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ナクル村笑日記  作者: 動く点P
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第四話

ある日のこと。


「ちょっと良いか?」


知らない男性が、知らない少女を連れて、ギルドへやってきた。


男性は、同じハンターなのか、旅慣れた格好だった。


少女のほうは、目を引く長く綺麗な金髪に、旅には似合わないドレスを着ていた。


「はい。ご用件をどうぞ。」


ゲラ子さんが、すぐさま丁寧に対応する。


…笑ってる姿のイメージが強いだけで、普通に仕事ができる人なんだよなぁ。


そう改めて実感する。


「ギルドの依頼でな、『荷物』の輸送中だったんだが…野盗に襲われちまって。」


そう言って、懐から紙を取り出し、ゲラ子さんに渡す。


「…被害は?」


ゲラ子さんが確認してるのを見て、今度はオッさんが尋ねる。


「『荷物』自体は無事だが、主に物資だな。人的被害は軽微っちゃ軽微だが…逃げるときに散り散りになっちまった。」


「…確かに、ギルドの正式な依頼です。」


確認が終わったゲラ子さんが、全員に分かるように言ってくれる。


「…マジかよ…。」


なぜかオッさんが嫌そうな反応をする。


「…それで、どうします?続行は厳しいようですし…。」


ゲラ子さんが、男性に尋ねる。


「俺としては、俺が無事で済むなら、後はどうなっても構わんから破棄でも何でも構わんが…。」


「でもそれだと、ただ損しただけじゃないんですか?」


思わず、純粋な疑問が口に出てしまった。


「…お嬢ちゃん、新人かい?まぁ、損は損だが、ある程度はギルドが補償してくれるんだよ。…そうじゃなくても、この仕事は続けようが続けまいが損に違ぇねぇから、命が安全な損の方がマシだろ?」


「おかげで俺たちの命は安全じゃなくなったけどな。」


「えっ!?」


「…悪いね、旦那。俺たちも、自分が大事なんでね。」


「えっ!えっ!?」


「じゃ、そういう事で…あとはよろしくな!」


そう言って、さっさと出て行ってしまった。


…少女を置いて。


「あの…この子は…?」


「今回の『荷物』だよ。」


「えっ!?」


「純エルフの子供…それも女だ。やってくれたな…。」


「あ、あの…『荷物』って…?」


「…この子を指定の場所に連れて行けって話だ。」


「…で、オッさんはどうするつもりでござるか?」


「…まず前提として、荷運びの依頼が中断した場合だ。荷物は近くのギルドが一時保管する。それが今だ。

その後は、依頼元のギルドに返却か、中断した場所から依頼を再発行か、だ。」


「…つまり?」


「俺たちが引き継ぐって事だ。」


「…ま、そうなるでござろうな。」


「ゲラ子、行き先は?」


「…皇国領内の…ガストーネ男爵の所、ですね。」


「…ますます行きたくねぇな。」


「やめとく?」


「死ぬぞ?」


「それは嫌でござるなぁ。」


「だったら…海路がマシか。エレフシナの方から船で向かう。」


「皇国に?正気でござるか?」


「キャロリンに頑張ってもらうさ。」


「…人遣いが荒いねぇ…。いや人じゃないけどさ。」


「マゲはここで警備を頼む。」


「うむ、任された。」


「じゃあ行くぞ!キャロリン、ペーカ!」


「えっ!?私!?私も!?今から!?」







「結局付いて来ちゃった…。」


特に意味がわからないまま、オッさんたちの後に付いて歩く。


…意味がわからないと言えば…。


「…。」


チラッと横を見ると、件の少女が、大人しく歩いている。


そう言えばずっと大人しかったが…本人も状況が分かっているのだろうか?


「今の私と同じ、かもね。」


なんとなくつぶやくと、少女と目が合った。


「あ、えっと…あの…!」


まさか反応があるとは思ってなかったのと、急に訪れた会話のチャンスに、何を話して良いのか分からずにパニックになる。


その様子を見てか、無言のまま、また視線が前に戻ってしまった。


…次までに何か話題を考えとこ。


「…で、ペーカちゃんを連れて来て大丈夫なの?」


聞き損ねた疑問を、キャロリン先輩が聞いてくれた。


「大丈夫も何も、こっちの方がまだマシだぞ。」


「どうして?」


「マゲの負担も考えてやれ…あぁ、説明しなきゃ駄目か。」


そこでようやく、オッさんが何も説明してなかった事に気づいたようだ。


「すまんすまん、マゲには通じてたからつい、な。…さて、どっから説明したもんかね…。」


オッさんが考え終わるまで、無言で歩き続ける。


「…まず、あの野郎が来た所からか。」


「さっきの…ハンターの人ですか?」


「そう。ハンターだ。そいつが『野盗に襲われた』っつってたな?」


「そうですね。」


「ペーカ、もしお前が今から誰かを襲って今日の飯を用意しなくちゃいけないとしたら、どんなヤツを狙う?」


「えぇ…嫌ですけど…でもやらなきゃご飯がないなら…やっぱ鈍臭そうな人…とか?」


「そうだな。少なくとも、俺たちみたいな、武装した集団は狙わないよな?」


「そうですね…でも、じゃあなんで?」


「襲われて、しかも『仲間が散り散りに逃げた』っつってたよな?つまり、武装集団相手に勝ってるって事だな?」


「そうですね?」


「それだけの戦力を集めて狙ってきたって事は、そもそも『荷物』と輸送ルートを知ってたって事だ。そうでもなけりゃ、中身や真偽が不確定の犯罪なんか、付き合ってられねぇからな。」


「…詳しいですね。」


「まぁな。…大方、販売元が回収する気か…情報を別に売ったか、だな。」


「そんな事するんですか…!?」


「法の無い商売だし…信用もクソも無くても、そもそも売ってる場所がそこしか無いなら、客はいくらでも来るからな。」


「えぇ…。」


そういうものなのかな…。


「まぁそれは終わった話だから今はいい。問題はその後だ。」


「後?」


「アイツらはハンターだったな?」


「はい。」


「んで、このクソ田舎には、ギルドがウチにしか無いな?」


「はい…あっ。」


「もう居場所がバレてるも同然だな?」


「私たちの命が危ないって言ってたのって…!」


「そういうこった。そんだけ準備してて、肝心の『荷物』には逃げられて…散り散りに逃げたとは言え、行き先はどうせギルドだ。ここに来るまで、そう時間はかからん。」


「ヤバくないですか…!?」


「ヤベぇよ?だから急いで逃げてんだよ?」


「マゲさんは大丈夫なんですか…?」


「大丈夫だろ。盗賊は利益にならん犯罪はせんだろ。多分。」


「えぇ…本当に大丈夫なんですか…?」


「さぁな。それより、自分の心配でもしてろ。」


そう言えば、今の私もヤバい状況だった。


「あと、一応その子の心配もな。…大人しく付いて来てくれてるが…どっか行かないように、手でも繋いどいてくれ。」


「えっ、私が?」


「俺とキャロリンよりマシだろ?」


「オッさんはともかく、アタシは問題無いでしょ!」


「いやお前の手、鱗で硬いじゃん。」


「…あ、そっかぁ。」


「そうじゃなくても、いざと言うときに動けないと困るからな。」


「えと…じゃあ、改めて…。」


少女に手を差し出すが、当然のごとく無反応だった。


「…ですよねー。」


「子供相手なんだから、そんなんじゃ駄目駄目。」


キャロリン先輩がそう言うと、少女の前に向き合って屈んだ。


「こんにちは!」


「…。」


しかし無反応。


「アタシはキャロリン!キミは?」


「…。」


「…もしかして…言語が違うのか?」


「そうなの?」


「敵視してる訳じゃなさそうだしな…エルフ独自の言語とかだったりするのか?」


「…だったら、ちょっと心当たりがあるわ。」


「マジか。さすがキャロリン。」


キャロリン先輩が、聞いた事も無い言語を話しだすと、少女が驚き、何かを喋る。


「通じた?」


「うん。一応話せるね。」


「よく知ってたな…とりあえず、現状を説明してやってくれ。」


「おっけー。」


それから、またわからない言語でやりとりをすると、少女が手を握ってきた。


「おぉ!」


ためらいもなく来たので、ちょっと驚く。


「…翻訳も必要なら、キャロリンに任せた方が良かったか?」


「だいじょうぶ。はなせる。」


少女が返事をしてくれた事に、また驚く。


「…凄いな。今の瞬間で、翻訳したのか?」


「ことばはずっときいてた。」


「流石、魔法に長けた種族ってところか。記憶力も頭の回転も、俺らとは訳が違うな…。」


「凄いですね…。」


凄すぎて、そんな感想しか出てこない。


「まぁそれでも、今はアタシたちと同じ女の子なんだから。仲良くしましょ?」


「そうですね!よろしくね!えっと…。」


「フィーネ。」


「そっか、フィーネちゃん!私はペーカ!」


「ペーカ。」


「そう!よろしく!」


「さて、そろそろ行くか。このまま歩けば、夜には着くだろ。」







夜。


予定通り、エレフシナの漁村に到着する。


オッさんが先導し、一軒の民家を訪ねる。


「こんな時間に…どなたですか?」


渋々といった様子で、お爺さんが出て来る。


「すまんな、爺さん。オッドだ。」


「あぁ…あんたか。…で?」


「船を借りたい。」


「漁船をか?」


「いや、小舟でいい。」


「なら、一つくらい構わんが…。」


「あと、食料も分けてもらえないだろうか?」


「…ウチも、裕福じゃあないんだがなぁ…。」


「申し訳ない。だが、急ぎでな…頼れるのが爺さんしかいないんだ。」


「…だったら、今日は泊まってけ。」


「えっ、しかし…。」


「あんただけ急いでも、お連れさんが付いてこれんだろう?」


「…申し訳ないな。そこまで気が回らなかった。では、一晩お世話になります。」


「好きにしろ。…一人だと、部屋が余って仕方ない。」


「ありがとうございます。」


お爺さんの後を追って、ぞろぞろと家にお邪魔する。


…ご飯が無いどころか、徹夜になるところだったのか。


晩ごはんをご馳走になりながら、改めてお爺さんに感謝した。



ギャグどこ…?ここ…?


書きたい…もとい自分が読みたい話を書いたらこうなりました。


友人には「ギャグ(残酷な描写あり)が一番のギャグ」だと言われました。

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