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戦国バスターズ  作者: 石清水斬撃丸
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第拾伍話 悲劇

 目覚めるとそこは体育館……ではなく、保健室だった。見知った天井に、見知った仕切り。知らない間に武蔵は常連となっていたのである。

 ……なんか寒いな。こう、肌に直接布団が当たっているような気がするんだが。気のせいか?

「ご主人様。そろそろお目覚めになりましたでしょうか?」

「ああ、赤姫。入ってきて構わないぞ」

 仕切りの外から赤姫に聞かれ、武蔵は答える。すると、赤姫は仕切りの布を開けて入ってきた。

「体調は大丈夫ですか――って、何で裸なんですか!?」

「そんなわけあるか――って、えぇぇ! 何で俺、裸になってるんだ! 早く着替えを!」

 武蔵はベッドから起き上がろうとした。が、赤姫が体の上に乗っかり阻止した。

「どういうつもりだ? 赤姫?」

「こういう時にしかご主人様のお身体を鑑賞できませんので」

 なんてこった。武蔵は激しくがっかりした。

 まさかここまで赤姫が変態だったとは思わなかった。いや、これまでもそういうところは見せていた。だが、ついに俺の身体を見て鑑賞とか言ってしまう域に達しているとは思わない。思いたくもない。とんでもない子だ。

「はぁぁぁ……。感じます。これがご主人様のお身体を愛でることなのですね……」

「ちょ、赤姫。よだれが垂れてるんだが……」

「すいません! ご主人様の美しいお身体に汚れがついてしまいましたね。では……」

 赤姫はそう言うと、武蔵の胸に顔をすれすれまで近づける。

「赤姫、何をするつもりなんだ?」

「質問がよくわからないのですが?」

「なぜそこまで顔を近づけるんだ?」

「ご主人様のお身体に付いた汚れを落とすだけです」

 赤姫はそう言うと、舌を出す。武蔵は察した。大変なことになったと。すぐに赤姫の顔を抑える。

「ご主人様! 離してください! 拭き取れません!」

「拭き取らなくいい! そのくらい自分でやるから!」

「嫌です! せっかくのこの機会を逃すわけにはいかないのです!」

 武蔵の背中に悪寒が走る。これ以外に何かありそうだと思ったのだ。

 どうにかしてこの状況から逃げないと。でないと、自分のこれからが終わる!

 そう思いながら必死で抑えていると保健室の戸が開く。

「自惚れく~ん! ぶっ倒れたって聞いたから、冷やかしついでに見にきてやったぜ!」

 最悪な状況な時に、最悪な奴が来やがった!

 武蔵の悪寒が嫌らしい位に的中した。疾風が入室してきたのだ。その後ろには夜桜とその腕に抱き着いている紅桜の姿もあった。

「何をやっているんだ自惚れくん!」

 早速絡んできやがった。止める気ないな。

「そんな羨ましいことしやがって……っ! おい! 紅桜もオレを押し倒せ! そして、楽しもうぜ!」

「ふんぬっ!」

「ぐがぁ! やっぱり駄目か!」

 疾風は強烈な拳を紅桜から貰い、美しくぶっ飛ぶ。

 ぶっ飛ぶ姿は誰も疾風には勝てないな……。て、何を解説しているんだ俺は! 一番危機的状況に遭っているというのに! そ、そうだ。まだ希望はあるじゃないか! ここは紅桜と夜桜に助け舟を出そう! 疾風よりは全然手伝ってくれるだろう。

 武蔵は夜桜と紅桜。に助けを求めた。しかし、

「さあ夜桜。お姉ちゃんを押し倒してくれて構わないわよ。そして、そのまま一緒に……」

「ね、姉さん! 怖いです! そして、何をしようと思っているんですか!?」

「ソウカ……。一緒ニナレナイナラ、アタイハ一生夜桜ノ後ロデ幸セヲ殺ス」

「どんどん怖くなっているんですけど姉さん!」

「サア一緒ニ……」

 どうやら助け舟は沈んだらしい。気付かれずに寂しく。

 もうさすがに無理か。諦めるしかないのか。いい加減、腕が悲鳴を上げているしな。無理をすると、明日授業受けれなくなるかもしれないし。

 武蔵は諦め、抑える力を少しずつ弱めた。それに対してどんどん赤姫の顔が近づいてくる。

「ご主人様ぁぁぁ。いただきますねぇぇぇ……」

 赤姫は興奮気味にそう言うと舐める体制に入った。

 さあ、拭き取れ。そして、さよなら今日の自分。

「……ご主人様?」

「どうした? 拭き取らないのか?」

「拭き取る? ああ、これですか。では」

 赤姫は武蔵に言われ、拭き取る。

 くっ……。あれ? なんか想像していたよりも布っぽいぞ。一体どうなってんだ?

 武蔵は赤姫を見る。そこには、手拭いで自らの唾液を拭き取る赤姫の姿があった。

「これでいいでしょうか?」

「あ、ああ。ありがとう……」

「どうかしましたでしょうか?」

「いや、その、舌で拭き取らないんだなってな」

 武蔵が言ったその瞬間、「ビクッ」と体ごと赤姫は驚いた。

「えぇぇ! ご主人様! 一体何を言っているのですか!?」

「いや、赤姫が言っていたんだが……」

「本当ですか!?」

 再び赤姫は驚く。そして、武蔵も驚く。

「ああ本当なんだが……。覚えてないのか?」

「えっと、その時の記憶の記録がなぜか保存されていなくてですね……」

 嘘だろ。あれだけ危機的状況になっていたのに覚えていないとは……。どうなってんだ。

「それにしても、この水はご主人様のですか?」

「いや、赤姫が垂らした奴なんだが」

「そ、そんな! とんだ失礼なことをしてしまい申し訳ございません! 美しいお身体にこんな泥水以下の赤姫の唾液を垂らしてしまい……」

 そんなに言わなくてもいいんじゃないか? それと、俺の身体については同じなんだな。

「それと一つ聞きたいことがあるのですが?」

「何だ?」

 赤姫は顔を赤らめてもじもじしながらこう聞いた。


「さっきからご主人様の刀剣が赤姫の大事なところに当たっているんですが……なぜこんなことになっているんですか?」


「そ、それはだな……」

 武蔵は変に感じてしまったらしく顔を赤らめた。




 あの後、ぶっ飛ばされ気絶した疾風をなんとか目覚めさせ、寮に帰った。寮に帰った後、いつもより多めに夕食を作った。なぜかというと、武蔵が目覚めたのは放課後だったので、当然学食もやっているわけがない。それで多めに作ったというわけだ。

 夕食の時に、食事中の武蔵を眺めながら赤姫が切り出した。

「知っていると思いますが、今日の体育の時間に、ご主人様の頭に刺さりましたよね。あの蜂の腕が」

「あ、ああ。刺さったが、何かあったのか?」

 赤姫は武蔵を眺めるのを中断し、正座で語りだした。

「実はですね……。どうやら整備不良とかではないらしいんですよ」

 何?

 武蔵は首を傾げた。

「博士は自分の点検が甘かったと言ってますが、あの蜂の証言によると、とれる感じは全く無かったらしいんです」

「なるほど。ちなみに赤姫は考えられる範囲で思う事はあるのか?」

「ありません」

 無いのかよ。

「ですが、絶対に整備不良だとは思えません」

 赤姫は真剣な眼差しでそう断言した。そして一息つくと武蔵にこう言った。

「ちなみに、あの蜂がすぐに毒抜きしてくれなかったらご主人様は今いませんでしたね」

「それを早くいぇぇぇ!」

 武蔵は絶叫した。

 その後、就寝した武蔵だったが、どうも心に詰まるものがあるらしく、寝付けなかった。

 今日はいろいろあったが、確かに赤姫の言っている事は正しいと思うな。あの支尾先生が整備を失敗するとは思えない。と、なると第三者がいるのか? 

 武蔵は反対側、つまり赤姫の方を向き、質問した。

「なあ、赤姫。まだ起きているなら少し話していいか?」

 武蔵が見た方には、布団から出て立っている赤姫がいた。手にはなにやら見慣れた刀を持っていて表情は分からない。

 さすがにちょっと怪しく思ったのか、武蔵は起き上がり聞いた。

「赤姫? なんで立ってるんだ? 手に持ってるのは火種だよな? 赤ひ――」

 空気が切れる音と共に血が勢いよく飛び出る音が室内に気持ち悪い程響いた。


次回から激しくなります。武蔵は果たして生きているのでしょうか?

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