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ラストワン編⑧

「……なっなんだ! あの巨大な龍は!?」


「狼狽えるな! ガルレリウス様をお守りするのが我らの務め……怯まずに進m──」


 次の瞬間、騎士は倒れた。お腹から大量の血を流して──。


「……!? なっ、なぜ! いつの間に……どうしてぇ!」


 私=サレサは、更に別の騎士に向かって魔法剣を突き刺した。


「誰か、助けっ──」


 と、叫ぼうとした瞬間に私の剣がお腹を突き刺し、騎士は声を出せなくなってしまった。


「これで……30……」


 私の後ろには、彼らと同じくお腹を刺されて血を吐きながら死んでいった騎士達の死体が転がっていた。


「……けど、これでもう……時間切れ……」


 次の瞬間、私の体中を覆っていた植物や花などの大自然そのものを纏ったかのような緑色の鎧が、姿を消していく。


 ――陣形殺撃グロウアップ・ファクター……。私の魔力を極限まで魔法剣に込める事で使う事のできる必殺の魔法。と言っても、マクドエルのような必殺技という感じではなく、私の陣形殺撃は時間制限付きの強化アーマーみたいなもの。これを使って騎士達を一気に殲滅していったのだが――。


「やっぱり30が限界……みたい」


 魔力を消耗して、少しばかりの疲れを感じていた私だったが、その時そんな私に向かって斬りかかって来ようとする騎士の姿を目の当たりにした。


「……死ねぇい!」


 しかし、騎士が私を切ろうとした次の瞬間にその男は、何処からか降って来た火の玉を喰らい、焼き殺されてしまった。


 私が、上空を見てみるとそこには、魔龍形態となっていたルリィの姿があった。彼女は、言ってきた。


「……あら? 最初に飛ばし過ぎました? もうガス欠ですの?」


「そんな訳ない。少し休憩していただけ……。すぐに戦えるようになる」


「ふーん。そうですの」


 ルリィは、つまらなさそうに返事を返しながら次々と火の球を騎士達に浴びせて焼き殺していった。そんな彼女に負けずと私も向かってくる騎士達を魔法剣で次々と斬り殺していく。


「……逆に貴方、いつ本気を出すの? その姿じゃ……戦い辛いんじゃない?」


 すると、ルリィは掌に出現させた魔法陣を空へ飛ばし、雷鳴を巻き起こして、騎士達を蹴散らしながら告げてきた。


「……あら? お楽しみは、最後にとっておくものですわよ。……まだまだアタシは、力を温存しておくつもりですわ。まっ、この調子だと本気を出さずとも今回は、何とかなりそうですけれどもね……」


「……負けない。ムー君の膝枕権……絶対に手に入れる!」


「……勝つのは、アタシ――ですわ!」


                     *


 リュカリレオン西部拠点、ガルレリウスの城内部では、酒と女を楽しんでいたガルレリウスの姿があった。外の方が、少し騒がしくなってきたというのに、この余裕っぷりは……と半分呆れ始めていた彼のボディガードの騎士達。


 そろそろこんな事は、やめて戦いに行って貰わないと……と、ボディガードをしていた騎士の1人が、そう思っていたちょうどその頃、部屋に1人の騎士が全速力で走って来てガルレリウスに告げた。


「申し上げます! 敵軍! 巨大な龍が一匹と、エルフの女が1人! 只今、全軍を持って迎え撃っております!」


「龍とエルフ……?」


「おそらくは、魔龍族かと……私も実物を見るのは、初めてなもので……判断できかねますが……。それで、ガルレリウス様……指示の方を……」


 すると、ガルレリウスはお酒を飲みほした後に告げた。


「……敵は、本当にそれだけか?」


「は? それだけと言いますと……?」


「……お前さぁ、ちょっち頭が原始って感じよ~。バカなん? そんな2人だけで僕に挑もうとする奴、いるわけないじゃん。……それに、さっき報告を受けた時は、どういうわけか知らないけど、空を飛んでこっちへやって来る奴らの魔力の気配が、もっとあったはずなんだけど……」


「と、言いますと……」


「だぁからさ! 他にも敵がいるって事よ! 多分、その魔龍とエルフは、囮で……もう1つは、多分こっちに向かってるんじゃないの? それこそ、見当たらないってんなら潜伏の魔法でも使ってるとか――って、言ってんの!」


 そう言い放った次の瞬間、ガルレリウスは騎士の男のお腹を思いっきり蹴り上げた。そして、その男が苦しみのあまり地面をのた打ち回っていると、ガルレリウスは立ち上がり、そしてボディガードをやっていた俺達に言ってきた。


「……はぁ、全く……使えない部下を持つと……指揮官も辛いねぇ。無能な仲間ほどいらない存在ってホント……ないよねぇ。さぁてと、じゃあ……今日は、お開きにしようか! ちょっくら仕事いこーっと! ……あっ、そうだ! ねぇねぇ、例の攫ってきた女の子達の方は、どうなってたっけ?」


 ガルレリウスが、ボディガードの1人にそう話しかけると、男は口を開いた。


「はっ! 現在、北部王都に向かう馬車が準備中。まもなく出発となっております。……それから――」


「あぁ、良いよ。もう分かったから。さて、それじゃあ俺に歯向かう原始的バカを懲らしめにいきますかぁ~」


                     *


 リュカリレオン西部拠点、ガルレリウスの城のすぐ傍までやって来た俺=佐村光矢とエンジェル、シーフェは、城付近の茂みの中に隠れていた。


 俺達は、シーフェの潜伏魔法を使って城のギリギリまで潜り込む事ができ、ようやくこれから捕まったマリア達の救出と、敵の親玉の所に向かおうとしている所であった。


 城を見上げながら俺は、2人に言った。


「この城の何処かにマリアとエッタがいる。……これから城に乗り込む! まずは、全員でマリア達を探し出すんだ! そんで、救出できたらシーフェの潜伏魔法を2人にもかけて、城から脱出。そんで、俺とエンジェルは――最後にガルレリウスを叩く!」


「あぁ……」


 エンジェルが、返事を返してくれた後にシーフェが返事と一緒に続けて俺達に言ってきた。


「分かってるわ! それから、1つだけ注意点だけど……私の潜伏魔法は、確かに普通にしていれば的にバレる事は、まずない。……けど万が一、光を浴びせられたりでもしたらその瞬間に魔法の効果は切れてしまう。だから、2人とも光には気をつけてね!」


「あぁ! 分かってる!」


 俺は、シーフェに返事を返した後に今度は、銃の中にいるルアに話しかけた。


「……お前の方も大丈夫そうか?」


「うん! 僕も自分の魔力の気配を今は、消しているからこのまま城の中に入っても大丈夫だよ! 主、敵の居所とかは、僕の方が伝えるから主は、マリア達の救出に集中して!」


「ありがとうルア!」


 俺達は、一通り突入前の確認を済ませた直後、城の前に広がっていた森の茂みの中で隠れていた俺達の耳に城の辺りを走り回っている騎士達の話し声が聞こえてきた。


「……他にも敵がいないか、辺りを探せ! まだ、この近くにいるかもしれない! 探せ探せぇ!」


 ――もう感づかれたか……。急がないとまずそうだな……。


 危機を感じた俺は、辺りを見渡し、城の近くにいた騎士達の姿が亡くなったのを確認した後、エンジェル達に告げる。


「……よしっ! 突入するぞ!」


 その掛け声の後に俺は、銃口を城の城壁の上に向けて発射。すると、放たれた弾丸が形を変えていき、銃口から城の城壁の上まで伸びるロープのようになり、そのロープの先端にはバリケードのように尖ったものがつけられており、城壁の建物の凸凹した部分にその尖ったものが引っかかると俺は、魔力でできたロープを引っ張って確かめる。そして、登れる事を確認すると、2人に合図を出す。まずは、俺からロープを使って昇る事にした。順調に城壁を昇っていくと、次はエンジェル。――最後にシーフェと続いた。


 全員が城壁を昇り終えた後に俺は、ロープと銃を引っ張り上げて今度は、城壁から降りて行った。


 全員が降りた事を確認すると、俺は小さい声で告げた。


「……よしっ! 行くぞ」


 俺達は、いよいよ城の中に入った。ゆっくりとドアを開けて周りに敵がいないかを確認。足音を立てないように走りながら壁から向こうにいる騎士達の様子を確認する。


「……既に城の中に敵は隠れているかもしれない! 探せ! 全力をもって探すのだ!」


 そうして、騎士達が城のあちこちに散らばっていくのを確認した後に俺は、エンジェルとシーフェに合図をして、進んで行った。


 しばらく城の内部を進みながら時々、部屋を確認してマリア達を探したりした後に俺は、2人に言った。


「……ここから先は、二手に別れよう。シーフェとエンジェル。俺で行く」


 すると、シーフェは心配そうに俺に告げてきた。


「……ジャンゴ? 貴方、1人だけって……」


「大丈夫だ。俺には、ルアがいる。お前らの方こそ気を付けろよ。俺は、向こうへ行く。それじゃあ、後でまた会おう!」


 そうして俺達は、別れる事にした。俺は、1人城中を走り回りながら銃の中にいるルアに小声で愚痴を零して気を紛らわせた。


「……ったく、俺にも魔力が使えたらなぁ。そうしたら、こんな重たい棺桶を背負いながら走ったりしなくて済むってのに」


「仕方ないよ。主の魔力がないって部分は、デメリットでもあり、メリットでもあるんだから」


「メリット……? まぁ、確かにこういう時に魔力がないと敵に感づかれにくいってのは、あるかもしれないが……」


「それだけじゃないよ……。主に魔力がない事で敵を油断させる事もできているんだ。魔力が無くても強い主に油断してね」


「ものは、考えようだな!」


 そんなやりとりをしつつ、俺達は順調に先へ先へと進んで行っていた。――だが、やはり何処にもマリアの姿はなかった。それどころか、エッタもいない。あの2人が、一体何処にいるのかいくら探しても見当たらない。


 そんな時だった――。


「主! 後ろから来るぞ!」


「――!」


 ルアの声がして、俺が後ろを振り返りつつ、急いで隠れようとした次の瞬間だった。


「……はい。ぴっか~ん!」


 ――という言葉と共に、後ろから強力な光が、俺を照らし出す。


「……しまった!」


 と、慌てて逃げようとするも……時既に遅し。俺の体は、強力な光によって照らされてしまい、シーフェがかけてくれていた潜伏の魔法も解けてしまう。


「……潜伏魔法が!」


 すると、1人の男が俺の目の前に現れてきて、にっこりと邪悪な笑みを浮かべて告げてきた。


「……いやぁ、やはりか。やはりそうやって……コソコソ隠れながら僕の城をうろうろしていたのか」


 その男は、とても整った顔立ちで、背は高くて何処か子供臭さと威圧感のようなものを兼ね備えた不気味な存在だった。


「お前は……!?」


 すると、男は告げた。


「……あぁ、そういえば会うのは、初めてだったねぇ。僕、ガルレリウス。……第四皇子だよ。よろしくね? ジャンゴくん」


「お前が……ガルレリウス」


「そっ! マリアとエッタを攫ったのは、この僕。でも、ごめんねぇ。父上が、どうしてもやれっていうから仕方なくなんだ! あんまり僕を憎まないでねぇ~」


「ふざけるな! はいそうですかと言って引き下がれるか! 俺やエンジェルから大切な人を奪ったテメェを……俺は、許さない!」


 俺は、そう言うと早速二丁の拳銃を構えてゆっくりとガルレリウスに近づこうとする。しかし――。


「……あぁ、ダメダメ。ここで、戦うのは俺じゃないから。は~い。出番ですよ~!」


 すると、城のあちこちから騎士達が、一斉に俺の所へ集まって来て、俺の周りを囲い始めた。


「これは……」


「僕の部下達だよ。まっ、せいぜい頑張らないでねぇ~。あんまり頑張られると僕が、出てこなきゃならない事になりそうだし……。僕は、もう父上から頼まれた事は終わらせて、早くパーティーに戻りたいんだ。だからまぁ、むしろ死んでね? ばいばーい!」


 ガルレリウスは、何処かへ消えて行った。残された俺は、騎士達に周りを囲まれてしまい、絶体絶命……というわけでもなかった。


「……はっ! ”死んでね”か……。あぁ、いいぜ。望み通り死んでやるよ……。ただし、何回でもだ!」


 その刹那、俺は棺桶を勢いよく開け放ち、中からマシンガンを取り出す。そして、ハンドルを回してマシンガンを騎士共にぶっ放しまくった。


 騎士達は、残響と共に次々と倒れていき、俺の周りに真っ赤な雨を降らせる。


「おらあぁぁぁぁぁぁぁ!」


 とにかく乱暴にマシンガンをあちらこちらに乱射しまくる俺だったが――しかし、今回は周りにいる騎士達の数も多く、尚且つ四方を塞がれている事もあって、俺は呆気なくすぐに背中を向けていた方から雷の魔法で心臓を射抜かれてしまう――。


 その攻撃により、俺の心臓は停止し……完全に死にかけそうになる。意識が遠退き、体が倒れていく中、俺はギリギリの所で、ガンベルトから銃を取り出し、それを自分の脳天目掛けて引き金を引いた。


「……再開(コンティニュー)


 弾丸が、俺の脳天に当たる。その瞬間に俺の撃った弾丸――ヴェラドリングは、緑色の光となり、俺の体の中に吸収されていった。


 すると、吸収されたヴェラドリングによって俺の体内に復活に必要な魔力が蓄積されていき、次の瞬間には俺の止まっていた心臓に魔力が注ぎ込まれて、心臓の鼓動が再び巻き起こされた――。


 ――”鋼の心臓”



「……始動!」


 次の瞬間、閉じかけていた目を完全に開け放って俺の体は完全に復活を遂げる。そして、再びマシンガンを敵にぶちまけた。


「なっ、なんだ!? 復活したぞ! どうしてだぁぁぁぁぁぁぁ!」


 驚く敵達だったが、関係なく俺は、騎士共全員に対してマシンガンを乱射した。


「……俺を倒したかったら……この俺の事を一億回殺す覚悟で来い! そうじゃない奴は、痛い思いする前に……さっさと撃たれて死にな!」



 ――To be Continued.

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