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3話

「なんだか物々しい雰囲気だ……近くへ行って確認してみよう」


 村の入り口付近では、軽鎧を身に着けた武装集団が村人たちと対峙していた。彼らは統率が取れているわけではなく、それぞれが好き勝手な装備を身に着けている。中には剣を腰にぶら下げた者や、斧を肩に担いだ者もおり、いかにも荒くれ者といった雰囲気だ。誰も武器を抜いてはいないものの、威圧するように村人たちを睨みつけている。張り詰めた空気が漂い、緊迫した状況であることが見て取れた。


 トオルが近づくと、そのうちの一人がぶっきらぼうに問いかけてきた。


「なんだ、お前。どこから来た?」


「僕は、あちらの山の向こうから来ました」


 そう言って、トオルは先ほど走ってきた森の方を指さす。


「……そうか」


 男は興味なさげに一言だけ返すと、すぐに村人たちの方へ向き直った。


「さっき言ったように、また来るからな。その時までに用意しておくんだな」


 そう言い残し、荒くれ者たちは村からでていくのだった。


 村人たちが寄ってくる。どうやら、先ほどの緊張した空気はひとまず落ち着いたようだ。


 代表なのか、 白髪混じりの初老ぐらいの男が、興味深げにトオルを見つめながら話しかけてくる。


「旅人のようじゃが、こんな辺境の村まで来るとは珍しいのう」


こちらがうなずくと、村人たちは警戒を解き、それぞれ村の中へ散っていった。


「さっきのは一体どういう状況だったんですか?」


 トオルが尋ねると、村長はため息をつきながら答えた。


「ここは辺境の村でのう。領主様の警備が行き届いておらん。あのような無法者が現れることも珍しくないんじゃ。それに、まだ開拓が始まったばかりで、防備もしっかりしておらんからのう……」


 周りを見渡すと、建てられたばかりの家々が並んでいた。木材の色はまだ新しく、ところどころに建築途中のものも見受けられる。村の外周には簡素な柵が設けられているが、防衛目的というよりも境界を示す程度のもののようだ。


 畑も最低限のものが整えられ、まだ作物は育ち始めたばかりといった様子だった。これから本格的に耕作を進めていく段階なのだろう。まさに開拓途中の村といった雰囲気だ。


「盗賊が出るような辺境の地で、なぜ開拓しようと考えたのですか?」


 トオルの問いに、村長は腕を組みながら答える。


「単純な話じゃ。この国の北側は、まだほとんど手つかずの土地なんじゃ。この村は、その北側の資源を調達し、調査する拠点として作られたんじゃよ」


「まあ、口減らしというのも理由のひとつですな」


 村長は少し寂しそうに笑いながら続けた。


「ところで旅人の方、泊まる場所は決まっておるじゃろうか?」


 ふと周囲を見回すと、いつの間にか空は赤く染まり、夕暮れが迫っていた。話を聞いているうちに、時間が経っていたようだ。


「よければ、わしの家に泊まっていかんか? まだ空いている部屋があるのでな」


「ありがとうございます。お世話になります。」


そう答えると、村長の家へ向かうのだった。


道すがら、村の中を横目に見てみると、家は建っているものの、畑は小さく、開拓はまだこれからといった様子だった。


(なるほど……やっぱり発展途上の村って感じか)

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