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運命さえも撃ち抜く弾丸(ヴェラドリング)編④

 ──スターバムの持つ魔法剣に出現した大きな魔法陣。そして、そこから発せられる強力な魔力の波動。この感じは……!?


 アタシは、すぐに魔龍形態を解除して、殿方様のいる地面へ素早く着地。そして、彼の元へやって来たアタシは、すぐさま伝えた。


「殿方様、気をつけて下さいまし! この魔力の感じ……あのスターバムという男、ここで陣形殺撃を使うおつもりですわ!」


「あぁ……分かっている」


 殿方様が真剣にスターバムの事を睨みつけているのを横目にアタシは、自分の体の中に流れる魔力を感じ取り、そこに意識を集中した。


 とにかく、魔法が使えない殿方様を守るためにも……アタシが、防御結界くらいは張っておかないと。今は、先輩がいないから……その役割は、アタシしかいない!


 決意を固めて防御魔法のイメージを膨らませつつ、体の底に魔力を集中させていると、とうとうスターバムは自らの体の内を流れている魔力を魔法陣越しに開放した。彼の回りからとてつもないオーラが、溢れ出ているのが分かる。


 スターバムは、告げた。


「……陣形殺撃。完全消滅世界(ワールド・エンド)


 それは、僅か一瞬の出来事だった。


 ――あれ? アタシは……。


 スターバムが、”陣形殺撃”を発動させた途端、アタシの隣から凄まじい爆発が、巻き起こった。


「……!?」


 慌てて見てみると、アタシの隣に立っていた殿方様とエンジェルの回りが突然、爆発して凄まじい勢いで燃え盛っていくのだった――。


「……殿方様!?」


 しかし、呼んでも殿方様からの返事は、なかった。爆発は、激しさを増していき、その凄まじい炎の中に殿方様達は、完全に飲み込まれてしまっていた。当然、姿は見えない。荒れ狂う炎の中だった。アタシは、咄嗟に爆発の衝撃から身を守るべく防御結界を使う。



「……殿方様」


 すると、そんな時だった。向こうに立っていた大きな木の裏に隠れていたエッタさんが、ひょっこり顔を出して、心配そうに呟きながら見つめている姿が見えた。


「……アイくん!」


 しかし、殿方様達を包み込んだ炎は、物凄いスピードでエッタさんの方へも向かっており、アタシは咄嗟に彼女のいる所まで走って向かった。


 こういう時に足腰に身体強化の魔法を施していたため、アタシは全速力で彼女の元へまでやって来ると、すぐにエッタさんを防御魔法の中へ手を引っ張り避難させた。


 アタシは、こちらへ向かってくる炎から身を守りながら必死に結界の維持を行っていたが、殿方様達を巻き込んだ爆発の威力は、相当なもので……たった一発の爆発程度であるにも関わらず、アタシの防御結界は、既に相当ダメージを受けていた。



「なんてパワーですの! こんな爆発……まさに世界の終わりのようですわ!」


 と、アタシがぼやきながら結界に魔力を込めていると、その時だった。爆風の中から1人の男が、のこのこと歩いて来てアタシ達の前に姿を見せる。


 その男こそ、勇者スターバムだった。彼は、アタシ達の元へやって来ると告げた。


「……これこそが、私の切札。……完全消滅世界(ワールド・エンド)


「アイくん達に何をしたの!?」


 エッタさんが、訴えかけるとスターバムは、自信満々な様子で告げた。


「……彼らには、私の陣形殺撃――完全消滅世界(ワールド・エンド)を食らってもらった」


「……完全消滅世界(ワールド・エンド)?」


 アタシが、彼の言葉をリピートすると、スターバムはとても楽しそうにアタシ達に告げてきた。


「……一言で言うなら、そうだな。……私が、あの2人の”今”の時間を破壊したのさ。まぁ、すなわち……彼らは一度だけ死んでしまったというわけさ」


「なんですの!?」


 アタシの後ろで隠れていたエッタさんの顔が、青ざめたのが分かった。アタシは、必死に自分の表情を保とうとしながらスターバムを睨みつける。すると、彼は続けて言った。


「……んふふ、まぁ……そんな顔をしないでくれたまえ。せっかくの美人が台無しじゃないか。……説明は、最後まで聞くものだよ? 私の完全消滅世界(ワールド・エンド)は、単に相手を殺すのではない。いや、正確には()()()()()()()()()()()()んだよ」


「……? 何が言いたいんですの?」


「……私の陣形殺撃、完全消滅世界(ワールド・エンド)は、私が殺意を向けた者の”今”の時間をぶっ壊す事ができる。時を破壊された者は破壊されている一瞬のうちは、死亡状態となり、その存在も一瞬だけ消滅する。そして、時の運行が元の状態に戻った時、すなわち消滅が終了し、死亡していた時間が無くなり、時間の概念が元に戻ろうとしたその瞬間に爆発が生じる」


「……爆発?」


「……そうだ。それまで、正常に流れていた時間の流れの中にバグが生じるんだ。これによって本来、死んでいたはずの時間が存在していた者達は核爆発並の強力な爆発を起こし、その周辺を焼き尽くす。幸い、この辺りはただの砂漠だから被害はないがな……。しかし、君達もどれだけ持つかな?」


「……貴方は、どうして何もしていなくても平気なんですの?」


 アタシが、そう尋ねるとスターバムは、ニッコリ笑って告げた。


「……そりゃあ、私が万能の肉体に選ばれし勇者だからね。私の万能の肉体は、どんな環境にも一瞬で適応し、免疫を持つ事ができるからね」


「なんて……なんて方……ですわ」


「まぁ、せいぜい頑張ってくれたまえ。しかし、この爆発にいつまで耐えられるかなぁ?」


 そう言い残してスターバムは、爆発の中へと消えてしまった。アタシは、追いかけて色々問い詰めようとしたが……しかしこの爆発を前には、最早何もできない。とにかく、自分達の身くらいは、守らないと!


「アタシだって、殿方様のためなら……何処までも頑張れますわ!」


 そうして、アタシは最後の力を振り絞って爆発から身を守り切った。何とか、防御結界に身体強化の魔法などを重ねがけして耐えきった私が、地面に膝をつく。


 爆発が終わり、辺り一面に砂が広がる中、アタシは上を見上げる。


「殿方様……!」


 気になって声をかけてみるも彼の姿が何処にも見えない。……一体、どこに!? 殿方様……。


 心配になったアタシだったが、そんな時にアタシの元へ姿を現したのは、勇者スターバムだった。彼は言った。


「……ふっ、どうやら少しやり過ぎてしまったようだな。しかし、この程度の爆発で……鋼の心臓は、消滅などしないはず……。私にとっては、それさえあれば……良いだけの話だ」


 スターバムが、殿方様達がいたはずの場所へ歩き始める。彼が、不敵な笑みを浮かべながら優雅な様子で歩いて行く後ろ姿をアタシが睨みつけているとその時だった──。


 1発の弾丸が、スターバム目掛けて発射されたのが分かった。


「これは……!?」


 咄嗟に弾丸の時を止めて、攻撃から身を守るスターバムだったが、彼に対する攻撃は、これで終わりじゃなかった。


 ──弾丸の後、更に今度は上空から金色の槍が振り落とされ、スターバム目掛けて襲いかかる。


「……馬鹿な!? あの爆発に耐えたというのか……? 私の本気を……受け止めたというのか!?」


 焦るスターバムだったが、金色の槍が更に幾つも襲いかかってくる事に彼は、焦った様子だ。すぐに槍の時を次々と止めて攻撃を無力化していくが、しかしそれでも尚、空中から飛んでくる槍の数は増え続けるばかりだった……。


 そのうちスターバムの周り360度全方位から矛先が集中した状態となって、スターバムは辺りを見渡しながら舌打ちをした。


「まさか、本当に生きているとは……しかも鋼の心臓を持つ佐村ジャンゴくんは、ともかくとして……エンジェル・アイ。君まで無事とは……」


 すると、その時だった──。アタシの隣からいつの間にか人の気配がする。その人は、マシンガンを構えて、ガチャッと音を立てながらスターバムを睨みつけていた。彼は告げる。


「……そこまでだ。スターバム」


 彼は、大きなマシンガンを構えた状態でゆっくり歩いてきながら身動きの取れないスターバムに銃口を向けていた。


 スターバムは、その男の姿を見るなり少しだけ嬉しそうに微笑みながら告げた。


「……まさか、生きていただなんて……。佐村……ジャンゴ!」 


 アタシは、生きていた殿方様に告げた。


「……殿方様! 大丈夫なんですか!? お怪我は……!?」


 慌てて全身を見渡し、怪我がない事や本当に無事であるかを確認し、近づこうとするが殿方様は、真っ直ぐ手を伸ばしてきて、告げた。


「……あぁ。エンジェルが、爆発の寸前に魔力結界の核シェルターを作ってくれたおかげでな」


「え……?」


 すると、砂塵の舞う大地の向こうに巨大な魔法による超強力な結界を張っていたエンジェル・アイが、姿を現す。彼は、掌をかざしながらゆっくり歩いて来た。彼は告げた。


「……俺の魔力を忘れたか? 俺は、自分がイメージしたものであれば何でもその場ですぐに作り出す事ができる。お前が魔力を使ってきた瞬間に警戒は、していた。この爆発に耐える事ができるくらいの衝撃に耐えうる結界を作り出し、そして……耐えてみせた」


 その言葉と共に姿を現したエンジェルを見て後ろにいたエッタさんは、嬉しそうに告げた。


「アイくん!」


 そして、そんな彼女とは対照的にエンジェル・アイを憎悪の眼差しで睨みつけていたスターバムは、告げた。


「創造の知恵め……! 余計な事を……!」


 エンジェルは、結界を解除して魔法陣から金色の槍を出現させ、それを手に持ったままスターバムへ告げる。


「……時を操る力を持つお前なら必ず、俺の無限創槍撃(ジュビア・メビウス)の槍を全て停止させてくると思っていた。だが……それが逆に仇となったな! お前は、もうこの無限の槍の雨から逃れる事はできない。お前の回り、東西南北360度四方……一切の死角をなしに俺の無限の槍がお前を捕えた!」


 エンジェルは、手に持った金色の槍をくるくる回し、自分のすぐ傍に更に槍を作り出し始める。両サイドに作り出された金色の槍たちの矛先は、全てスターバムを向いている。エンジェルは、告げた。


「……このまま挟み撃ちだ! いくぞ。佐村光矢!」


「おう……!」


 殿方様も手回し式のマシンガンを構えて、ハンドルを強く握りしめる。2人の攻撃が、同時に炸裂しそうになった時――!



「ふっ……」


 スターバムの口元が、一瞬だけ微笑んだように見えた。……あれは、一体どうして? しかし、アタシが疑問に思うよりも先に……それは、起こった。


 エンジェルと殿方様の攻撃が、同時に炸裂した瞬間――。


「……!?」


「何だと……!?」


 ――アタシ達は、突如起こったその出来事に驚いた。


 これまでそこにいたはずのスターバムの姿が、ふとした瞬間に姿を消している。いや、最早何処にも見えないのだ。


 ――魔力の気配まで消えてる……?


 アタシは、辺りを見渡した。……すると、その男が、突如、アタシの……いや、その隣の殿方様のすぐ真後ろへ移動していた事に気付いた。


「殿方様……!」


 慌ててアタシは、殿方様を守るために動き出した。しかし――スターバムは、止まらない。


「……おやおや? 私の時を操る魔法の事を忘れてしまったのかい? 悲しいなぁ。実に……悲しい。私の事を忘れてしまうだなんて……佐村ジャンゴ。……時を止めるこの魔法は、君に近づくための魔法でも……あるんだよ――!」


 スターバムが、後ろにいる事に殿方様も気づいたのだろう。しかし、もう遅い。スターバムは、魔法剣で彼の事を突き刺そうとしていた。彼の剣が突き刺さろうとしていたその寸前にアタシは――。


「殿方様……!」


 スターバムの攻撃を……アタシは、自らお腹に受けるのだった。アタシのお腹から紅色の血が……溢れ……出ている……。


 少しだけ……周りの景色が、チカチカして見える。……なんだか、一気に意識が……。


「ルリィ……!」


 殿方様が、心配そうにアタシに話しかけてくれる。アタシは、息苦しいけど何とか、自分の無事を彼に伝える……。


「……えぇ、何とか……アタシ達、魔族は……このくらいの攻撃じゃ死んだりなんかしないですわよ……」


 だが、それでも突き刺された箇所が、凄まじいくらい痛む。アタシが、痛みを堪えていると殿方様が、告げた。


「……やめろ! これ以上は、喋るな。とにかく、応急処置を……」


 だが――。


「おいおい? 酷いじゃないか? 僕よりもその女を取るのか? こんなにも君を思っているというの、に……!」


 殿方様に一切の余裕など与えまいとスターバムの攻撃が炸裂してくる。その攻撃から身を守るべく殿方様は、自分のマシンガンの銃身で剣を受け止める。



 ――しかし……!


「……それで、守りきれたと思っているのかね!? 君は……! その程度で止まる私ではないぞ!」


  スターバムの魔法剣が、少しずつ殿方様を追い詰めていく。その攻撃による圧は、どんどん力強さを増していき……そして、とうとう……。



 ――ズバッ!


 爽快感のある音だった。あまりに刹那的な出来事だったし、自分自身がかなりダメージを受けていた事もあって、思った以上に驚けなかった。けど……まさか、こうなるとは思っていなかった。


「……殿方、様……」


 彼のマシンガンが、スターバムの魔法剣による攻撃で……真っ二つに割れてしまったのだ。




 ――To be Continued.

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