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運命さえも撃ち抜く弾丸(ヴェラドリング)編⑥

 俺=佐村光矢とエンジェル・アイは、スターバムと戦う。2対1で、しかも3人の実力は、ほとんど変わらないくらいのものだったが──しかし、スターバムを倒す事には至れなかった。


「……時よ途絶えろ! 幕間(フェルマ)!」


 俺の撃った弾丸が、スターバムに届く直前で止まってしまう。更にスターバムは、槍を振り上げていたエンジェルの背後にいつの間にか回っており、気づいた時には、魔法剣を振り上げて、今にも攻撃が炸裂しそうになっている。


 時間停止……俺達が気づいた時には、攻撃されていたり、避けられていたり……かなり厄介だ。しかも、奴の魔法は、それだけではない。


 ――”時間”。そのものを自由に操る事ができるスターバムの魔法……。時を止めたり、巻き戻したり、早送りにしたり……これを複合させられると本当に手に負えない。



 しかも今回は、俺自身にはもう魔力がない。そのせいで、この前のように時間停止を攻略する事ができないときた。むしろ、死んでしまっては……奴に俺の心臓を奪われるチャンスを与える事になりかねない。



 俺は、スターバムに攻撃を仕掛けながら奴の動きを警戒し、一定の距離を保ちながら射撃を続ける。


 近接戦闘に関しては、エンジェルに任せる他ない。単純な戦闘力であれば互角と言えるが……今の俺には、事実上……勇者の力がない。



 俺に魔力がないせいで……。俺が、もっと強ければ……強ければ、ルリィをあんな目に合わせずに済んだというのに……。


 そんな時だった――。


「……そっちに行ったぞ! 佐村光矢!」


 急にエンジェルの声がした。ふと、後ろを振り返るとそこには、既に至近距離まで迫って来ていたスターバムの姿があって……。


「……ボーっとしていると、君のハートまで奪ってしまうよ? 佐村ジャンゴ!」


 スターバムが魔法剣を振り下ろしてきていた。咄嗟に俺は、身をかわしてギリギリの所で攻撃をかわす事に成功する。だが、かわしたすぐ後にスターバムは――。


「時よ加速せよ! 加速(アクセル)!」


 自分自身に魔法をかけて、自分に流れる時間のみを早くする事で、超高速移動をし、すぐにかわした俺の背後に回って攻撃を仕掛けてくる。


「しまった――!?」


 完全に意表を突かれてしまった俺は、体が動き終わってすぐのタイミングで絶望した。


 足は、既に着地し終わって地面に完全に着地しようとしている頃……。だが、このまま地面に着地すればすぐにでもスターバムの攻撃をくらってしまって……。



「ようやく、捕まえたぞ。佐村ジャンゴ! もう……逃がさない!」


「……クソ。ここまでか……」


 しかし、その時だった。突如、背後に1人の男が、乱入してきて……。


「……!? エンジェル?」


 エンジェル・アイが、俺の背後に現れて、スターバムの攻撃の身代わりになろうとしていた。彼は、告げた。


「……お前を見殺しにしたらエッタに怒られそうなんでな!」


 そう言うと、エンジェルはスターバムの魔法剣を自分の持つ金色の槍で受け止めて、しっかりと防御する。


 だが、彼が突然乱入してきた事にスターバムは今度こそ怒り心頭の様子で……。スターバムは、エンジェルに告げた。


「……貴様。何度私の邪魔をする! 私の……崇高なる目的の邪魔を何度!?」


「テメェは、気に入らねぇ……。テメェの事は、覚えていないが……だが、敵である事だけは理解できる。俺は、自分の記憶がそんなに持たない……だから、自分の心に素直になって戦うまでだ! お前を倒すとな!」


 エンジェルは、そう言いながら必死にスターバムの剣を受け止めていた。しかし、割り込んで来たエンジェルに対して完全に怒っていたスターバムは、最早我慢の限界とでもいうかの如く、物凄い勢いでエンジェルへの攻撃を開始する――。


「……ならば! 貴様が……私を敵であると思うのなら……望み通り戦ってやろう! 貴様をこの手で始末してな!」


 スターバムが、エンジェルを剣で押し込み、少し離れた場所に移動する。そして、すぐに剣を槍から離して蹴りを決めてエンジェルとの間に距離を作ると、そこからスターバムによる連続攻撃が始まるのであった――。


 まず、蹴られたエンジェルが、顔を上げた瞬間にスターバムは、時を加速させる魔法を自身に使い、高速移動でエンジェルの目を晦ました。


 更に、その隙に今度は、時の流れを遅くする魔法をエンジェルに使って、彼の動きを少し遅くする。そして、完全にエンジェルが、スターバムの動きについて来れなくなった所で、加速の魔法と時を飛ばす魔法の2つを連続で使用して、エンジェルを混乱させて動けなくしてしまった。


 ――そして、気づくとエンジェルは、スターバムによって全身を切り刻まれ、体のあちこちに傷を負ってしまった。エンジェルは、地面に伏してしまう。



「……今の攻撃、スターバムの奴……時を加速させる魔法と時を飛ばす魔法の他に時を止める魔法まで使って、完全にエンジェルを追い込んでいた」


 エンジェルが、倒れてしまった姿を見ていたエッタが、遠くから駆けつける。彼女は、すぐにエンジェルに治癒の魔法をかけてあげるのだった。


 しかし、とうのエンジェルは……金色の槍も姿を消してしまい、完全に戦闘不能状態。その証拠にエッタが、どれだけ治癒の魔法をかけても彼は、起きなかった。


「野郎……!」


 俺は、スターバムを睨みつけた。すると、攻撃を終えたスターバムが、少し離れた所に立っている。彼は、魔法剣を杖のようにして自分の体を支えながら立っていた。


 スターバムの顔は、とても疲れた表情をしており、汗までかいている。その姿は、まさに尋常じゃない様子だった。


 息をきらした声で、スターバムは俺に告げてきた。


「……ふっ、ふふ……少し本気を出し過ぎたか? いや、だが……これで良い。私の願いの為だ。多少の無理は……承知の上。それで、君を倒せるのなら……佐村ジャンゴ! ようやく、2人きりだな! これで、心置きなく戦う事ができるというものだ!」


 とても苦しそうな顔でスターバムは、そう告げていた。苦しそうなのだが……とても満足そうな顔だ。


 ――コイツ……あれだけ無茶な戦い方をしたのに……どうしてこんな嬉しそうなんだ……。


「気でも狂っているのか?」


 すると、スターバムは、ゼーハーと呼吸を荒くしながら告げた。


「……君のせいで、狂わされてしまったのだよ。佐村ジャンゴ! ふふふ……あのエンジェル・アイという男は、邪魔者でしかなかった。そのくせ、実力はあるものだからてこずったが……。しかし、これでもう邪魔は、ない。後は、君の心臓を奪えば……それで、私の目的は遂行される!」



「どうしてだ? どうして……そこまでして俺の”鋼の心臓”を狙う? この心臓にそこまでの価値が、本当にあるというのか?」


 奴にそう尋ねざるを得なかった。なにせ、ここまでズタボロになりながらも向かってくるのだから……。ただ単に自分の私利私欲の為にこの心臓を狙って来ているとは、俺には思えなくなっていた。


 だが――。


「当たり前だ! その心臓は、不死の力を宿した心臓……。君のような前世でろくな徳も積んでいないようなものが持っても宝の持ち腐れかもしれないが……私は、違う! 私は……絶対にその心臓を手に入れる。そのために……何でも捨ててやるつもりだ! 何を捨ててでも……君のその真っ赤な心臓を私は、手に入れたい!」


「スターバム……?」


 何か、おかしい。今の奴からは……これまでのような余裕を感じない。何かを……隠しているような気がする。


 だが、スターバムが真実を語る事はなかった。奴は、俺に言った。


「……だから、その心臓を私に差し出せぇ! 佐村ジャンゴぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 その瞬間、スターバムは先程と同じように高速移動を始めて、俺の周りをあちこち移動し始める。その目まぐるしい位に素早くて、変則的な動きに……流石の俺も目が回りそうに……と、思ったが。



「……忘れたのか? 俺に、高速移動は通用しない」


 目で見る事をやめ、俺は耳を研ぎ澄ませた。そして、奴が自分の正面へやって来たその瞬間に俺は、目を見開き、そして引き金を引いた。


 途端にスターバムに銃弾が命中し、彼は地面に倒れてしまう。そして、苦しそうに血を流していた自分の心臓を抑えながら彼は、自分の心臓に巻き戻しの魔法をかけて、傷口を塞いだ。



 そして、ゆっくり立ち上がると彼は、告げた。


「……やるなぁ。流石は……私の認めた唯一の男だ! 面白い……! そうでなくちゃなぁ!」


 スターバムは、そう告げると再び武器を構えて、攻撃を仕掛けてくるのであった。




                     *


「……アイくん! アイくん!」


 私=エッタは、彼の名前を呼び続けた。これまで、色々な戦いがあったがこんな事は、なかった。彼が、戦いの中で倒れてしまうなんて……。ずっと、今まで……彼は平気な顔をして帰って来てたのに……今は……。



「お願い! アイくん! 目を覚まして!」


 何度もそう呼びかけるが、一向に彼の目は、開かなかった。……その時、ふと少し昔の事が頭の中に浮かんできた。それは、アイくんが戦って帰って来たある時の事。


 彼は、いつも通りクリストロフ王国の騎士達を怪我1つせずに倒して帰って来た。そんな彼は、いつものように焼き芋を焼いてくれた時、私はお芋を食べながら呟いた。



「……アイくん。強いから……私の助けなんて要らないよね? 私がいるから……こんな戦いを続けているのなら、私……やっぱり家に帰った方が……良いよね?」


 だが、その時のアイくんは、とても心配そうな顔をしていた。


「……帰るって、今帰ったらそれこそ王国に捕まってしまうんだぞ? 何をされるか分からないんだぞ!」


「それでも……アイくんをこれ以上苦しめたくないから……私がいなければ……」


「そんな事はない! 王国は、お前だけじゃなくて……俺の事も狙っているんだ! お前がいなくなったからって戦いが終わるわけじゃ……」


「でも、お荷物でしょう! 私がいると、うまく逃げられないでしょ? 私、戦いの役には立たないし……全然、アイくんのためにできてない。こんなの嫌だよ……」


 そんな時、アイくんは言ってくれた。


「……エッタ。いつか、凄く強い敵が現れるかもしれない。その時、俺の傷を治してくれるのは……お前しかいないんだ。だから……そんな事言わないでくれ。お前は……必要なんだよ。エッタ……」


 ――あの時、そう言われていた事が、脳裏に蘇る。あの時は、確かに役に立ちたいとか考えていた。でも……そもそもこうして、彼が傷を負って帰って来るような状況なんて良くなかった。あの頃の私には、まだそれが分かっていなかったんだ。



「お願い……。目を開けて……アイくん……! 私……アイくんが必要だよ……」


 私の目から涙が零れ落ちた。もう治癒の魔法もかけ終わって、すっかり綺麗な姿に戻ったにも関わらず、彼は起きなかった。一体、何が足りていないのか? まだ、治さなきゃいけない場所があるのだろうか……。そんな不安が収まらない私だったが、その時だった――。



「……んん? エッタ……?」


「アイくん……!?」


 突如、アイくんが目を覚ます。彼は、ゆっくり起き上がって、彼は辺りを見渡した。


「俺は、一体……今まで何を……」


 どうやら、槍が消えた事で戦闘状態が解けて、以前までの記憶を失くしてしまっているみたいだった。そんな様子で彼は、向こうで戦っているエンジェルとジャンゴさんの様子をぼーっと眺めていた。


「良かった……。アイくん……ちゃんと起きてくれて……本当に良かった!」


 私は、何度も彼の体を抱きしめたりしてそう言っていたが、その時だった。突如、彼が何かを思い出したかのように背筋をピンとさせた。


「……アイくん?」


 いきなり、彼は抱きしめていた私の手を離して、立ち上がると告げた。


「……そうだ。俺達は、魔族の里を抜け出して……ここまで来ていて……。俺達は、ずっと王国の人間達から逃げていて……」


「アイくん……? どうしたの?」


 すると、彼は私に告げるのだった。


「……エッタ、下がっていろ。すぐに終わらせてくる」


 そう言うと、アイくんは走り出し……そして、魔法陣を出現させて中から金色の槍を取り出すと、向こうで戦っているスターバムとジャンゴさんの元へ駆けつけて――。



「……クリストロフの騎士め! お前だけは、絶対に許さん!」


 そう言って彼は、ジャンゴさんを思いっきり槍で攻撃し始めた。そのあまりに突然の事に驚いたジャンゴさんは、急いで攻撃をかわし、告げた。



「……エンジェル!? ……なんで? 俺は、お前の敵なんかじゃなくて……」


「問答無用だ! エッタと俺の幸せな時間を奪う人間は……全て俺達の敵だ!」




「……アイくん!」


 私の思いとは、別に彼は……ジャンゴさんを攻撃し続けた。




 ――To be Continued.




「……

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