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銃の精霊ルア編①

 ――王都へ向かう俺=佐村光矢と仲間達は、今日も戦い続けていた。西部を超え、南部へとやって来た俺達だったが、南部に来てからというものの騎士達の警戒も今まで以上に強まっているみたいだった。ルリィの力で空を移動していてもすぐに気づかれるようになったし、ましてや地面を歩いて行っても当然の如くバレてしまう。


 実際、俺達は魔族を2人連れている事もあって騎士からすれば魔力の匂いでの探知も簡単なのだろう。そんなこんなで……俺達は、今日も迫りくる敵を相手に戦いながら南部の突破を目指していた。


 次なる大地――東部。西部の果てからクリストロフ王国王城への最短ルートは、南部を突っ切り、東部の一部の地帯を超えて、北部に。そして、そのまま北部を真っ直ぐ進んで行く事が良いとシーフェに言われた。


 彼女の情報を信じて俺達は、毎日少しずつ移動をしていた。


 本当なら……転移魔法を使える者がいてくれると嬉しいのだが……。残念ながら俺の仲間で、転移の魔法を得意としている人は、1人もいなかった。


 身体強化と龍の姿に変身する魔法を持つルリィと、植物や大自然を操ったり、成長を促したりする魔法や陣形殺撃による瞬間移動を得意とするサレサ。そして、潜伏の魔法を得意としているシーフェに俺の復活の為の魔力をいつでも使っていいように温存してくれている精霊のルア。


 皆、戦闘では頼りになるものの……こういう移動の手段としての力がないせいで、王都への旅は困難を極めていた。


 まぁ、意外なのは……この中で一番莫大な魔力を保持し、人でも魔族でもない精霊であるルアが、転移の魔法を使えないという事だ。


 ルア本人曰く、精霊とは別にあらゆる魔法を使う事ができる存在というわけではないのだそうだ。どちらかというと、精霊の加護を人や魔族に与える役割があり、その加護というのが……ざっくり言うと精霊の持つ莫大な魔力であると言う事だ。


 要は、言い方は悪いが……この世界における精霊は、魔力タンクという所だろう。しかも、ルアの場合は、元々は神具の中に宿っていた勇者専用の精霊だ。そのため、俺以外の奴の魔力補充などは、基本的にできないわけだ。


 なかなか難しい奴なのだ……。


 ――と、そんなわけで俺は、今も南部の騎士隊との戦いに追われていた。潜伏魔法で木陰に隠れているシーフェ。俺と一緒に剣を振って騎士達と戦っているサレサ。……龍の姿となって後方援護射撃をしてくれるルリィ……。


 そして、俺の拳銃の中に入ったルア――。


「……主! 10時の方向から敵!」


 ルアの掛け声を聞いた俺が、すぐさま振り返って射撃を放つ。俺の早撃ちを食らった敵が、一瞬のうちに倒れて、死んでいく。


「次! 8時の方向!」


 更にルアの言ってくれた通りの方向を向いて銃を撃つ。ついでに、自分の視界に収まる範囲の敵も撃ち殺していく……。


「……今度は、3時!」


 ルアは、俺の銃の中に潜り込み、俺の代わりに索敵とスコープの両方を担ってくれていた。これによって、俺の戦いの負担は大きく軽減された。俺が見えている範囲の敵を倒している間にルアが、背中を向けている方にいる敵を見つけて、その正確な位置を伝えつつ、いつでも敵を撃ち殺せるように狙いまで定めてくれるのだ。これによって、複数の敵との戦いの効率は、格段に上がった。


 まず、攻撃を受ける確率も減ったので怪我もしなくなった。


 今の俺達には、回復役がいない。今までは、マリアがその役割を担っていたが、そのマリアが王宮に連れてかれてしまったのだ。つまり、戦いの中で一度の怪我も命となりかねない。そのため、全員……怪我をしないように緊張でピリピリしていた――。




「……12時!」


 ルアの掛け声と共に最後の敵を狙い撃ちにした。しばらくの間続いていたこの戦いもようやく幕を閉じ、俺達はようやく先へ進む事ができる。しかし、物凄い数の敵を相手に戦った事から既に俺達全員の体力は、限界に達していた。


「お前ら……死んでないよな?」


 すると、向こうから戦いを終えてヘトヘトなサレサと、龍の姿から人の姿に戻ったルリィが疲れた様子でこっちにやって来る。


 戦いから逃げていたシーフェも潜伏を解除してこっちへ駆けつける――。


「……何とか、終わりましたわね」


「……今日は、数も多くて結構危なかった……」


「死ぬかと思ったわ……」


 ルリィ達は、それぞれ感想を言ってきた。皆、息を切らして辛そうだ。……彼女達も薄々気づいて来ているのだろう。敵が、少しずつだが……だんだん強くなってきている事に……。


 王都へ近づけば近づくほど……俺達に襲い掛かって来る敵の数も実力も上がってきている。



 俺は、ルリィ達の事を見渡しながら1人考え事にふけっていた。


 ――このままだと、全員……王都に着く前にガス欠を起こす。それこそ、全滅の危険性だってある。その前に……何か手を打たないと……。


 しかし、そう思っていても……簡単にアイディアなんて浮かんではこない。



 ――こういう時にマリアがいてくれれば……アイツの治癒の魔法でもう少しは、楽に戦う事ができたのかもしれない……。


 けど……今はもうアイツは、いない。……と、なれば……何処かの町で傷薬(ポーション)を買うのが一番良い方法か。


 しかし……何処かの町の薬屋で傷薬(ポーション)を買いに行こうにも……ここ最近、しょっちゅう敵に見つかって戦っている俺達だ。おそらく、既に王国側も重要指名手配犯として俺達の事を認知しているに違いない。そうだとすれば……町に出て買いに行くのも……かなり厳しいだろう。


 だとすれば、どうすれば……。


 と、そんな事を考えているとその時だった。


「……あ~るじ!」


 隣からルアの声が聞こえてくる。ふと、振り向くと彼女(じゃなくて彼)は、俺のすぐ傍にちょこんと座って下からの目線で俺の事をジーっと見つめてきていた。


「……お」


 少し驚いた俺に、ルアは告げてきた。


「……顔が怖いよ! 主! どうかしたの? 悩み事……?」


 コイツに聞かれて俺は、少しの間黙っていたが、しかし正直に喋らなければならないと思い、俺はルアに……このままだとまずい事を伝えた。


 すると、ルアは真剣な眼差しで腕を組み何かを考え始める。同じ頃、近くにいたルリィやサレサも俺の意見を聞いて頷いていた。


「……確かに殿方様の言う通り、敵はどんどん強くなってきておりますわね……」


 ルリィは、頭を上下に振りながら納得した様子でそう言った。


「マリアさんが、いて欲しいって気持ちもよく分かる」


 サレサも俺に同情しているみたいな感じで深く頭を下げながらそう言ってくる。2人ともやっぱり俺と同じ考えだった。


 やっぱりこのままだと厳しい事に変わりはないか……。けどどうすれば……。


 と、悩んでいるとその時だった。



「……治癒の力が欲しいのだな? 主は……」


 ルアが、突然喋り出した。


「……そうだが、お前……何か知ってるのか?」


「うむ。……この辺りの湖に僕の昔の知り合いがいるはずなんだ」


「昔の知り合い!?」


 俺は、驚いた。これまでルアの口からそう言った話を一度も聞いて来なかったから……ちゃんと知り合いとかもいるのかと、今少しコイツの事を見直した。


 と、感心している俺の横で今度は、シーフェが口を開いた。


「……湖って、もしかしてアンタ……湖の精霊の事!?」


「そうだよ! 確か、この辺りの湖にいるはずなんだ! 僕の知り合いの精霊さんが!」


 ルアは、そう言うとかなり高い所まで飛んでいき、森の木を超えた位まで高くに上がると、そのまま辺りをキョロキョロと見渡し始めた。


 そんなアイツの事を横目に俺は、ルリィ達に尋ねた。


「……なぁ、その湖の精霊ってのは、どんな奴なんだ?」


「私達魔族にとっても伝説の精霊ですわ。大昔からこの辺りにいるとは、聞いておりましたが……アタシも会った事はありませんわ。でも、話によりますと……湖の精霊の持つ透き通るほどに透明で美しい血液は、人や魔族の体を癒すポーションのような効果があると聞きますわ」


「なんだって! そんなものが……」


 ルリィの解説を聞いた俺は、感心していると今度は、宙を浮いていたルアが俺達に言ってきた。


「……多分、こっち! 湖の精霊がいる場所は……この先のはずだよ!」


 そう言うと、アイツは誰よりも先に自分の差した方角へ向かって行ってしまった。


「あっ、おい……!」


 俺達も後を追いかけるようにアイツの所へ向かう――。



「こっちだ……!」


 次々と方向が変わる中、俺達は湖を目指した。


「おい……! ルア! さっきと逆の方向に行ってないか? 本当にこっちで……」


「良いからついて来てよ! 精霊の言う事だってたまには、素直に聞くもんだよ!」


 ルアは、頬を膨らませながらそう言うと、俺達を導き続けた。



 ――そして、しばらく歩いた果てに俺達は……。


「……着いたよ! 主!」


 ついに、その湖の場所まで辿り着く事ができたのだった……。


「ここが……」


 とても大きく美しい透明な湖だった。前の世界ならきっと、こう言う所にネッシーが出るのだろう。そんなミステリアスな雰囲気も感じる物凄い大きな湖。俺は、そんな大自然の恵みを目の当たりにした。



 ここに――湖の精霊がいる……。果たして、癒しの力を俺達にくれるのか……。少しドキドキする胸を抑えて俺は、湖の近くへ一歩足を踏み入れた……。





 ――To be Continued.



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