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序章

 クリストロフ王国の西部の地下には、100年ほど前からとある地下道が存在していた。――それは、100年前に起きた人間と魔族による大戦争――南北大戦争の時に人間達が作り上げた地下道だった。当時、魔王城の地下牢獄に囚われて捕虜となった人々を救うべく、人界軍の魔法使い達が、物凄い歳月を費やして作り上げたこの道は、未だに残されたままであった。というのも取り壊す事自体が、相当難しく未だに道は残されたままとなっており、地下道の途中の魔族領へ切り替わる場所には、今でも見張りの魔族が立っている。


 とはいえ、見張りと言っても100年前の戦争以降、全く使われる事はなく、老朽化が進み、人間達もその存在を忘れつつあった事もあって、警備は相当緩くなっていた。


「……ん? 誰だ! 貴様ら!」


 そんな地下道を警備していた2人の魔族の元に2人の人間の男と、魔族の少女が姿を現した所から全ては、始まるのであった――。


 1人の男が、腰に装填された拳銃に手を伸ばしながら告げた。


「……おいおい。どうやら、もう魔族の里みたいだぜ? てことは……馬鹿弟子達がいる所までかなり近づいて来たって事かな?」


 すると、それに対してもう1人の騎士甲冑を身に纏った男も告げた。


「……みたいだな。エカテリーナ様もこの先にいらっしゃる」


 そんな2人の男の間には、くんくんと臭いを嗅ぎながら地下道を歩く大きな犬の耳を持った魔族の少女が歩いている。


 彼らのその異様な光景に見張りの魔族は、怒鳴り声をあげる。


「おい! 貴様ら! 聞いているのか! この先は、魔族の里だ! 通行許可のない者は、今すぐ立ち去れ!」


 しかし、男達は全くそのつもりもない様子で、歩き続けていた。ガンマンの格好をした男が、騎士の格好をした男に告げた。


「……となれば、そろそろだな。作戦開始と行こうか……。クリーフくん」


「私をそのような子供扱いするな! 老いぼれのヘクター……!」


「なっ、何ィ!? このナイスガイに向かって……なんたる口の利き方を!」


 2人の男が、見張りの魔族達を睨みつける。一瞬だけ怯んだ門番に対してヘクターとクリーフは、それぞれ戦闘態勢に入り、銃と剣をそれぞれ抜くと、魔族達に襲い掛かった。


 クリーフの魔法剣が、強く輝きだす――! 光に包まれる剣を振り下ろして、彼は敵を一刀両断した。


 その隣では、ヘクターが銃を手に持っている。彼は、手にした銃で魔族を撃つ。――が、ヘクターの銃は、一発も当たらない。


「あ……あら?」


 そのあまりに的外れな銃撃に見張りの魔族は、彼を嘲笑う。


「……なんだ? その攻撃は! その程度で……俺達を突破しようなんぞ……!」


 そして、魔族がヘクターに火球を放とうとした次の瞬間、ヘクターは急にいやらしい笑みを浮かべ始めた。


「……なっ、何がおかしい!?」


 動揺する魔族にヘクターは、告げた。


「な~に、あんさんが思いの外早いもんだからビックリしていただけさ。……けど、これなら」


 そして、そう言うとヘクターは懐に魔法陣を展開し、何か大きなものを引っ張り出して、それを敵に向かって構えた。


 ヘクターは、謎の巨大な武器を肩の上にのせると、狙いを定めて……撃つ準備を始めた。


「そっ、それは!?」


「新開発の……巨大銃。……馬鹿弟子の世界では、これを……ロケットランチャーっていうみたいだ。俺様の新武器の威力をとくと味わいな!」


 ヘクターがトリガーを引いた次の瞬間にロケットランチャーは、発射されて敵に向かって突っ込んで行った。


 しかし、敵もランチャーのあまりの大きさに驚いたのか、急いで逃げようとする――。だが、ランチャーは何処までも敵を追いかけ続け、ついには……逃げる敵にも追いつき、敵のいる場所へと落下すると、そのまま爆発を起こした。


 ヘクターは、敵が無惨に倒れる姿を見ると、不敵に笑って隣で魔法剣をしまっていたクリーフに言った。


「……老いぼれの件だが、後でしっかり話は聞かせてもらうぜ。今は……」


「あぁ、姫様達の元へ急ごう! 頼むぞ……。ココさん!」


 ヘクターにそう言われて、クリーフも改めて前を向いた。そして、戦闘が終わったのと同時に彼らの間に挟まれる位置に立っていた魔族の少女――ココは、くんくんと……再び匂いを嗅ぎだし、そしてクリーフとヘクターに告げた。


「……こっちなの! こっちにお姉ちゃん達がいるの!」


 ヘクター達は、一度目を合わせて走り出した。


「行くぞ……! ここからだ……。レジスタンス各員に告ぐ。作戦開始! 繰り返す……作戦開始!」


 クリーフは、そう言うと見張りが立っていた位置から走り出し、魔族の里の方へと向かって行った。それと同時に彼は、魔法陣を自分の耳元に出現させて、地上にいる誰かにそう告げて、走って行ったのだった――。



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