17 戦利品を
ヴェギラゴはさも、そこまでの期待は本気でしていないと笑って見せた。
顔が少々引きつっているのが分かるのだが。
「う、うん。でも何か方法はきっとあるさ。そのために世界を見て来なきゃ」
ヴェギラゴの気持を察っすればきっと……全てを話せば「助けてくれる気はないのか」とそのように言うだろう。もちろん属性の有無は関係あるし、そこは嘘じゃない。
俺の能力は今、退化しつつあるのだ。
つまり弱っている。
それもある。
自分の取った行動が逆に取り返しのつかない事象になった時にそれを巻き戻す能力もあるのだが……。
退化現象によって戻せる時間が短くなってしまったのだ。
仮に全部の鎖を切れたとしよう。
彼が飛び立ったあと、勇者術の効果が切れた鎖の破片は散り散りになることだ。
鎖の破片を周囲のスライムたちがどこかへ持ち去ったら回収不能だ。
彼の時間を戻せるわけではない。
能力を使用した対象に巻き戻しを施せるだけなのだ。
だから──
鎖を全て元に戻せたとき、彼を解き放つ前の状態に納められる。
その事態に気づいても鎖の破片がひとつでも見つからなければ、たとえ俺の命だけが彼によって保障されていても多くの誰かが死亡することになる。
彼が変わらずに封印されし邪竜であるなら。
そして鎖の残骸に触れれば勝手に破片を回収できるわけではない。
そのように広範囲に能力が及ばないのも現実なのだ。
取り返しのつかない事象。
これはあくまでも彼が勇者達に封じられた理由を彼がまだ野望として抱いていればの話だが。
だからこそ俺がいま最優先に選択することは回復の特化なのだ。
自分自身のな。
こんな危険な生物がいる異世界だ。
また知らないうちに意識を失うのは勘弁してほしいからな。
僧侶的な存在を早く探してこの異世界の回復術を研究し取得しなければ。
修得ではなく、取得するのだ。
俺は他者が成せる技術をある程度コピーできるので回復スキルが蘇生レベルに到達している奴に出会えれば一番手っ取り早いというわけだ。
現時点での彼の救出は俺にとって急務ではないのだ。
だが尻尾の件はここで流されたくはなかった。
だから言葉通り鎖は切断して見せたのだ。
さあ尻尾を戦利品として差し出してくれ。
俺は人間の街に行き、高価な酒をたらふく飲みに帰るのだ。
酒場で羽振りのいい所を見せつければ冒険者という奴らが目の色変えて寄って来るにちがいない。
なるべく高レベルの僧侶さんと仲良くするつもりでいるのだ。