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戦国バスターズ  作者: 石清水斬撃丸
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第拾話 嗚呼! からくりよ! その三

「じゃ、学校巡り頑張ってね!」

「はい……わかりました……」

 先程、女性教師から強烈な連打攻撃を受けた武蔵はなんとか意識を取り戻し、こうして赤姫に背負われながら学校巡りを開始したのだった。

「支尾先生、よくわからない人だったな……」

「そうですか? 博士はいつもあんな感じですよ」

 支尾先生(しびせんせい)。本名・支尾(しび)小枝子(さえこ)。言うなれば、この世にからくりを生みだした開発者である。いつ、どんなときでも、からくり達の味方、正義の味方、親的存在、お母さんだ。彼女がどんな経緯(いきさつ)でからくりを作ったのかはもちろん、出身も、年齢も、何が目的なのかも、全てが謎。まさに生きた謎。そんな彼女なのだが、からくりからは、博士と呼ばれている。お母さんでも母上でも無く、博士。自分達の開発者であるから博士。普通と言うより、違和感を覚える言い方だ。生みの親とかならふつうお母さん等と言うものだが、なぜか博士。

「いつもって……。あの人、寒暖差あり過ぎて着いて行けてないんだけど」

「寒暖差はありますけど、とても良い方ですよ」

「そうなんだろうけどな……。あ、そこ左に曲がって」

 武蔵の指示に従い、赤姫は左に曲がり階段を上がる。

 武蔵の頭の中に、またあの場面が思い描かれる。

 さっきのあれはホントに痛かったなぁ。ここの学園の人達、皆あんなに強いのだろうか。いや、そんなはずないよな。桜田先生はどう見ても強そうには見えないし。

 まだ頭のてっぺんが痛い武蔵だった。

「そういえばご主人様の専用武器ってなんなのですか? まだ赤姫聞かされてないような気がするのですが」

 赤姫は背負っている武蔵に問いかけた。

 先程あった専用武器の受け渡しの時、赤姫が入ると話がめんどくさくなるという理由で赤姫は活動を停止させられていた、支尾先生によって。活動を停止した赤姫はぴくりとも動かずただ正座をして再開の時を待っていたのだった。

「ああ、そういえばそうだったな。じゃあとりあえず順を追って説明するとだな……」

 武蔵が赤姫に背負われたまま説明を始める。耳元でささやかれる旅に赤姫が天国行きになりそうだったが。

 支尾先生から渡された専用武器は「火種(ひだね)」という名前の刀だった。名前の由来的には、「火を起こす種の火」という意味らしい。まあ、こんなことはどうでもいいのだが。で、その火種という武器は、一見普通の刀なのだが、刀でしかないのだが、何やら少し変わった所があるらしく、支尾先生ですら言いずらそうだった。先生が言おうとした時、赤姫の活動再開時刻になってしまい、赤姫が目覚めてしまった。赤姫が目覚めてしまったので、話すのもめんどくさくなり、結局話さずに終わってしまった。

 で、今は赤姫の為に学校巡りをしている。なぜ学校巡りをと思うかもしれないが、実は新入生全員のからくりはここ戦命学園の設備のほとんどをわかっていないらしく、そのため今回の受け取りと合わせて行うという。なお、新校舎の生徒達も今日やるらしい。

「そういう事だ。とりあえずわかったか?」

「はい。とても素晴らしい声での説明ありがとうございます!」

 赤姫は武蔵の声に落ちていた。アホ毛が激しくビンビンと揺れ動いている。

 わかってほしい所はそこじゃないんだけどな。まあ、いいか。本人は喜んでいるようだし。でも、これで良いのだろうか。結果的に、支尾先生、赤姫の事嫌いなんじゃないのか? あ、でもあの時は俺の事、殺しにかかってきたし……。やっぱりわかんないな。

「あと、もう流石に降ろしてもいいぞ?」

「いえいえ! ご主人様を担ぐ事なんて滅多にありませんから、存分に担がせてもらいます!」

「存分にって……あ、この階でいいぞ。で、そこ右」

「はい、わかりました!」

 赤姫は指示を出されたのが嬉しいのか、それとも武蔵を担ぐ事ができて嬉しいのかわからないが、とにかく良い返事をした。

 一応、赤姫はどこに行くか分からないと思うが、一番最初に行く所は決まっている。支尾先生にやられた後すぐに思いついた。あそこしかないのだ。

 そして、目的地に着く。

「ここだ、赤姫。もう降ろしていいぞ」

「わかりました……」

 赤姫は元気がなさそうな返事をして武蔵を下ろした。

 なぜそんなにがっかりするんだ? 普通はもう持たなくて良いんだという開放感に満たされるだろうに。ホント不思議だ。

「で、ご主人。ここは一体?」

「あれ見ればわかるだろ?」

 赤姫は言われた方向を向く。

「図書館……ですか?」

「ああそうだ。情報を得るにはまずはここしかないと思っていたんだが……。何か不満か?」

「いえいえ! ご主人様の赤姫に対するお気使いに感激します! ありがとうございます! ご主人様あぁぁぁ!」

 赤姫は元気いっぱいに返事をするとともに、武蔵に飛び掛かり抱きつく。

「ちょっ! 待て! やめろ! ここで抱きつくのは止めろ!」

「はっ。失礼しました。つい欲が溢れてしまいまして……」

 どんだけ溜まってたんだ!? 出会ってまだ半日も経っていないと言うのに、なぜこうも俺に対して積極的に行動してくるんだろうな? 全く謎だ。

「まあ、とりあえず入ってみるか」

「そうですねご主人様!」

 赤姫は返事をすると武蔵の左腕を抱く。その行動に武蔵は戸惑いを見せる。

「……」

「どうかしましたか?」

「いや、何でも……」

 どうもこうもありまくる。さっき抱きつくのは止めろと言ったはずなんだが、どうやら勘違いをしているらしい。体が駄目なら、腕に目標を定めれば良いというわけではないだろ。はあ……。これをあいつらが見たらどう思うことか……。あと、胸が当たっている! 当たっているんですが! これはこれで俺的にも良いんだけど、でももう少し離れられないかな? なんだか恥かしくなるんだけど!

「それでは入りましょう。ご主人様」

「そ、そうだな……」

 赤姫は武蔵の左腕を抱きながら歩みを進め、戸を開けにかかる。

 やばい。このままでは、すごく恥ずかしい事になってしまう。それだけは何としてでも阻止せねば。

 武蔵はその数秒間で策を考える。人間、追い込まれた時に力を発揮するはずなのだが、どうにもこうにも策が考え付かない。

 そして、戸は開かれてしまった。

 あぁぁぁぁ。遅かったぁぁぁぁ。何で毎回、俺の未来はこうも悲惨なの? 風呂入ってたら線が抜けて、そのまま流されるくらい悲惨だよな毎回。くそっ……涙が止まれねぇ。

 武蔵は悲しさを内に秘めながら前にある現実と向き合う事にした。

「いいか赤姫。図書館では静かにするんだぞ」

「どうしてですか?」

 どうしてって、ホントに何も知らないんだな。しょうがない。今回だけ特別にってわけではないが、きっちり教えておく事にしよう。

「そのな、周り見ればわかると思うが、読書する時って言うのはどうしても集中しないとできないものなんだ。そこで騒いだりすると、集中して本を読む事が出来なくなるんだ」

「要するに騒ぐなという事でしょうか?」

「そういうことだ。どうだ、わかったか?」

「はい。問題ありません。赤姫の今までの行動の中には騒いでいる描写など一秒もありませんから」

 そうか? 今までの時間を辿ると大分あった気がするが……気のせいか? というか、早く腕から離れてほしい。周りの目線が何と言うか、その、つらい。

「あの……」

 武蔵が赤姫とイチャついていると、突然声がした。通常の声とは違う小動物のような小さな声だ。

 武蔵は一応……一応、赤姫に聞いてみる。

「何だ今の? 赤姫、お前の声……」

「はい。何でしょうか?」

 赤姫は武蔵の口から出てきた「赤姫」という言葉に反応し、目を輝かせ、一秒もかからず聞きにかかる。

 結果、赤姫を見てすぐに違うとわかった。

 赤姫じゃないとすれば一体誰の声なのだろうか。ネズミ? それともゴキブリか? 流石にそれは無いと思うが、一体……。

「すいません! 私の前でイチャついているそこのお二人様。少し足を開いてはくれませんか?」

 もう一度足元を見る。だが、いない。見えない。見当たらない。念の為、後ろを見てみる。

 するとそこには本がいた。一冊の分厚い本が、夢でも作り話でもないが、本が一寸ばかり浮いていた。

「本が喋っているだと……」

「ご主人様見て下さい。本が浮いていますよ。すごいですね、図書館と言う所は」

 赤姫は武蔵の腕を離れ、足元に浮かんでいる本を上から押していた。負けじと磁石のように退く本。

「あまりいじめないでください……。身長が縮んでしまいます……」

「身長?」

 本から出た言葉に疑問を抱いた武蔵は、浮いている本を持ち上げる。

 するとそこには小さな小さな、小人より小さい女の子のからくりがいたのだった。

「からくりだったのか」

「ふぅ……やっと治まった」

 武蔵は赤姫と一緒にしゃがみ、そのからくりをじっと見つめる。その体型は本当に小さいもので踏んでしまったら簡単に壊れてしまうのではないかと思うほど。しかし、こんな体でもさっきの分厚い本を持ち上げるだけの力があると思うと少し恐ろしい。

「……どうしましたでしょうか?」

 からくりは二人からじっと見つめられた為か頬を赤らめ、小さな眼鏡をかけ直す。

「いや、その、こんなに小さいからくり初めて見てだな……」

「小さいからくり? ああ、私の事ですか。別に珍しくもありませんよ。ここの学園では結構いますよ。()()ほどではありませんが」

「達?」

 武蔵はまた疑問を抱く。

 達ってどういうことだ? このからくり以外のからくりが図書館にいるってことなのか? それとも単純に学園単位の事についてなのか?

「えと、何でもありません。それより、一年生ですよね?」

「ああ、そうだ――じゃなくて、です」

「では一応自己紹介でもしておきましょう。私はこの学園の司書をしている主人のからくりの(りょく)(らん)といいます。大抵は図書館のどこかにいますので用が、あれば、いつでも、あぁ、うぅ……」

 緑蘭が自己紹介をしていたが、どうも赤姫が気になさらないようで、緑蘭の頭をやたらツンツンといじっていた。

「誰か助けて下さい~。というか止めさせてください~」

「赤姫止めてやってくれ。俺からもお願いだ」

「だってさっきから赤姫の事差し置いて二人だけで話してますから暇なんです」

 赤姫はふてくされるようにそう言った。

 案外飽きっぽいというか、構ってくれないと嫌な人柄なのかもしれないな。しょうがない。ここはさっさと紹介終わらせるか。

「じゃあ簡単に。俺は壱年負け組壱の火花武蔵でこちらが相棒の赤姫だ」

「ご主人様!」

「なんだ! いきなり! どうした!」

「今、『相棒の赤姫』と言いましたよね?」

「そ、そうだな。これから多分一生一緒だしな」

 武蔵がそう言った途端、赤姫の表情が途端に明るくなる。目を星のように輝かせ、今からでも抱きついてきそうな勢い。

「ご……ご……」

「いや、赤姫落ちつけ。一旦落ちつけ。な? ここ図書館だから、騒いだりしたら……」


「ご主人様あぁぁぁぁ!」


 案の定、勢いよく抱きついてきた。

 武蔵は抱きつかれた衝撃で本棚までぶっ飛んだ。さらにその衝撃で収納されていた本が崩れ落ちる。結果的には、武蔵と赤姫の上に落下した。

 く、苦しい。しかも、重い! からくりとはいえ、機械は機械。重さは人間の少女よりやっぱり重いのか。殺される! 誰か助けて下さい! というか止めさせてください!

「すごく仲が良いんですね」

 その出来事を影で笑みをもらしながら見届ける緑蘭の姿は少し怒りで満ちていた。


まだまだ改稿前には届きませんねぇ。

ぼちぼちやっていきたいです。


今回の話は赤姫ちゃんを押しまくりました。

私の中では結構好きです、赤姫ちゃん。

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