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【七話目】宝箱の管理は大変でした!

フェローリアは宝箱へ手を掛けた。

そして息を飲んだ



「ーー!?」




「なんてこと…」




「あ……」






「開かない……っ」

「この宝箱、錆び付いてて開かない!!」



「期待値だけ膨れ上がって、いざ開けようとしたら錆び付いてて開かない、なんて…」


「これじゃ勇者様のモチベが下がってしまうわ!!」


「ふぅ…気づいて良かった…」


おもむろにリュックの中からオイルを取り出し、宝箱の金具へ塗布した。



「さあ、これで開けるようになったハズ……」



フェローリアは再度、宝箱の開封を試みる。



オイルが功を成し、今度はスーッと開いた。


わくわくしながら宝箱の中を覗き見たフェローリアは言葉を失う。



「ーー!!?」




「………そんな…」

「まさか……こんな、こと……」



宝箱の中には、なんと!

何も入っていなかった!

………


……


呆然としていたフェローリアはやっと言葉を発した。

「…こんなの、ダメよ」



「あれだけ期待値を上げる場所にあって、ホラーの顔の間を越えて、やっとたどり着いた宝箱になにも入ってないなんて」


「こんなのクレームものだわ!」


「いいえ、クレームならまだマシ…」


フェローリアは最悪の事態を想像して、顔がサーーッと真っ青になった




「最悪の場合…勇者様がヤル気をなくして、魔王の討伐を止めてしまうかもしれないわ……っ!!」



フェローリアは勇者がどのような人物かは知らないが、年齢はまだ16歳、とだけ聞いていた。


何せ多感な年頃だし、いろいろとナイーブになったり破滅的な行動をとりがちな年代だ。

さらに勇者というプレッシャーに抑圧され、ちょっとの拍子で弾け飛んでしまうとも限らない。



『こんなに苦労して宝箱を開けたのに何もないなんて!俺もう勇者辞める!!!』



…などという事になりかねない。



「そんな事になったら、この遺跡のせいにされてしまうわ…」


「遺跡の責任は、守護者の責任でもある……」



フェローリアは暫く無言で考え込み、そしてやっと決意した。




「妖精王さまからは、ダメって言われたけど……」



「1個なら……1個なら良いわよね……」




フェローリアは、おやつとして持ってきていたアンブロシアをリュックから出して、ソッ…と宝箱へしまった。。。



アンブロシアは生の果実であるため、定期的に入れ替える手間がかかるが、フェローリアは勇者がそう遠くない未来にやってくると思っているので


「ちょっとの手間くらい、へっちゃらよ!」



と考えていたが…


ここだけの話し

後々この時の考えを後悔し、この宝箱の中身は放っておいても腐らない別の何かに置き代わるのだった………。






さて、遺跡の地下一階の修復は今のところはこれくらいで良さそうだ。


今日の作業はここまでにして、続きの地下二階の確認はまた後日にしようと、フェローリアは地上一階の自室へと戻っていった。



軽く畑の手入れをし、行水をして身体を清めてから、いつもの神々の食べ物で簡素な夕食を作って食べ、夕日が沈む見事なマジックアワーを見ながらしみじみと想いを馳せる。



「勇者様ってどんな方なのかしら…きっと端正なお顔だちで、逞しくて素敵な殿方でしょうね…」


そう憧れの念を抱きながら、フェローリアの1日は今日も何事もなく終わったのだった。



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