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後日譚

 船の上……エンジェル・アイとエッタは、どんどん近づいて来る故郷の姿を見ていた――。クリストロフ王国からの謎の襲撃を受けて安全な運航が、不可能となった巨大旅客船は、一度陸地へ戻る事となった。


 彼らを助けた船長は、そんな船の操縦を1人でやっていた。彼が一体何者なのか? その正体がなんであるかは……まだ分からない。しかし……。


「……また、戻ってきちゃったね……」


 エッタは、少し悲しそうな声でそう呟いた。彼女にとって懐かしい故郷を捨てる覚悟で臨んだエンジェルとの遠い土地での生活も今、終わってしまった。段々近くなってくるクリストロフの土地を見ながら彼女は、近づいて来る現実に……目を背けるように視線を逸らした。


 ――これから、また戦うのだろうか……? アイくんの記憶が、また犠牲になるかもしれない。ようやく、少しずつ思い出を作っていこうとなっていたのに……これでまた失われてしまえば……。


 エッタの気持ちは、暗かった。彼女は、頭を抑えた。……辛い現実の幕開けに耐えきれなくなっているのか……今の彼女は、少し頭が痛んでいた。


 すると――。


「……エッタさん?」


 エンジェルが、心配そうにエッタの名前を呼んでいた。彼女が、振り返って見ると彼は、エッタに微笑みかけながら告げた。


「……エッタさん、俺……記憶、失くしてないと思う……」


「え……?」


 その一言に驚いたエッタは、しばらく呆然としていた……。エンジェルは、告げた。


「……俺、覚えてるよ。エッタさんとの事とか……記憶を失くした時に言ってくれた言葉とか……この船で一緒に旅に出ようって言ってくれた事とか……」


「昨日の……晩御飯は?」


 エッタは、恐る恐る彼に尋ねてみる。すると――。


「焼き芋……それも飛び切り甘いやつ! 美味しかったな……」


 その答えを聞いて、エッタの瞳が潤みだした……。


「……じゃあ、一昨日は……?」


「それも焼き芋……。あの芋は、しっとりしていたね」


「その前は……?」


「それも焼き芋……。ていうか、俺達……出会ってからずっと焼き芋しか食べてないね。たまには、思い出作りの一環として、他のもっと美味しいもの……食べようよ!」


 ――本当だ。……本当に覚えている。しかも、味や食感まで……。


 エッタの心は、一気に晴れ渡った。彼女は隣に立つエンジェルの事を見つめて告げる。


「……私が初めて貴方に言った言葉を覚えていますか?」


 これには、しばらく沈黙が生じた。まさか、覚えていないのだろうか? そう心配したエッタだったが……次の瞬間にとても恥ずかしそうな様子でエンジェルの口が開かれた。


「……恋人って……言ってた……かな?」


「もっと、しっかり言葉にして!」


「……え!? えー……私は、貴方の恋人……です? みたいな……?」


「もっと、大きな声で!」


 エンジェルは、自らの恥ずかしさを振り切り、深呼吸した後に声を張り上げて告げた。


「……私は、貴方の……恋人ですっ!」


 次の瞬間、彼の元へエッタは、飛び込むように抱きつく。涙を流して彼女は、彼体を抱き、そして喜びに包まれながら言った。


「……良かった……。覚えてる。……覚えてるんだね!」


「だっ、だから……そう言ったじゃんか……。こんな恥ずかしいセリフ、思い出すんじゃなかった……」


「えへへ! だ~め! 大事な思い出なんだから! 私達2人の……」


 そうして、2人は海の上……沈む太陽の下で唇を重ね合わせたのだった……。


                     *


 ――クリストロフ王国王城、玉座の間。国王が玉座に座った状態で夜の景色を眺めながらワインを楽しんでいると、そこに転移魔法陣が1つ出現する。その魔法陣の中から1人の若い裸の女が姿を現す。彼女の姿を見た国王は呆れた様子で告げた。


「……お前は、相変わらず服を着る事を嫌うのぉ……クリオパトロ……」


 クリストロフ王国第三皇女クリオパトロ。美しい縊れと、誰しもが二度見してしまうような雪のように白い肌とプロポーションの上に一枚だけ白いロングコートを着た彼女は、国王であり、実の父であるクリストロフと出会うと、とても不満そうな様子で喋り始めた。


「……あらぁ? 別に良いじゃない……。お洋服なんて着てしまったら美しさ半減よ! それよりも……お父様、これはどういう事かしら? エンジェル・アイとかいう子、勇者の力を失くしたって聞いていたのに……復活してしまったわよ! これじゃあ、もう全く楽じゃないわよ! 話と違うわ……お父様! お父様が楽って言うから仕方なく引き受けたのに……」


 すると、国王はほくそ笑みながら自らの顎髭を触りながら告げた。


「……ほう。蘇ったか? 力が……勇者として再び覚醒したか……。ふっ、それで良い」


「は? 全然良くないんだけど……。面倒になっちゃったのよ? 言い訳ないじゃない……」


「まぁ、そう言うな。……とにかく、今後もエンジェルの方は、お前に任せるぞ。パトロ……」


 しかし、国王のその言葉にクリオパトロは、全然納得していない様子だった。彼女は、もう一度国王に交渉を持ちかけようとしたが、しかしその時だった。パトロの後ろから彼女に話しかける男の声がした。


「……おや? どうしたのですか? パトロ……。また、そんなはしたない姿をさらけ出して……」

 そこに姿を現したのは、メガネをかけた王族の衣装を身に纏った男と、もう1人……子犬のようにその男の後ろでカタカタ震えている王族の衣装を間に纏った女の子が1人いた。


 パトロは、彼らの姿を見るや否や少し驚いた様子で告げた。


「……兄上、姉上!」


 すると、メガネをかけた方の男は、メガネをクイっと上に上げてからパトロに告げた。


「これから、夕食のバナナでも食べに行くおつもりでしょうか? パトロ」


 彼の内心、嘲笑ったかのようなその態度にパトロは、少し怒りを覚え、言い返すのだった。


「……馬鹿にしないで! お兄様! これが……私の美しさを表現するもっとも有効な手段なの!」


 だが、男は冷徹な眼差しでパトロを見つめ、告げる。


「……ふっ、何が美しさだ。裸で外を歩くなんて……サルの真似事であると……小さい頃、あれほど教えてやったではないか」


「くっ……!」


 パトロが、彼の事を睨みつけると、男の後ろで隠れるように体を震えさせていた女が、恐怖に怯えた様子で男の体の後ろに隠れてしまった。すると、男は眼鏡をクイっと上げてパトロに告げた。


「止めたまえ。姉上が怖がっているじゃないか」


 その言葉に便乗するように国王も告げた。


「……そうじゃな。まぁ、その辺にしてもらおう。今日、お前達をここに集めたのは、お前達の兄弟喧嘩を見るためではない! もうすぐ始まる戦いと……そして、裏切り者の勇者についてだ。貴様らも知っているであろう……3人の勇者の事を……。奴らは、近々……この私の元へやって来る。お前達には、奴らの始末をお願いしよう! パトロは、引き続きエンジェル・アイを……。そして、第一皇女と第二皇子……お前達には……スターバムとエンジェルの方を任せようと思う!」


「「……了解です。父上」」


 皇子皇女たちは、そう言うと国王は、自分の座っている玉座の裏で未だ眠っているマリアの事を見つめた……。そして、口元をニヤつかせると国王は、告げた。


「……頼んだぞ。クリストロフの四柱よ……」

 というわけで、こんにちは。作者の上野蒼良です! 第十章、これにて完結と言う事で……お疲れ様です。今回の章では、後に控えている戦いに備えた話と言う事で……これまでの章にはない。戦いがメインじゃないストーリーとなっております。所謂、最終決戦前の準備期間と言った所でしょうか。


 本当は、もう少し手短にやるつもりだったのですが……そうもいかなくなってしまいまして……思いのほか書かなくてはならない事が多く……意外と大変でした。これまでの字書き経験上、この先の最後にかけての執筆は、根気と粘り強さがものを言うようになってきますので……ここ最近の執筆は、かなり大変ですね。


 次回の第十一章からどのような話にするのか? 当初想定していたラストとうまく繋げられるか……それもこの先の僕の力量次第になってきます。


 皆さま、拙い部分は多いですが、どうか最後までお付き合いください。


 さて、今回の章にて語る事は、あまりないので……ひとまず、皆さん……明けましておめでとうございます! というのももう遅いですかね? 今年から社会人になるわけなのですが……色々と不安も多く、そもそも自分、仕事なんてできるのか? と日に日にその思いを強めていく一方です。また、最後の学生でいられる年と言う事もあって、今年になってから色々な所に出かけるようにしているのですが……一日の経過は早い。


 それもあって、あっという間に終わってしまいそうです。社会人になったらおそらく今ほど更新なんてできなくなるでしょうし……夢を追うという事もほとんどできなくなりそうです。色々な不安は、ありつつも……それでも、頑張って行かないとなと……思っております。


 今の目標は、社会人になる前にこれだけは、完結させる事ですね。それだけでもしてから社会人になりたいと思っています。


 今回は、以上ですかね。いつも読んでくださっている読者の皆さん、ありがとうございます! 皆様のおかげでここまで書けています! これからもよろしくお願いします!


 さて、次回は……「銃の精霊ルア編」となります! それでは、皆さんサラダバー!

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