プロローグ
「回復抜刀斎だ──っ!!そっちへ行ったぞ!」
「追え──っ!やつを逃がすなっ!」
警備兵に見つかってしまったか。
ワオリ村の患者もこれで全て治癒できたことだし、逃げるが勝ち。
俺は追われの身だった。走って走って走り続ける。
「傷を治してくれてありがとう!」
道行く者からの純粋な感謝の声が俺に向けられる。
尊いばかりの癒しの声援だ。
つぶらな瞳で、手当てを受けた子供が俺の傍に駆け寄ってきた。
そして──
「はやく逃げて! でもまた遊びに来てね! ぜったいだよ」
前方からも後方からも。
振り返るとまたそこに格別の微笑みを見つける。
まるで天使の微笑み。胸がキュンキュンするぜ。
可愛くも無垢なる声が聞けた。
今日もまた沢山の可愛い子供の声が聞けた。
その言葉が聞けて俺は幸せだ、手を振って「元気でな!」といい、光となる。
俺の移動速度は今や流星だ。
走りだせば誰にも越されはしないさ。
捕まることなどありはしない。
馬鹿な兵士ども。
だが、あいつらもまた地上の民だ。
俺が愛すべき地上の星の一員たちなのだ。
治癒を必要とするも、貧困さの極みで治療を受けられない民たち。
病原菌と揶揄され虐げられる彼らこそが俺の救世主だ。
俺をこの地へいざなったのは間違いなく、弱き肉体の地上人たち。
地上の星の王子様たちを守るため遠い星から君たちへの贈りものだ。
『クーナガリビト』
その異世界の名は、クーナガリビト。
地上の民が皆、そう呼ぶのだ。