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バイト先は京都六道閻魔庁  作者: 桜居かのん
第二章 愛と欲望の衆合地獄
13/52

3



「自分のあだ名、知ってるんですか?」



「学生達には『冷徹魔王』だの『アンドロイド』とか言われてるようだな」



「アンドロイドは知りませんでした」



私の言葉を特に気にすることも無く、先生は笑いながら私の手に箱を乗せた。



「気になりませんか?そういうの」



思わず聞くと、



「何でだ?そんなもんは勝手に言わせれば良い。

俺は仕事しに行ってるだけで、子供達に授業以外でどう言われようと知ったことじゃないだろう?」



怒ってるのでは無く、心底不思議そうに聞かれて私はがくん、と首を前に倒した。


先生はこういう性格なのだ。

何というか、他の人の視線を全く気にしていない。


こんなに嬉しそうにチョコ食べたり、笑ってるのを学校の皆が見たら驚くだろうなぁ。



「ほら、食ってみろ」



急かされて、綺麗な包み紙を一つ取ると口に入れる。

濃厚なチョコに無花果のピューレが広がって、チョコの上に乗った果物をそのまま味わっているようで思わず声が出た。



「・・・・・・うま」



「だよなぁ」



「約900円が一瞬で消えました」



「そういうみみっちい言い方やめろ。

それだけの手間暇、品質や味に出来上がるには当然の金額なんだぞ」



呆れたような声とお説教に、すみませんと返しながら今度は私が笑ってしまう。



「残りの一つもやるから、コーヒーいれてくれ」



「良いんですか?」



「あぁ。

他に酒入りもあるんだな。今度は酒入りと無しのを買ってきてくれ」



先生は紙袋に入っていたパンフレットを見ている。

随分お気に召したようで明日にでもまた頼まれそうな勢いだ。



「お金を先にくれるんならまた買いに行って良いですよ、近いですし」



「ガキに金の立て替えなんてさせるか」



「先生、ガキとか子供とか連発すると、おじさんって呼びますからね」



私の言葉に先生があからさまに嫌そうな顔をした。



「まだ28歳に向かって礼儀がなってないな」



「すみません、まだピチピチの18歳なもので」



「あー10も違うのか。ならガキなのも仕方ないよな」



「先生はアラサーのおじさんですね」



「コーヒー!!」



怒りだした先生に、はいはいとコーヒーを入れるためキッチンに向かう。

だけど、そんな冷徹魔王が可愛く思えて、こっそり私は笑ってしまった。


まだ先生とはそんなに過ごしていないのに、こんなに気楽に話している自分がとても不思議に思えた。




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