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愛のウォーリアー編②

 ――国王の命令により、私=勇者スターバムは、地下牢に連れて行かれそうになっていた。私の周りには数多くの騎士達が私を囲むようにおり、彼らが私の両腕を縄で縛ったまま、厳重に気を配りながら歩いていた。


 そろそろ地下牢へ入ろうとする直前で後ろから聞き覚えのある者の声がした。


「……おーい! お前達!」


 騎士達が、振り返って見るとそこには我が部下の騎士ユダがいた。奴は、私を牢へ送る騎士達に向かって告げてきた。


「……その者は、時間を止めるなどというおかしな魔法を使う。くれぐれも気を付けるのだぞ。良いか? 早急に地下牢へ向かうのだ。あそこならあらゆる魔法を無力化する特別な魔法が施されている。良いな?」


「「……はっ!」」


 声を揃えて返事をする騎士達に私は、舌打ちをしそうになった。


 ――ユダめ……。あの裏切り者……! 私は、奴の事を睨み続けた。奴だけは、許さない……! そんな事を思いながら私は、騎士達に連れられて地下牢へ向かわされた。


 ――しかし、この後はどうする? このまま地下牢へ行ってしまえば……おそらく私は、もう助からない。地下牢に入って無実を証明し続けても国王は、私に聞く耳を持たないだろう。……なんせ、国王には……大事な計画がある。私に割く時間などないはずだ。そうなれば……やはり、牢に入る事は自殺行為。ここで、脱走するのが賢明か? いや、しかし……それをすれば……下手をしたらもう二度と私は、国王からの信頼を勝ち取る事はできない。私の計画は……完全に破綻する。


「雪音……」


 私は、頭の中に1人の女性の姿を思い浮かべた。……その女は、綺麗な長い黒髪を持ち、背丈は高く、モデルのようにすらっとしている。……花が咲く野原を駆け回り、私に微笑んでくれる彼女の事を思い出すと……私の心は、苦しくなる。



 苦しくなったのと同時に……私の脳裏に今度は、その女性が病院のベッドで点滴をうちながら眠り続けている姿が浮かんできてしまう。


 ――私の計画……私のこの世界での全て……。国王を裏切るとは、つまり雪音を裏切る事にもなりかねない……! 本当にそれでも良いのか……? 私は、ここで国王を裏切ってしまって良いのか? そうなれば、もう……。


 だが、逆にここで地下牢に黙って入ってしまっても……きっともう私の計画は、敵わない。私は、残りの一生を永遠にあの地下牢で過ごす事になる。……きっと、そうなってしまう。


 どうすれば……どうすれば良いんだ……。



 ――その時、私の脳裏に浮かんだのは、とある言葉だった。


「……”自分の信じる正義の為にその力を使ってみたらどうなんだ?”」


 佐村ジャンゴの言葉。奴が、私に向かって入った言葉だ。……私の事など何も知らないくせに……生意気な事を言ってくれる。あんなカスみたいな奴が。


 だが……そうだな。あんな奴の言葉でもこの状況においては、大事になってくる言葉かもしれん。ここで、黙って地下牢に送られるよりずっと良い。


「すまないのだが……」


 私は、騎士達に向かって喋りかけた。すると、騎士達は私を睨みつけてくる。


「……なんだ?」


「牢へ入る前にトイレを済ませたい。それくらいは、良いだろう?」


「なに……?」


 騎士の1人が、私を睨みつけてくるが……もう1人の年配の騎士が、その男の肩に手を置いて落ち着くように言うと、その年配の騎士は、私に言った。


「……良いだろう。おい! その者をトイレに連れて行ってやれ」


 そうして、私は騎士達と一緒にトイレへ行く。その際に私は、個室の中に入り、ドアを閉めた。そして、私の周りを騎士達が異常がないか監視している中で私は、小さな声で告げた。


「……幕間(フェルマ)


 私は、騎士達がまだ誰も気付いていないこの隙に……時を止める魔法を発動させた。そして――王城から抜け出す事にした。


 ――急げ! この魔法は、そんなに長くは持たない。持ってもせいぜい……3分が限度! その隙に出来るだけ遠くへ逃げるしかない。誰にも見つからないように……。隠れるしか……。


 そう思いながら私は、王城を抜け出した。


 ――スターバムが、王城を抜け出したのよりも少し前、王城のエカテリーナの部屋を見回りに来た1人の騎士が、エカテリーナに挨拶をしようと彼女の部屋のドアを叩いていた。


 しかし……彼女からの返答はない。それどころか、不気味な位に静かで人気がない。異変を感じた騎士は、エカテリーナの部屋のドアを叩き壊して、中に入る。


 すると、そこに……エカテリーナの姿は何処にもなく、騎士は大慌てで城中の騎士達にも聞えるくらい大きな声で叫んだ。


「姫様が、いない! 姫様の姿が何処にもないぞ!」


 騎士の言った事は、瞬く間に城中の騎士達に知れ渡り、すぐに騎士達はエカテリーナを探すべく王都中を駆け回る事になった。


「探せ! 必ず見つけ出すのだ! クリストロフ国王陛下の為にも! 何としても……エカテリーナ様を見つけ出せ!」


 ――To be Continued.

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