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第3話 この国は亡びます

 何か胸騒ぎがするある日のこと。

 私は桐島塾で子供たちに教育をしていた。

「この国は亡びます」

「……」

 私が一言いうと、子供たちの顔に険しさが見て取れた。

 部屋の空気が張り詰める。

 そんな中、一人の少女が手を挙げていた。

 桐島塾の子たちは手を挙げる一人の少女に注目をする。

「どうしましたか、エルダ?」

 少女が席を立つと、持ち前の長い金髪が軽やかに揺れ、少女のエメラルドに輝く目は私をまっすぐ見る。

「どうして、この国が亡びるのですか? この国の制度が問題ですか?」

「そうです。いくつもの制度を変えなければなりません。その中で何個かの制度は早急に変えないといけません。しかし、制度だけを変えたとしても根本的な解決にはなりません」

「なぜですか、桐島先生?」

「別の制度を作ったとしても別の問題が起きます。歴史を知れば明らかです。根本的な問題を解決しない限りは戦争、飢餓などが止むことは無いでしょう。制度を変えて良くすることも重要ですが、根本的なものに着手して解決しないといけません」

「その根本的な解決方法とは何ですか?」

「みなさんは、私の答えを聞いたとしても満足しないでしょう。ただただ私の答えを聞いて、忘れる人もいるでしょう。また、自分勝手な解釈でよくないこともする人もいるかもしれません。しかし、重要なのでしっかりと聴いてください」

 私は14名の子供たちの顔を見ながら目が合っているかを確認して、席を立っているエルダに答える。

「根本的な解決方法は非常にシンプルで、非常に難しいことです。それは、高いレベルの『愛』をみんなが実践することです」

「桐島先生、その話は何度も聞きました。ほんとにそんなので解決されるのですか?」

「はい、断言します。解決します。ただ、私は根本的と言いました。根本とは言っていません。なので、いろんな問題は起きるでしょう。しかし、高いレベルの愛の実践を誰もがすれば、明日にでも餓えで苦しんでいる人はいなくなるでしょう。戦争で苦しむ人はいなくなるでしょう」

「高いレベルの愛とはどのようなものでしょう?」

「母親が赤ん坊に無条件の愛を与えるようなものです。また、自分がお腹を減っても、お腹がすいている人がそばにいたら食べ物を分けたいと思う愛です。高いレベルの愛は色々とあります」

「桐島先生、質問があります。高いレベルの愛を実践できていないから今の問題が起きているということですよね?」

「そうですね。天を愛し、人を愛し、命を愛するのに今起きている様々な問題を解決できない方がむしろ難しいでしょう」

「なら、どのようにしたら、高いレベルの愛を実践できるのでしょうか?」

「とても良い質問です。人間の本質は愛ですから、みなさんの魂に耳を傾けて、気分良く感じるもの、やりたいと感じることをすればいいです。しかし、勘違いしてほしくないのが、自分自身が感じるものをすべて行えばいいと考えないでください。ほとんどの感情は思考が作り出したまがいもの。しかも、誰かがみなさんに植え付けた思考がほとんどだということを忘れずに。とても良い高いレベルの愛の実践方法は自分の中にある本当の感情に従うこと。しかし、どれが本物の感情かみなさんは分からないと思いますので、何事をするにしても高い愛を示すなら今、どうするだろうと自分に問いかけ行動してください」

「行動したことが間違えてたらどうしたらいいですか?」

「間違ってもいいです。愛の立場に立って行動してください。間違えたら修正したらいいだけですから」

 ……さきほどから嫌な感じがする。

 そう考えていると、

「動くな!!!」

「⁉」

 突然と入り口のドアが勢いよく開いて、十人ほどの鎧を被った兵士たちが入ってくる。

 私は何が起きたのか理解が追いつけず、固まった。

 周りにいる塾生も同様だった。

「い、いきなり、どうかしましたか?」

 すると、後から兵士の間を割って入って、貫禄ある鎧を着た貴士が恐る恐る尋ねた私の元に歩み寄ってくる。

 貴士とは、外国で言う騎士と似ているが意味合いは違う。

 イビル国の貴士は貴族を中心的に守る者をいう。

 その貴士が私を睨んで、大きく一言。

「桐島流朗、お前を国家反逆の罪で捕らえる!!」

「え⁉ ……っぐは!」

 私は貴士に床に叩きつけられて、ロープで腕を縛り上げられた。

「キャー――!!」

 塾生の子供たちは驚いて悲鳴を上げる。

「お、お前! 桐島先生に何しやがる!!」

 塾生の一人、赤髪のレオが私を取りおさえている兵士を蹴りまくる。

「桐島先生を放しやがれーー!!!」

「やめてください、レオ!!」

「邪魔だ!」

「ぐは!」

 助けようとするレオを兵士は右手で大きく払ってぶっ飛ばした。レオは机に頭をぶつけ、気を失った。

「レオーー!! あなたたち、子供になんてことをしているんですか!!!」

「あのクソガキが俺に攻撃をするからだ」

 床に押さえつけられていながらも私は乗馬している貴士に厳しく批判した。

 そんな状況を見ていた塾生たちはさらに大きな悲鳴を上げていた。しかし、何人かの塾生はこの状況に怒っていた。

「よくも、レオを! 桐島先生、今すぐ助けるから」

 こちらに向かって走る塾生。

「やめてください!!」

 私は床に押さえつけられながらも叫んだ。

「大人しくしていてください、皆さん。私は大丈夫ですから」

「ほう、罪人のくせに良い判断をしやがる」

 もしも、貴士を邪魔したら、子供たちは共犯をしたことになり、捕まりかねない。だから、ここは大人しくし従わないといけない。

 しかし、レオだけは……手を出してしまった。

「良い判断はするが、おまえ、噂と違って弱っちいな。警戒してたのが馬鹿みたいだ」

「……」



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