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君を離さない  作者: 愛華
6/8

〜不仲〜先藤隆道


      ニ日目(火)〜不仲〜

               先藤隆道             

 俺は苛ついていた。何故なら気に入りの成瀬海が死んだからだ。

(何であいつが死んだんだ?)

 考えられるのは蓮か武に仇討ちとして殺されたという説だ。成瀬がいないのはかなり困る。

 俺が虐めをすると教育委員会に訴えられると職を失ってしまう。だからいざとなった時に生徒同士の悪ふざけという事で型をつけられる様に成瀬に頼んで虐めをさせていたのだが。

 昨日に引き続き今日も宮瀬への虐めは無い。

(そもそも修也のやつが俺の秘密をバラしなんかするからだろ)

 修也は蓮の父親だ。修也とは幼馴染でよく共に遊んでいたのだが段々と時間が経つにつれ競争心が芽生え始めお互いの関係に亀裂が入っていった。

 俺が修也を目の敵にし始めたのは修也と大喧嘩をした時だ。きっかけは俺が修也の妻に無理矢理結婚を迫った事だ。

 それに対して修也は俺が気絶するまで首を絞め上げたのだ。

 完全に関係が壊れたのは俺が教師になった際に俺が汚職をした事だ。それを知った修也は俺の汚職をバラしたのだ。

 修也は腹いせだと言っていたがもう時効だろう。

 その復讐として俺は成瀬に修也の息子の零を虐めるように言ったのだ。修也の奴は何回か絞めないと気が済まない。

(クソ……ムカつくな)

 だが、蓮や武が成瀬を殺せるほど力を持っているとは思えない。

(なら、誰が?)

 修也も修也の妻も事件の被害により亡くなっている。2人が事件により亡くなったのは6年前だ。関係者だとしても今更、こんなことはしないだろう。

 俺は考えながら廊下を彷徨いていた。放課後だからか誰もいない。三年生の教室の前を通りかかったとき机で誰か生徒がいるのが見えた。

(あれは――瑠衣か?)

 教室に入ってよく見ると瑠衣は眠っていた。机に突っ伏して寝ている。おそらく委員会などであちこち動き回ったから疲れていたのだろう。

(可愛いな)

 俺は修也の妻に振られてから長年人付き合いが出来なかった。この学校に赴任して制度の名簿と顔写真を見た中で一番好みの生徒が宮瀬瑠衣だった。

 男とは思えないような可愛らしい顔だったから気に入りの生徒だった。同性愛というのが許されるのならいっそ付き合ってしまいたいぐらいだ。

 俺は25歳、瑠衣は18歳だから差はあるがおかしくない。こんな可愛い奴が蓮と共にいるなど許せない。近くによると良い匂いがした。

本当に可愛い。

 俺は瑠衣の机に手を入れる。そしてある物を取り出そうとするが見当たらない。

「――? どこだ……?」

 教室の隅々まで探したが見つからない。

 頭を悩ませていると何処かから声がした。

「お、変態だ」

 振り向くと宮瀬蓮が扉の所にいた。

「宮瀬……何で」

「先帰っててって言われたけど、鍵預けてたから」

「そ、そうか。えっと、その、これは……」

 俺は焦って宮瀬を見る。

「別に誰にも言うつもり無いから焦る必要無いよ」

「そうなのか?」

「うん、どうせ兄さんは先生に手出しなんかしないだろうし」

 そう言って宮瀬は呟いた。

「先生は、まだ良いかな」

「え?」

「先生、成瀬の父親って本当ですか?」

「え……」

「噂、知ってるでしょ?」

 噂というのは恐ろしいものだ。俺は元々旧姓で仕事をしている。それなのに成瀬と俺が親子だとバレるとは思っていなかった。

「知ってるけど」

「本当なの?」

「あぁ、本当だ」

「じゃあ、先生が成瀬に指示して僕や兄さんを虐めてたっていうのは?」

「それは……」

「あ、訴える気は無いから」

「……本当だ。修也が許せなかったんだ」

「あれか。父さんが先生の首を絞めたっていう」

「そうだよ。そのせいで痣が残っちまった」

「随分本気で絞められたね」

「あいつ、キレると首を絞める癖があるからな。殺意すら感じたよ」

「まぁ、父さんはそういう人だから」

「昔から変わってないな」

「……先生、一つ聞いても良い?」

「なんだ?」

「先生は、兄さんの、何なの?」

「え?」

「彼氏なの?」

 そう、問われた。俺は思わず宮瀬を見る。篠宮の表情は暗かったが目はしっかりと俺を見ている。透徹した目だった。敵意を向けられている気がした。それほど鋭く冷たい目だった。

「いや、違う」

「じゃあ、何?」

「え?」

「どう思ってるの?」

「何で、そんな事」

「いいから」

 有無を言わさぬ口調で声を荒らげて言われた。俺は思わず後退りした。

「俺は、別に好きじゃ……」

「なら、これは何?」

 そう問われ宮瀬の手元を見る。心臓が止まるかと思った。宮瀬が持っていたのは俺のカメラ。

 それは俺が先程探していたものだった。全て、俺が学校中に仕掛けておいたものだ。更に印刷しておいた瑠衣の写真も持っている。

「何で……お前が」

 声が震える。気づくと全身が汗をかいて震えていた。

「悪趣味過ぎる」

 そう言って宮瀬は写真を破り捨てた。

「あぁ……」

 俺の宝物が無惨に捨てられた。更に宮瀬は写真を踏みつけた。

「――お前は宮瀬とどういう関係なんだ?」

「え?」

「付き合ってるのか?」

 確か、再婚してできた兄弟なら付き合ったり、結婚する事は可能だった筈だ。もししていたら最悪だが。

「いや、違うけど。ただの兄弟」

「じゃあ、宮瀬がどう思ってるか分からないじゃないか」

「兄さんは僕が好きだよ?」

「何で分かるんだよ」

「だって……いつも話しかけてくれるし困ったら助けてくれるしシャンプーとかだって俺が好きなやつ知ってて使ってくれてるんだろうし夜だっていつも作ってくれるしそもそも僕に生きる理由くれること自体好きだって言ってる様なもんだろ?」

「あ、頭おかしいだろ……」

「え? あんたに言われたくないなぁ……」

「そ、それに友達としてじゃないのか? 家族として好きなだけかもしれないだろ?」

「いいや、恋愛としてだよ。兄さんは絶対に僕が好きだ。他のやつが好きならそいつには死んでもらうよ」

「は?」

「だから……」

 宮瀬は突然俺の首元を掴み壁に押し付けた。

「仕事以外で兄さんに近づかないで」

 首を掴む手に力が込められる。

 段々と首が絞まっていく。

「兄さんを穢したら許さない」

 殺される。頭の中で非常ベルが鳴り響く。

 こいつだ。成瀬を殺したのはこいつだ。

 危険人物――。敵にする相手を間違えた。

「分かった。近づかない。だから――」

 宮瀬は冷たい目で俺を見下ろす。宮瀬は俺よりも身長が高い。生徒に見下ろされるのは屈辱でしか無い。

 特に、修也の息子に見下ろされるのは。

 その時、瑠衣が少し反応した。

 暫くして、宮瀬は手を離した。

その瞬間俺は倒れ込む。過呼吸になると同時に激しく咳き込んだ。そんな俺をまるでゴミでも見るかの様な目で宮瀬は見下ろしていた。

 宮瀬が目をこすりながらこちらを見た。

「あれ、先生? 蓮まで、先帰ってたんじゃ無いの?」

「いや、家の鍵……」

「あ、ごめん」

「こんなとこで寝てたらダメだよ。寝るなら家で寝ないと」

「ごめん」

「先行ってて。後から行くから」

「うん。先生、さよなら」

「あ、あぁ」

 瑠衣はバックを持ち走り去っていく。暗い教室に俺と宮瀬が残された。俺は心底怯えた目で宮瀬を見た。宮瀬は酷く冷たい……されど鋭く暗い光を放つ目で俺を見つめている。

「兄さんに近づいたら、バラすから」

 そう低い声で言い、宮瀬は去った。

(あの目……あの暗く光る目……修也と同じ……)

 あの暗い、闇を彷彿のさせる目は修也と同じ目だ。見つめていると心の底を震えさせる様な目だ。宮瀬は赤と黒のオッドアイだから修也とは少し違うが他者に恐怖感を与える部分は同じだ。

 不意にラブホリックという言葉を思い出した。どこかで聞いたことがある。

 確か――。

 その時、ある重大なことに気づいた。

(……不味い)

 いや、大丈夫だろう。きっと気付かれない。

 あれに気づいたのなら奴は狂人か化け物だ。

 でも――もしも――気づかれたら?

(まさか――な)

 俺は暫く座り込んだまま体が痺れて動かなくなるまでその場を動けなかった。

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