11 知りたいんだ
「もちろん炎はあくまで炎で、焼き尽くす性質に変わりない…」
「うんうん」
「聖は回復だと言うたが「特化レベル」でなければ完全修復には至らないのだ。よって【聖炎】ということは炎属性に究極の【聖】が加勢しておるということだ!」
「完全修復ってことは、結果的に朽ちないってことだよね?」
「さよう」
「聖の働きが究極レベルのため、加えたダメージを即回復させて、あたかもそこに変化がなくスキルが通用しないかのようであるというのですね」
ヴェギラゴが笑みを見せ、噛みしめるように頷く。
そのまま続けて尋ねたいことがある。
ここが一番大事。
「ヴェギラゴ、よく聞いて」俺は彼に神妙な言葉遣いを向ける。
彼は「急にどうしたのだ」とキョトンとする。
ヴェギラゴよ、悪く思わないでくれ。
これがきみと俺と人類のためなのだ。
俺の不審な問いかけにより、これから場の空気の流れが急変することに彼はまだ気づかない。だけど安心するがいい。いまに楽にしてあげるから。
「「聖」も、おなじ勇者が操っているの? これ他に術者がいるのでしょ?」
「ほう!……なぜそのように思ったのだ?」
それまで好意的だった彼の声は静寂に包まれたように冷ややかなものになる。
俺が突如、質問の趣旨を変えたから気を悪くするように。
「だってこの鎖、七本もあるじゃない? 七人の英雄がそれぞれ異なる属性の使い手なら、全員「聖」の【特化加護】を会得しているのか? 全員だよ?!」
さらに意味深な質問を俺の口から聞くと。
ヴェギラゴは「いったい何のことを言っているのか?」といい──、
俺にその根拠を求めた。
「会得していない可能性をどこに求め、何でそれを否定の基準とした?」
「否定の根拠は2つある。1つは話題にあった七英雄が継承者であることさ!」
「あ?継承の何が根拠になるのだ?」
「子孫は過酷な試練を受けるなりするだろうが、世代交代するたび必ず先人と力量が同等だろうか?血はいずれ薄れるもの。なら封印弱くなるだろふつう」
「リヒト……おぬし……?」
「ヒーラーの命を踏みつけにしてまで奪い合う世界なのに、世界に七人も同時期に究極の「聖」を有する者が育ちますか?」
「……いったい、なにが言いたいのだ?」
「他に多くの転生者もいるのに可能ですか?あとの六英雄も転生者でしょ!」
「われがおぬしに偽りをもうしていると言うておるのか?」
「聖のスキルを極めた者がいて、七英雄の特化属性に加勢した!それが真実じゃないのですか?知りたいだけなんだよ俺は」
一方的なのは分かっているよ。
いまあなたの前にいる俺は、あなたが──。
「ついでだ、もうひとつの「言いがかり」も聞いてやろう!」
くっ、そう来たか。
俺の回復スキルの爆上げには、そいつの情報が不可欠だ。
だからここで聞き出したいのだ。
ヴェギラゴは何かを隠している。
俺がここで情報を入手する代償として払えるものは、ひとつだけだがある。
だがそれは俺にとっての奥の手だ。
このまま問答でできるだけ聞き出して、奥の手を見せるのは避けたいのだ。
俺は見たんだ、あなたが──。くっ、それをここで考えるな。
やばい。
ふと、ある回想に意識が飛びそうになった。
やばいやばい。
この至近距離だ、彼の感知スキルも警戒しなければいけないから。