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第10話 光

『あなたは死なない』

 ――声が聞こえた。

 なんだろう、この声は…… 

 周りには誰もいる気配はない。

『わたしの声だ?』

 わたしの声って……誰ですか?

 私のこと?

『わたしはわたしだ! あなたではない』

 そうですか……

『わたしと言うと紛らわしいから光と名乗っておこうか』

 光? 光さんですね。

 私は桐島流朗と申します。

『知っている』

 私の名前を知っているのですか?

『ああ、そうだよ。ずぅーっと前からね』

 そうですか……

 今になって気づいたけど、声を出していないのに会話が成立している……

 一体、どういうことなのだろうか…… 

『まぁ、まぁ、声を出す、出さないは関係ないじゃないか。そんなことより、生きたいか?』

 そんなことより? 

 とても大事な話な気がしますが……

『で、生きたいか?』

 ……生きながらえるなら生きたいですけども……

 無理ですよね?

『いや、大丈夫だ。あなたは生きながらえることができる』

 そうおっしゃいますが光さん、私の体はすでに限界で動くことができません。仮に動けたとしても、この洞窟には食料も水もありません。外に出れば猛獣がいます。

 どうしたとしても死ぬことは確定ですよ!

『いや、生き長らえることはできる。これは断言しよう』

 そ、そうですか……

 あまりにも堂々と言うので何も言えなくなった。

『あなたが望むなら、生きる方法を教えてあげよう』

 本当ですか?

 もしも、生き長らえられるなら教えていただきたいです。

 しかし、どのようにすればこの状況から生きることができますかね?

『あなたがこの先、自分の正体を他の者に明かさなかったら生きることができるだろう』

 は……? 

 拍子抜けしてしまった。

 ちょっと待ってください。

 私は生きる方法をお伺いしたいんですが……

『自分の正体を明かさないことが生きる方法だよ』

 は、はぁ……

 正体を明かさないだけで生き残れるなんて、今の状況を打破できるなんて到底信じられない。

『信じられない?』

 い、いえ何でもありません。

『疑ってるの?』

 すみません……正直に申しますと、そうですね……

『謝らなくて大丈夫、正直でよろしい』

 そうですか、それはよかったです。

『しかし、わたしが言っていることは真実。正体がバレなかったらあなたは生き長らえる』

 分かりました。

 一旦、光さんの言葉を信じます。

『よろしい』

 それで、聞きたいことができまして、もしも、私がこの先、名前を誰かに明かしたらどうなるのでしょうか?

『死ぬだろう』

 え?

『明確に、もう一度言おう。他の者に自分の正体がばれたらいけない。もしも、バレたら死ぬだろう』

 分かりました。

 バラしたらダメだ、といってもこの島にいる限り正体なんてバレない。

 私以外に誰もいないのだから。

『で、さっきの話を踏まえたうえで、生きたいか?』

 はい、生きたいです。

 しかし、どうやってこの島で生きられるんですか?

『ここから消えるから大丈夫だ』

 ……消える?

『ん? どうした?』

 もしかして、私は今、祟りに遭っていますか?

『ん? ああー、祟りって言う人もいれば、奇跡だと言う人もいるねー』

 ……

『心配しなくても、あなたはちゃんと生きられるから』

 本当ですか?

『うん、ほんと、ほんと』

 信じるように努めます……

『うん、そのまま信じなさい。ただ、生きながらえることはできるのだけれど、何点か問題があってねー』

 問題ですか?

 それは、いったい何でしょうか?

『あなたは脳にひどい損傷を受けているから、多くの記憶がなくなっている。次に目覚めた時、あなたの身に付いた知識は断片的になっているだろう』

 なるほど。

 確かに、思い出せないことがあるように思います。

『納得はしてくれたかな?』

 はい、それは仕方がないことだと思います。

 以前のような健康体に戻ることは難しいでしょうから。

『いや、あなたは次に目覚める時に健康体になっている』

 そうですか……

 こんなボロボロな体なのに、次に目覚めたら健康体になっているなんて……とてもじゃないが信じるのは難しい

『……信じなさい。次に目覚めた時、すぐにでも気づくだろう。どうしても健康体になっているのが疑わしいのなら何でもいいからガラスを見て自分自身を見なさい。そしたら、私が言っていることが分かるだろう』

 はい、分かりました。

『まだまだ言うことはたくさんあったのだが、今はよそう。最後に一つだけ、あなたに言う』

 はい。

『次に目覚めた時は桐島流朗と名乗るのではなく、ライブと名乗って生きなさい』

 分かりました。

『栄光ある自分を体験していってらっしゃい』

 もうお別れなのでしょうか?

 また会えますか?

『わたしはいつもあなたのそばにいる』

 しかし、なんだかお別れをする気配がしていて……

『あなたにこれだけは言っておく。あなたがわたしを招くなら、いかなる時でもわたしはすぐに駆け付ける。これだけが私のコミュニケーション方法ではないよ。ありとあらゆる方法でわたしと会話ができるから安心しなさい』

 分かりました。

 光さんがそう言うと、辺り一面がだんだんと暗くなっていき、完全に真っ暗になった。


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