銃の精霊ルア編②
湖の精霊に会うために精霊の住むとされる湖の傍までやって来た俺=佐村光矢と仲間達。広い湖の傍でずっと立っていたが、ふと俺は気づいた事を言った。
「……ここに精霊がいるとして……その精霊は、どうやって出すんだ? 普通に呼べば来るのか?」
すると、途端にルリィやサレサ、シーフェの顔に「?」が浮かんだ。どうやら、この世界の人でさえ、精霊の呼び方については、詳しくないみたいだ。
それならどうやって、その精霊を呼べば良いのだろうか……。せっかく、この場所に辿り着けたとしても……これじゃあ、意味がない。
と、思っているといつの間にか俺の隣まで来ていたルアが告げてきた。
「僕は、知っているよ!」
「本当か!?」
同じ精霊であるルアには、湖の精霊を呼び出す方法が分かるらしい。早速、その方法を試して欲しいものだが……。
「それで、どうするんだ?」
「うん! それなんだけど、主には1つだけ頼みたい事があるんだ」
「なんだ? 遠慮せず言ってみろよ」
ルアは、淡々とした様子で告げた。
「……主の血を湖に垂らして欲しい」
「血? 俺なんかの血液で良いのか?」
こんなおっさんの……。前の世界じゃ健康診断引っ掛かりまくりの日本不健康連盟代表みたいなこの俺の血を……湖に垂らすっていうのか?
すると、ルアは続けて言った。
「……少しで良いんだ。ほんの少しだけ湖に主の血液を垂らして欲しい。そうしたら、後は僕の呼び出しに応じるはずなんだ!」
「そ……そうか」
絶対に俺なんかのおっさんの血よりもルリィやサレサ、シーフェ達の血の方が美味いと思うんだが……。まぁ、ルアがそう言うのなら仕方ないか。
俺は、ポケットから小刀を取り出し、それで自分の指の先を少しだけ切った。そして、ポタポタと流れ落ちる血を湖の中に落としていった。
次第に湖の端っこに血液の赤い色がついていき、やがてそれは波紋の広がるように……湖へと溶け込んでいっていた……。
その様子を見ていたルアは、湖に向かって告げた。
「……聞こえるか! 湖の精霊よ! 僕は、銃の精霊ルア! この者の血液をみれば分かると思うが……ここにいるのは、僕の今の主と……その仲間達だ! どうか、少しの間だけで良いから目覚めて欲しい! 勇者――佐村光矢の名のもとに……!」
まぁ、分かってはいたけど、やっぱりそう言う事か。勇者である俺の血がないといけなかった。ただそれだけの理由だ。
色々納得していると、その時だった――。突如として湖が荒れ始め、次第に湖の真ん中に物凄い水流が巻き起こり、中から……1人の女の精霊が姿を現した。
その女は……とても美しく、長い髪の毛が綺麗な女性で、人間の年齢に当てはめて言うなら……まるで、高校生くらいの……可愛い系の女の子って感じだ。
しかもよく見ると、この精霊の顔……俺が、学生時代に推していたアイドルの子に顔が、そっくりだ。凄いくらい似ている……。
湖の精霊は、姿を現すや否や喋り始めるのだった。
「……お久しぶりです。銃の精霊ルア。……最後に会ったのは、今でいう所の神話の時代の頃……でしたか?」
「うん……。久しぶりだね。ミナ。……皆、紹介するよ! 湖の精霊ミナ。それから、ミナ……こっちが僕の今の……」
と、ルアが仲介となって自己紹介をしている最中に湖の精霊は、告げた。
「……分かっています。そちらの方が、今の杖の勇者様。……そして、その仲間の方々ですね? ルア」
「……うん! そうなんだ! それにしても久しぶりだねぇ。昔と全然変わっていない!」
「ふふふ……それもそうです。我々は、精霊なのですから……もう歳をとる事もないですよ」
ルアとミナは、久しぶりの再会に喜んでいる様子で話をし始めていた――。ルリィ達は、ルア達の話している様子をぽか~んと見ているだけだったが……俺は、湖の精霊ミナの姿をジーっと見ていた。
似ている……。顔も声も……。俺が昔推していたアイドルの……みなにゃん。あの子にそっくりだ。びっくりするくらい……似ている。
と、固まっていると……しばらくしてルアは、ようやく本題に入った。
「……それで、ミナ……今日、君と再会をしたのは、君と話をしたかったっていうだけじゃなくて、もう1つ用事があって来たんだ……」
ルアが、少し言いにくそうに彼女から目を背けてそう言うと、ミナは全てを察した様子で告げた。
「……精霊の涙、ですか?」
「え……?」
感づかれて、気まずそうにするルアにミナは、告げた。
「……別に隠そうとしなくても良いのですよ。貴方が主や仲間とここへ来ると言う事は……そう言う事だろうと、だいたい察しはついています」
「ミナ……」
ルアは、物凄く申し訳なさそうにしている。すると、ミナは続けて言った。
「……そんな顔しないで。ルア、私は別に涙を上げる事は嫌じゃないのよ! お友達である貴方がそれで、喜んでくれるのなら……私は、大いに嬉しいわ! それにね、湖の中から私もこの世界について色々見てきたけど……今の世界を変える事ができるのも……きっと、そこにいる勇者さん。その人の力が必要よ。だから、私は喜んで渡すわ。ここにいる人数分の……精霊の涙を!」
「ミナ! ほっ、本当に良いの!?」
ルアが、そう尋ねるとミナは、にっこり笑って告げた。
「……ええ! 構わないわ! むしろ、使ってちょうだい!」
そう言ってミナが、指さした方向……俺達のすぐ目の前に精霊の涙が入った小瓶らしきものが、姿を現す。俺が、すぐにその小瓶を回収すると、ルアは告げた。
「……ありがとう! ミナ! 君には、本当に感謝しかないよ!」
「うふふ! 良いのよ」
俺もミナにお礼を言う事にした。
「……俺としてもありがとうございます! 強力してくれて……」
すると――。
「良いのよ。……それよりも、ルアの事をよろしくね」
「え……?」
「この子、ずっと待っていたのよ。貴方の事を……」
「待っていたって……」
何を言っているんだろう? この精霊は……。ルアが、俺を……待っていた?
と、思っていると湖の精霊は、告げた。
「……それでは、私はそろそろ戻らねばなりません。貴方達の戦いに勝利と栄光を込めて祈りを捧げます。……ファイトっ! なんだにゃん!」
――え? 今のって……。俺が推していたアイドルみなにゃんが、よく言っていた言葉だ。……どうして? あの精霊が……。いや、変だ……。だって、みなにゃんは……みなにゃんは、俺が高校生くらいの時に……。
「うふふ、ごめんなさいね。この世界では、祈りを捧げる時にあれを言うのが、通例になっていて……まぁ、一種の儀式だと思ってくださいね。……それじゃあ、ルア! それから勇者さんとそのお仲間さん達、これでお別れですね……」
湖の精霊が、姿を消そうとした瞬間、俺は彼女の去り際に告げた――。
「……みっ、みなにゃん!」
唐突な俺の言葉にルリィ達は、更に目を丸くしていた。だが、ルアだけは、彼女達とは少し違う驚き方をしており、湖の精霊も突然、ピタッと湖の底に帰る事をやめた。
もう言ってしまった事だ。俺は、もう我慢せずにそのまま自分の気持ちを伝える事にした。
「……みなにゃんだよな? サンデーフルーティーズの……リンゴ代表……みなにゃん……だよな?」
「……?」
湖の精霊が、ゆっくりとこっちを向いて来た。俺は、そのまま続けた。
「……やっぱりそうだ。俺、アンタの大ファンだったんだ! 学生時代、よくCDも買っていたし、手作りの内輪何かも作ってた! お金なくてライブとかは、行った事ないけど……でも、ずっと大好きだったんだ! 貴方の姿を最初に見た時、もしやと思ったんだ……。そして、最後のあの言葉、みなにゃんがよく使ってた言葉だった……」
「貴方は……」
精霊が喋り始めるよりも先に俺の気持ちが、暴走してしまった――。
「……どうして、みなにゃんがこんな所に? だって、みなにゃんは……俺が高校生くらいの頃に……交通事故で……亡くなっていたはずなのに……。俺、その後の追悼ライブは、何回も見返した。ビデオが擦り切れるまで……メンバーが泣きながら思い出の歌を歌って……ファンの皆も一緒に……悲しかったけど、でも良いライブだった……。皆、みなにゃんの事、大好きだったんだって……思えて……」
それだけを聞くと湖の精霊ミナは、さっきまでと違い、少しだけ微笑んだ様子で告げた。
「……そっか。そんな事あったんだ……。私が、死んじゃった後に……」
「え……?」
次の瞬間、湖の精霊は衝撃的な一言を放った。
「……そうだよ。私は、元々精霊なんかじゃない。私の正体は……ただのアイドル。皆からは、みなにゃんなんて呼ばれてた。……でも、トラックにはねられて……あの日、私の夢だったアイドル人生は、幕を閉じたの。……そして、気が付くと私は、この世界で湖の精霊となっていた……」
「それじゃあ、みなにゃんは……俺と同じ……」
「ううん。少しだけ違うよ。君は、この世界に転移してきた。勇者という役割を与えられてね。でも、私のような人達は、違う。私達は、前の世界で亡くなってしまった異世界人達は、大昔にこの世界に集められて……魂だけの存在として、精霊化させられたんだ。……まぁ、要はね……私達は、”実験台”なんだよ」
「……実験台……? 誰に!?」
「それは……人間に……」
「人間……?」
――To be Continued.




