表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/119

後日譚

 ――戦いの後、エンジェルは掌をかざして魔法陣を出現させる。すると、彼は手に持っていた金色の槍を魔法陣の中にしまい、戦闘態勢を解いた。


 その後、エンジェルは魔法陣の中から今度は、一冊のノートを取り出し、そのページをパラパラめくり始めた。ノートには、遠目からでも分かる位に文字がびっしり書かれてあって、そこには文字だけでなく絵なんかもあった。



 ――すると、そんな時だった。彼のペラペラめくって見ていたノートのページが一枚ジワジワと消えていき……気が付くとそのページに書かれてあったはずの文字と絵が完全に消滅した。


 エンジェルは、それを確認するとすぐにノートを魔法陣の中にしまい、魔法陣の姿を消した。一連の様子を遠くで見ていた我が主=佐村光矢が彼に尋ねる。


「……今のは?」


 すると、エンジェルは真剣な顔で下を向いた状態で告げた。


「……日記だ。昔、エッタから誕生日に貰ったんだ。……戦うたびに記憶が消えてしまうのなら消えてしまった後でもすぐに思い出せるようにノートに記録しようって。……でも、記録した所で無駄だった。戦いが終わればこのノートに書かれていた事も少しずつ消える。そして、最後には……俺に思い出は1つも残らない。残りは後、4ページ。今回は、たまたまお前たちに関するページが残っていたが……次はどうなるか分からないな。まっ、次が来る前に借りは返してもらうぞ。佐村光矢」


 エンジェルは、そう言うとそのままその場を去った。彼は、家畜小屋の前に置いておいた紙袋を持ち、僕達に別れを告げた。


「……子供達のバリアは、解除してある。お前の事、少し覚えて入れてよかった。もう晩飯を用意しなきゃならないからここで、失礼する。さつまいもは、買ってすぐに焼かないとまずいからな」


 そう言うと、エンジェルは何処かへ行ってしまった。特に別れの挨拶何かも言えずに立ち尽くしていた私達だったが、そんな時に今度は、家畜小屋の向こうから魔族の親達が駆けつけるのだった。


 子供達は、母親や父親の顔を見るなり途端に走り出し、親の体に抱き着いた。親子は、抱き合い……そして涙を流す。それを遠くで見ていた光矢は、そっとその場からいなくなろうとした。


 ――しかし、彼が親子に背中を向けた次の瞬間、1人の母親が去ろうとしていた主に向かって告げてきた。


「……息子と娘を……助けてくれてありがとうございます!」


 宿の女将から貰ったブレスレットの影響で人間としての臭いを無くしている主に、その母親は告げた。彼女は……主が、周りで倒れている騎士達と同じ人間であると言う事に気付いているのか? どうなのか、それは分からなかった。



 しかし、どちらにしても……悪い気は、しない。そんな気分に僕と主は、なった――。


                     *


「……ただいま」


 一つの戦いを終えて宿に帰って来た俺=佐村光矢への最初のおもてなしは、マリアのくしゃみだった。


 それも……相当大きいくしゃみ。


「っく! ……しょん」


 彼女のくしゃみが、こっちにも飛んで来て、驚いたが俺は、ここである事に気が付いた。


「……あっ、あぁ……そう言えば……お前ら、服なかったんだったな……」


「あぁ……じゃないです! 光矢……? どうして、こんなに遅かったのですか? 宿出たのお昼前ですよね? 今まで何処で何を……っく! しょん!」


 宿の中には、仕方なしにタオルを巻いている3人の美女。くしゃみをするマリアの胸が、大きく揺れる姿は、圧巻だった。……うむ。若い頃の俺だったら……この場で自室のベッドへ急直球していたな。


 ……って、そんな事はどうでも良いのだ。


「えーっと……その、実は……今までスターバムの所の騎士達と戦っていてな。エンジェル・アイとも一緒に戦ってたんだ。それで……」


「それで、私達へお洋服を買いに行く事を完全に忘れてしまっていたと?」


 鋭い眼差しでこっちを見てくるマリアに俺は……何も言い返せなかった。


「……あぁ、その……以外と激しい戦いでな……。エンジェルに助けられて良かった……良かった?」


 マリアは、俺の事を睨んでいた。……隣で同じくタオルを巻いていたルリィやサレサも俺の事を睨みつけていた。3人とも……俺が遅くまで帰って来なかった事に思う所は、まぁ当然あるよな。連絡もしなかったんだし……。


 ルリィが、言った。


「……どうします? 先輩。……今回は、ちょっと……殿方様の事、アタシも許せませんわ……」


 サレサも……同じく俺を睨みつけながら言った。


「……私も。ムー君。……私達との約束破った。……嫌い」


 嫌い……か。そう言われると、何処か心にズドンとくるものがある。しかし、まぁ……仕方ないか。今回ばかりは、俺に責任がある。


「……分かった。3人とも……すまなかった。今回は、俺が悪かった。謝っても許されないのは、分かってる。だから、今回は……お前らの言う事、何でも1つ聞いてやる。これで……どうだ?」


 正面に立っているマリアと目が合った。彼女の鋭い眼光が、俺を睨みつける。彼女は、腕を組んで仁王立ちの状態で、言ってきた。


「……なんでも、ですか……。本当になんでも何ですよね?」


「は……はい」


「よろしい……。では光矢、貴方もここで服を脱いでください」


「……は?」


「言ったでしょう? 何でも言う事聞くって。脱いでください。私達の願いは、まず脱ぐところからスタートします」


 脱ぐって……まさか、俺にもお前らと同じ苦しみを味わえとか……そう言う事なのだろうか? 俺は、仕方なしに服を脱いで、パンツ一丁になった。すると、マリアはすかさず俺に鋭いツッコミをしてきた。


「……パンツも脱いでください! 今すぐ!」


「はっ、はい……」


 俺は、パンツを脱ぎ全裸となった。すると、次の瞬間に目の前の3人が、バスタオルを下ろして……。


「……って、おい待て!? まさか、お前らの願いって!? まさか……」


 刹那、素っ裸のマリア達3人が、俺の傍へ来て3人は、体を密着させて妖艶な笑みを浮かべながら告げてくる。


「……ふふふ、殿方様……今夜は、逃がしませんわよ? 抜け殻になるまで……たっぷり、可愛がってあげますわ」


「ムー君。……私、頑張る。だから、一緒に最後まで……ね?」


 ルリィとサレサが、頬を紅くしながらそう言って来て、俺の体に自分の体の隅々を当てて来て、甘ったるい声で誘惑してくる。


 ……しかし、俺は……。


「……待て! 待つんだお前ら……落ち着け。良いか? 俺は、もうかなり歳いってんだ。……そんな俺がだな! お前ら3人を同時に相手するなんて……そっ、それは……ちょっと地獄なんじゃないか? 第一俺、戦いが終わったばかりで、くったくただし……」


「カッコ悪いですよ。光矢……。初めてした時の方が、よっぽど逞しくて素敵でしたよ? あの時みたいに……燃えるような夜を過ごしましょうね!」


「まっ、待て!? 待つんだ! マリア! ダメだ! 俺は、もう体力の限界で……待て! 下半身も傷でボロボロで……今、色々されたら……動かれたら……傷口が……ああああああああああああああ!」


 すると、大ピンチの俺の元に銃から姿を現したルアが告げてきた。


「……にひひ! あっるじ~! にひひぃ、久しぶりに見れるんだね。……人間同士の営み。僕、楽しみでもう眠れないや!」


「お前は、俺の精霊なんだから俺を助けろ!ルアあああああ!」


「え? やだよ。僕の楽しみ、奪おうとしないでくれる?」


 ルアは、俺を助けようとはしなかった……。


 少しして……今度は、ルリィが、俺の上に乗って来て妖艶な笑みを浮かべたまま告げてきた。


「さぁ、殿方様! 続いては、アタシと……うふふ! たっぷりと……愛してあげますわね!」


「ま……待って……待ってくれ。……俺、一回戦で……一回戦でもう……し、死ぬ……」


「あら? それなら、仕方ないですわね。先輩! お願いします」


 ルリィにそう言われると、マリアは俺の息子にのみ……治癒の魔法を施す。すると、途端に回復して大きく……。しかし、無理やりこうなったせいか、痛みが凄いのと……元々加齢が原因でいまいちだったものを無理やり元気にさせられたせいで、息子の疲労感が、半端ない。というか、キツイ。こんなに気持ちよくない夜は、人生で初めてかもしれない……。辛い。



 こうして、俺は……本当に搾りかすになるまで彼女達にこき使われた。


 この日、俺と彼女達は……4人で、燃え尽きるまで激しい一晩を過ごした……。本来、一回戦で燃え尽きてしまう俺は、無理やり一晩中3人に搾り取られた影響で……そこから当分、動けなくなってしまった。



 ちなみに……マリアはこの後、風邪を引いた。俺とマリアは、3日間ほど寝込んでしまった。


                     *


 ――クリストロフ王国西部リュカリレオンの町の酒場にて。今日も私=シーフェは、依頼人クリーフと一緒にバーのカウンターで飲んでいた。


 私が、おかわりのジョッキをマスターから受け取って口につけて飲んでいると、隣で私のまとめてきた資料を読んでいたクリーフが言ってきた。


「……ふむ。こんなものか」


 彼は、そう言うとマスターの出したウイスキーを不満そうに飲むが、私はそんな彼の態度が気に食わなかった。


「……何? 私の情報が気に入らない? それなら、今回の仕事、やっぱり引き受けるのやめようかしら……」


「待て。そう言う事じゃない」


 クリーフは、そう言うと出て行こうとしていた私の手の甲の上に自分の手を置いた。そして、告げた。


「……別に、君に仕事を降りて貰おうなんて思っていないさ。君が、実力の情報屋である事は、私だって知っているつもりだ。ただ……」


 クリーフは、そう言うと、しばらくの間黙り始めた。私は、そんな彼の顔を伺って見た。


「ただ……何よ?」


「君は、私が聞いていた評判よりも……仕事が、遅すぎる。それに……持ってくる情報が毎回、同じようなものばかりだ……」


「……」


 クリーフは、ウイスキーグラスをカウンターテーブルに置いて話を続けた。


「……どうして、君はいつも第三の勇者の事についてばかり詳しい資料を持ってくるんだい? 私が、真に知りたい事は、それではないって事くらい君だって、分かるだろう? 第三の勇者とエンジェル・アイの共通点だとか、そんな情報だけやたらと詳しいものを持ってくるのに……棺桶の事は、まるで大した情報がないじゃないか」


「それは……良いネタが見つからないのよ。情報屋だってね、大変なのよ」


 私は、苦し紛れにそう嘘をついて、ミルクを飲んだ。……そう、嘘だ。大嘘だ。本当は、全部知っている。初めてこの男が、棺桶の写真を見せてきた時から私には、全てが分かっていた。


 この男が、探しているのは間違いなく……ジャンゴ。彼の事だ。しかし、ジャンゴを見つけた後にこの男が、彼に何をしてくるのか……それが、私には分からない。もしも、何か彼に危険が及ぶような事をするのであれば……。



 ――ジャンゴ……。


 いても立ってもいられなくなった私は、その場を立ち去る事にした。私は、飲みかけのミルクを置いて、椅子から立ち上がり、クリーフに告げた。


「……馬鹿らしい。くだらないわ! だいたい、私はプロなのよ! プロが、仕事に本気を出さない理由があると思って? そんなくだらない話をしに来たのなら……私は、もう今回の仕事を降りる事にするわ」


 そう言い残して私は、彼の元を去ろうとした。……しかしその時だった。


 入口の近くに飾ってあった小さなかけ鏡の中から魔法剣を構えたクリーフが、姿を現す。彼は、剣を私の首筋の辺りで構えたままゆっくりと、鏡の中から出て来て、私を睨みつけたまま告げた。


「……毎回毎回、君はそう言って仕事を放棄しようとする。自分では、プロフェッショナルがどうとか語るくせにだ……。言っている事とやっている事が、矛盾しているな。……君は、私に何か隠し事でもあるんじゃないか? もしかしたら、本当は既に……真実に辿り着いているんじゃないのか?」


 クリーフは、鋭い視線で私を見てくる。


「……い、いや……そんなわけ……」


「では、どうしてそんなに震えているのかな?」


「これは……そりゃあ、剣なんて向けられたら反射的に……」


「……これまでいくつも修羅場を潜って来たから分かるが……お前のその震えは、恐怖によるものじゃないな。……何か嘘をついている時の手の震えだな」


「……!?」


 ダメだ。……コイツに私の嘘は通用しない……!?


 クリーフは、言ってきた。


「……正直に言ってくれ。もう時間がないんだ……。答え次第では、この場でお前の首をはねる!」


 ――ごめん。……ジャンゴ。私……!


 そうして……私は、彼に全てを話してしまった……。

 皆さんこんにちは! 作者の上野蒼良です! 第六章、最後まで読んでくださりありがとうございます! 日々、皆さんの応援に励まされております! これからもよろしくお願いします!



 さて、この第六章は、新たな物語のスタートと言う事で、新しいキャラクターが色々出て来たりする重要な章となります! これまでは、主人公が佐村光矢で、彼が敵をバンバン撃って解決していくという話しになっていましたが……ここからは、本編にもちょくちょく出てきている「3人の勇者」というのが、重要になってきます。というより、この作品が異世界ものである所以は、この先のストーリーがあるからこそなんですね。


 これまでは、どちらかというと、異世界ものというよりも……西部劇の活劇チックな話になっていましたが、この後半からは少しずつファンタジーチックになっていきます。


 その最初のスタートとして、今回から魔王が登場しました。……今まで、設定上は存在していた魔王様です。人間の王とは、違った不気味さのある人物ですね。彼については、まぁ後々機会があったら色々書いていきたいと思います。



 続いて、この章からのもう1人の主人公こと、エンジェル・アイ。通称、アイくんです。6章では、第三の勇者であるという事実が、ルアの言葉で判明しましたね。この彼のキャラクターイメージは、特撮好きな読者さんならすぐに分かったかと思いますが、そうです。「仮〇ラ〇ダー〇王」に登場する「桜〇優〇」です。


 まぁ、優〇とは設定が真逆になっていて、どちらかというと「〇バイス」の方が近いんですけどね。ただ、このキャラクターのイメージは、まさにこのキャラで……西部劇チックな今作のイメージにも合うキャラクターに仕上げました。


 ちなみに、彼の金色の槍をスケボー代わりにして空を飛ぶというアイディアは、私の大好きな映画「バッ〇・トゥ・〇・フュー〇ャー」からいただきました。やはり、スピルバーグ監督は天才ですね。


 そして、そんなエンジェルと一緒にいる女の子、エッタですね。彼女のイメージは、献身的な女の子のイメージで、とにかく記憶を失くしてしまうエンジェルの為に頑張る小さな儚い女の子というのをイメージして作りました。マリアと同じく戦いには、直接的に参加しませんがエンジェルを支えてあげる重要キャラとなります。


 ちなみにこの2人は、付き合ってません。普通にただの幼馴染というのが近い関係でしょうか。まぁ、エンジェルがエッタとの記憶を何処まで覚えているかは、知りませんが……。


 ちなみに、このエッタという名前にも元ネタが存在します。「明日〇向かっ〇撃〇!」という映画に出てくるヒロインの名前からとりました。この映画のヒロインを演じた女優さんが、本当に美しい。美しすぎて……今回、採用いたしました。



 以上、6章の小ネタに関してでした。さて、次回に関してなのですが……次回は、光矢が新しい武器を手にして大暴れします。また、3人の勇者達がどういう訳かぶつかり合います。


 そんな感じの話を予定しています。タイトルは……未定です。それでは、またいつか会いましょう! サラダバー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ