からは、私達に頼れ。どんなに辛い事でも、どんなに苦しい事でも、何でもいいから、とにかく頼れ。いいな?」

 痲道はそう言うと、武蔵の首筋の処置を始めた。処置をしながら、痲道は、武蔵達四人の監視役をするのは自分だと話した。理由はいろいろあるのだろうが、やはり最後まできちんと見守ってやりたいのだろう。

「じゃあ、何かあったらそのボタンを押してくれ。すぐに、ここに、飛んでくるから」

 痲道がそう言うと、室内から出て行った。

 室内から出て行くのを感じると、武蔵は、深い眠りについた。それはまるで、甘い自分を脱ぎ捨てたかのように思えた。


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