第7話 牢獄生活
――島流しの日。
私たち罪人は馬車で南にある港まで運ばれた。
業火のように照らす太陽の下、数人の兵士に見守られながら、私たち罪人は港を歩く。地面から出る陽炎がまるで私たちの素足を焼いているように思えた。
「さっさと歩け!」
「……」
足をふらつかせながら、島流し用の船を目指す。
震える足を地面に踏みしめるたび、体の節々が痛み、無駄に大きく漏れる息が乾ききった喉をナイフで刺したかのように私を苦しめる。
そもそも、私には歩く力自体がもう残っていない。
足にも手にも力が入らないのだ。監獄スカンシットにいる間、過酷な労働に加え、拷問を受けながら生きてきた。
今の私の体は前と比べ酷いものだ。
172㎝ある体は42㎏になり、拷問で体の所々は皮膚が裂けて生肉が見え、爪のない両手の何本かの指は切断されて布を巻いている。
そんな私を含めた八人の罪人は中型の木で作られた船に乗せられる。
罪人たちは船に乗ったとたんに倒れこむ。
私も船に乗り込んだ後、陰がある部分に行って横になる。
そして、船は出発する。
しばらくすると、二人の兵士の声が聞こえてきた。
「あの、陰で横たわっている罪人、体が傷だらけで見るに堪えないです。今まで運んできた罪人の中で一番悲惨ですよ。とってもかわいそうですよ」
「罪人だから情けをかける必要なんてないだろ」
「でも……」
どうやら、あの二人の兵士たちは私のことを話しているようだった。
「はぁー……」
大柄の兵士は大きくため息をついて、細い兵士に話を続ける。
「お前なぁー、あの罪人はなぁー。自業自得だし、へっぴり腰のクズ野郎なんだぜ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、話によると大きな罪を犯したくせに、早い段階で事情聴収(拷問)した兵士に命乞いをしたらしいな。根性がないんだよ。俺だったら、命乞いなんてしないけどな。あいつにはプライドととうものがない。同情するだけ無駄だ無駄。ガッハッハッハッハ」
大柄の兵士は馬鹿にしたように笑いだしていた。
何も分からない者……監獄スカンシットがどれほど悍ましい場所か――
一日のご飯の量は茶碗一杯と半分ほど、飲み水なんか一日で150ml。
仕事は地下の土を掘り起こす。
土の硬さによって一人当たりのノルマが百~千キログラムと違う。
当然、一日で筋肉痛になり、手の皮が破れ、腰を痛める。
そして、水分が足らないせいで体が熱く、熱にさいなまれたかのような感覚になる。
仕事が終わり、疲れ切った体を待ち受けているのは鞭打ちと暴力の拷問。
拷問で色々と問われた。
特にしぶとく問われたのは貴族の秘密についてだった。エルダがどうやら私が桐島塾で語った貴族の内部情報をそのまま王子に聞かせたらしい。
内通者がいると疑っていたようだが、私は最後まで情報の提供者の素性を明かさなかった。
痛みと疲労が増える中で毎日、毎日、過酷な牢獄生活を過ごした。
スカンシットの生活を思い出しただけで体が震える。
駄目だ、こんなのを思い出したら。
早く、寝てしまおう。
船がゆっくりと死地へと向かう中、私は息苦しさと共に眠った。
島に到着すると、
「お前ら、さっさと降りろ!!」
兵士の一人が叫ぶ。
「お願いだ。俺を船から降ろさないでくれよ! 頼むからよ」
ミイラのようにやせ細った頭の禿げたおじさんが兵士に必死に頼み込む。
「駄目だ。さっさろ降りろ」
「お願いだよ。もしもさー、俺を町に戻してくれるならさー、お前に大金を渡すからさー」
「駄目だ! さっさと降りろ。お前らこいつを降ろせ!」
「「っは!」」
「放せ、放しやがれ!!」
二人の兵士に両腕を掴まれて、無理矢理に船から降ろされる。
「お前、さっさと立ち上がって、船を降りろ!!」
「……」
私が横になって眠っているところを注意された。周りを見回すと他の囚人はどこにもいなかった。どうやら、私が最後の一人のようだ。
私は、激痛が走る体をゆっくりと動かして立ち上がる。
そして、渡し板に足を踏み入れようとした時――
「!」
――背中を強く蹴り上げられ、波打ち際に落ちてしまう。
「船を出せー!!」
大柄の兵士の声が聞こえると、船が離れていく音が耳に入った。
「大丈夫ですか?」
倒れている私は声のする方に目をやると、金髪のやせ細った男が心配した顔で伺っていた。
囚人らしくない顔をもった人相の良い男性であった。
歳は20代半ばといったところだろう。
「あ…う…う…あ…う…う…う」
心配する彼に大丈夫だよ、と言おうとするが顎を砕かれていて、声を発することができなかった。
顎の痛さを我慢して精一杯に口を動かしたのに、声が出なくて残念だ。
「もしかして、声を出すことができないのかい?」
私は倒れていながらも頭を縦に振る。
「そうか……それは大変だな……」
心配をしてくれる彼を呼ぶ声が耳に入る。
「おーい、フィリップー! 早く来いー!!」
前方にいる六人の罪人の一人が大きく声を出す。
「でも! この人がー!!!」
「そんなやつ、ほっとけー!!! どうせ、野垂れ死ぬんだからー!!!」
フィリップと呼ばれる男は私を心配してくれているようだった。しかし、あの前方で話している男の言う通り、私はほぼ傷だらけで数日が経ったのち野垂れ死にするだろう。だから、だから……