15 侵略者のちから
単なる情報提供者という関係よりも深く関わって友好に持っていきたいのだ。
彼も、ここまで話をしてくれたのだし。
名前を呼び合ったのだ、本当に遊びに来てほしい気持ちがあるだろうな。
俺は透視力を持つ。
だが、こうまで強靭なエネルギーを内包している存在の心は容易く読めない。
心の内を知られたくないとき、人は自分の心にも嘘をつく。
表情や仕草、言動から他者に思考を読まれまいとする人間もよく読み取れなかった。
その考えを持たない者はスッと読み取れたりする。
侵略心を捨てたからこの能力はかなり退化しつつある。
俺の透視には2種がある。
「物質透視」と「感情透視」だ。
俺は後者の感情透視が前者よりも退化傾向にある。
壁の向こうや少し距離を置いた場所の危機ぐらいは判別がつくが。
腹の中のことを視るスキルは確実に鈍くなった。
この世界はそれを多用することで伸ばせるみたいだ。
使用できる者に対して使って行けばスキルアップで取り戻せるのだろうか。
まあ、今はそれよりもだ。
「ヴェギラゴは、俺がこのまま行っちゃうと思ってるの?」
「あ? 何しに残るのだ。まだ話がしたいのならゆっくりして行くがいい」
「聞きたいことがないわけではないよ。でも今は金策が先だから、ね!」
「むん? 何をしようと言うのだ?」
彼の問いかけをよそに先程の青色の鎖を手に取る。
ヴェギラゴの眼にはっきりと映るようにそれを持ち上げる。
「この青いのは水属性だったね。これにしようかな……」
彼の眼は、やるだけ時間の無駄だというように細くなる。
細めながらも見ているのなら結構。
スッパァ──ンッ!
そのような軽快な音が聞こえたかはさておき。
「な、何だとっ!? こ、これは……おぬし、一体何をしたのだ……?」
俺の内心はドヤ顔で表情に出ていたかもしれん。
俺は青色の光をまとう鎖を手に取り、彼にアピールするようにそれを切断した。
ヴェギラゴの喜ぶ顔が見たくて眼前で真っ二つにしてやったのだ。
驚き戸惑うとはこのこと。
それに匹敵する状況が彼の人生に生じたのはきっと千年前の封印の時以来だと思う。
もっともこれは属性攻撃ではない。
そんなもの使ったら目の前で大爆発が起こる、と思う。
属性同士がぶつかれば化学反応も起きるだろう。
いまはそれを「聖」が無効化しているのだろうがな。
だからヴェギラゴが驚きを隠せないのもわかる。
まず物理的処方を展開しておく。
通用しなければ、とっておきを披露する。
おそらく彼には経験のない能力なんだろうな。
これが俺の奥の手となる物質切断方法。
プラズマだのエーテルだの、その現象はどこの世界にもあるはず。
ここも総称を魔力と呼んでいるだけだろう。
流星人の能力の真実の呼称は誰も知らないが。
宇宙で知られた名があった。
【人類空想学の錬金】
かつて人類は惑星地上人、我らのような侵略型流星人を創造神ドリケムと。
粒子生命体の祖であるドリケム、その末裔一族の一人が俺なのだ。
星空の覇者。一族の憧れは創造神ドリケムのその異名であった。
地上人はモノ作りや研究が得意だが、超能力はない。
その創造のための創作力を喰らって能力化できるのが流星人だ。
数々の惑星の民を身体ごと乗っ取り「発想の転換遺伝子」を寄生解析のあと具現化し、スキル進化へと。得た能力で略奪をし、略奪による優越の奪い合いが激化した。激化の果てに人類を踏みつけにして繁栄を極めてきた宇宙の主力能力者となっていった。
侵略は種を絶やさないために繰り返されてきた。