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<八>読経

 華子は、どうも腑に落ちないので、故人である麻紀さんの遺族の方と話そうとした。何か分かるかも知れない。

 ところが、両親と見られる夫婦は泣きじゃくるばかりで話が全く通じない。

「あの。私、華子ですが。このたびはご愁傷様です。お母様ですか?」

「ううう。ううう。うわあーーー!」

「あの。お父様でいらっしゃいますか?」

「うんぐー。ぐぐぐぐ。ぐわしゃあーーー!」

 旦那さんらしき人に話しかける。

「あの。ご主人……」

「わああーーー!」

――ご主人まで。

 こうなってくると、尋ねること自体気の毒な限りである。


「お導師さまの入場です!」

 時間になって僧侶が入場してきた。どこかしら普通の仏教の僧侶とは身に着けている袈裟といい様子が違う。

 僧侶が読経を始めてまもなくのこと。弔問客が一斉に鞄から一枚皮の太鼓とばちを取り出して席から立ち上がった。

 華子も慌てて席を立った。

 ポン! ポン! ポン! ポン!

 ポン! ポン! ポン! ポン!

 弔問客がさらに一斉にお経のようなそうでないような不可思議な言葉を唱え始めた。

「デンデレブッダ、ゴンジャンドレッチョ、ホンジャマカ」

「トーチャンカーチャン、ズルムケドレット、コッパズカシカネ、オモテナシ。はい!」

「デンデレブッダ、ゴンジャンドレッチョ、ホンジャマカ」

「トーチャンカーチャン、ズルムケドレット、コッパズカシカネ、オモテナシ」

 葬儀社の男性が華子の後ろに来て背をかがめ、華子に耳打ちした。

「インドから伝播された大変有り難いお経です。分からなければ口をパクパクしていて下さい」

 ポン! ポン! ポン! ポン!

 ポン! ポン! ポン! ポン!

「デンデレブッダ、ゴンジャンドレッチョ、ホンジャマカ」

「トーチャンカーチャン、ズルムケドレット、コッパズカシカネ、オモテナシ。はい!」

「デンデレブッダ、ゴンジャンドレッチョ、ホンジャマカ」

「トーチャンカーチャン、ズルムケドレット、コッパズカシカネ、オモテナシ」

 再び葬儀社の男性が華子に耳打ちした。

「『オモテナシ』のあとの合掌を忘れずに!」

――何なのこれぇ! どこの宗派よ。それに、インドからのお経だって、何だか思いっ切り日本語入ってない!?

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