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戦国バスターズ  作者: 石清水斬撃丸
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第玖話 嗚呼! からくりよ! その二

 武蔵は未だに驚きを隠せないのか固まってしまっている。

「どうしたんですか? 大丈夫ですか? 赤姫のご主人様」

 赤姫が武蔵の周りを囲むように歩きながら呼びかける。

 大丈夫も何もない。なにせあの時のからくりがまさか自分のだとは思わないからな。いや、もしかしたら何かの手違いなのかもしれない。そうだよ、それしかない。こんな人面も、人望も、なにもかもが良さそうなからくりが俺のからくりなわけないじゃないか。考えすぎだったな。あはははは。……それにしても近い。顔が近い。そんなに近付かれると恥かしい。

「あ、赤姫とんだ勘違いをしていました」

 赤姫は何かに気づいたらしい。

 どうやら気づいたようだ。君の主人は俺じゃないよ。俺より力を持っている人が君の本当の主人だよ、ご主人様だよ。

「ご主人様の物になるんですから、私は妻、もしくは妹でしたね! うっかりしてました!」

 赤姫は武蔵の想っていた事よりもかなり違う事を訂正した。

 違う!そういうことじゃない!なぜそうなる!俺の考えを通り越して血縁的な事を想うとは……。この子、とんでもないアホなんじゃ……。

「ご主人様。さっきから表情がお固いですが、何かありましたでしょうか?」

 あるわけではないんだが、なんだろうな。信じられていないというのが俺の中では大半を占めていふぐっ!

「少しそんなに固くならないでください。赤姫は全部ご主人様の物ですよ? 今すぐにでも手を付けてくださってもよろしいのです。さあ、お願いします」

 赤姫がいきなり武蔵の後ろから抱きつき、そしてイヤらしい事をねだる。

 おいおいおい!いくらなんでもそれは行きすぎだろ!なぜ初対面の相手に、しかも持ち主でも無いかもしれない俺にそんなことを言うんだ!?やっぱりこの子とんでもない……。

 武蔵がますます固まってきた時だった。

 奥の左の戸から合図らしき音が鳴ると共に戸が開く。

「赤姫。エラー起こしてた奴ちゃんと治った?」

「はい。ついさっき解決しました」

 その戸からは白い白衣を羽織った女性教師が出てきた。

 女性教師は近寄ってきた赤姫を優しく撫でた。赤姫は任務を成功できて嬉しそうだ。

「で、そこのあなたは?」

 女性教師は固まっている武蔵に気づく。

「えと、その、自分は……」

「博士、あの方は赤姫のご主人様でして」

 言いずらそうな武蔵に代わり赤姫が答える。

 すると、女性教師は「なるほど」と言うように顎に手を当てて頷いた。

 この子、勝手にそう言ってるけど多分違うんだろうな。十五年も生きていればだいたい予想がつく。こういう場合は大抵外れる。だからこの場合も外れると思う。たぶんね。

「てことは、この人が火花武蔵くんということなの?」

 まさかだった。本当だった。事実でした。

 武蔵は女性教師の言った事に唖然としたまま頷いた。

「ほほう、なるほど。じゃあ、受け渡し始めてもいいわね?」

「はい……」

 武蔵はまだ信じきれていないのか、魂が抜けた声で答えた。

「まず、あなたのからくりだけど。この子ね。名前は赤姫。職業はあなたと同じ武士よ。……女武士だけど」

 なんともまあ驚いた。こんなに武士に見えない武士がいるとは。どう見ても貴族が従えていそうな使いにしか見えない。だが、しかし。やっぱりかわいい。

 武蔵は完全に赤姫に見とれている。

「ご主人様、どうぞよろしくお願いいたします! 赤姫、ご主人様の命令とならばいつでも脱ぐ準備はできておりますので――」

「いや、脱がなくてもいいから」

 赤姫が紹介交じりに危ない事を言ってきたので、武蔵は華麗に静かなツッコミを入れた。

 その様子を見て女性教師は「くすくす」と笑った。

「武蔵くんには悪いけど、その子すごく行きすぎた所があるから気をつけてね」

「いや、もうそれは知ってます」

 女性教師が忠告した時には、武蔵はもう赤姫に誓いの口づけをせがまれていた。それを必死に武蔵は止める。

 初めてのキスを自分のからくりに奪われるわけにはいかん!全力で阻止するんだ!

「……まあ、その辺はあと後慣れてくると思うから。がんばって! ファイトー!」

 女性教師は拳を上に突き上げ、武蔵を激励した。

 毎日これが続くとなると正直過酷だな。過酷以上かもしれん。く、汗が止まらないぜ!

「それでこれがあなたの専用武器の……あれ?」

「どうしたんですか?」

 女性教師は武蔵の専用武器を探し始める。机の上は書類やよくわからない工具などで覆い尽くされている。

「ごめん。ちょっと取りに戻るからその子よろしく!」

「え! ちょっと!」

 女性教師はそう言うとすぐに奥の右の戸に向かって歩き去り、そして中に入っていった。

「ご主人様! どうかお願いします!」

「やめろ! 今それどころじゃ――」

 武蔵は口づけをせがんでくる赤姫を無理やり押しのけ、難を逃れようとした。が、赤姫に止めるという任務は無い。

「お願いします! どうか妻だと思って――」

「いやいやいや! 思えないし、なぜやる義務があるのかが分からない!」

「それは……ご主人様だから?」

「答えになっていない。とにかく口づけはやめてくれ!」

 武蔵がそう言うと赤姫はやる気を失くしやろうとはしなくなった。口づけは。

「では、こういうのはどうでしょう」

 赤姫は武蔵の手首を掴み、それを自分の胸まで持ってくる。が、寸前で止まった。止まらせた。

「何をやろうとしているのかな?」

「胸もみですよ?」

「ですよ? じゃねぇ! 何て事をさせようとしているんだ!?」

「胸もみは、古代から立派な契約方法と謳われてますよ。中でも両手もみは最高の関係性を現すと言われております」

「謳われても言われてもない! 大体、なんで俺にこだわる!」

「ご主人様だから」

 だからは反則だろう。それ使われたらなんにも反論できない……。

「では、いきますよ。それ!」

「してたまるか!」

 武蔵は力任せに回避した。そしたら、足元が滑り抱きついた格好になってしまった。

「ぐ……ん、なんだこれ?」

「うぐ、ご主人様……そこは、はうっ!」

「丸みもあるし、それに少し柔らかい……」

 武蔵は謎の得体のしれない物を触り、感想を述べる。

 それにしても柔らかい。この世にこんなに柔らかいものなんてあるのか?俺の人生の中では初めてだ。それになんだろうか。筒状に長いというか。

 武蔵は手を優しく上下するように動かした。

「ご主人さっまああっ! 一回落ち着いてえぃっ!」

 ん、俺の上から赤姫の声が聞こえてきたぞ。なんでだ?

 武蔵は声がしてきた方向を確かめる。するとそこには、顔を真っ赤にして今にもあえぎ声を出しそうな赤姫の姿があった。

「え……なんで?」

 武蔵はそう言うと柔らかいものに触れている手の指を動かした。

「ひゃっ!」

 すると赤姫は声を漏らす。武蔵は自分が触れている物がようやく分かった。赤姫の柔らかい尻と太ももだった事に。

 武蔵は慌てて手を離す。

「すまん! というか、ごめんなさい! わざとでは無くて!」

「……ご主人様は、もしかして我慢できなかったのですか?」

「だからわざとでは無く……て?」

 武蔵は後ろに鋭い視線を感じ、後ろを振り返る。そこには、武蔵の専用武器を取りに戻った女性教師がいた。どうやら終わったらしく、手には専用武器なのだろうか刀を持っていた。ただ、さっきと明らかに違うのは、全身、特に顔から殺気があふれている事だった。証拠に表情は真っ黒い笑顔とおまけに怒りマーク二つが浮かんでいる。

「ニコオォォォ」

 武蔵は感じていた。自分の生命が危ういと。

「先生、聞いて下さい。今までのは全部事故だったんです。わざとじゃないんです。信じて下さい。お願いします」

 武蔵の攻撃。謝罪の乱。

「ニコオォォォ!」

 女性教師の殺気がぐいーんと上昇。攻撃、特攻がいつもの三倍に上がった。

 女性教師の攻撃。火種爆発の刑!

「ちょっ! 待ってくだごふへぇ!」

 持っている刀が武蔵にとてつもない損傷を与える。

 武蔵は倒れた。武蔵の目の前が暗黒に染まった。


はい、というわけで玖話でした。読みかたは普通に「きゅう」です。


今回は前回の続きで謎の少女が自分のからくりだったという話です。

それにしてもかわいい!赤姫ちゃんかわいいよ!自分で書いてても思っちゃうよ!武蔵がうらやましい!くぅ~!

女性教師の本名は次の回で判明いたします!ワクテカしながらお待ちくださいませ!

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