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奴隷、ガチギレしてちょっとした本気を出す

 悪魔は右手を横に掲げる。そこから紫と黒の合わさった色の魔力が出て来て形を変える。


 出来上がったのはトライデントのような槍だった。


「槍が主武器(メインウェポン)か」


 通りで突く攻撃が多い訳だ。


 私は魔剣を悪魔に向ける。左手を掲げ魔法を形成する。


 地獄の炎に神界で得た再生魔法を組み合わせる。


 正反対の性質を持つ魔法を混じり合わせる事は困難だが、やれない事は無い。


 伊達に地獄と神界を長年生きていた訳じゃないのだ。


「くらえ」


 小さな炎を玉を放つが、悪魔はそれを全て躱し、炎の玉は地面に衝突し、爆音と共に爆ぜ、大地を破壊し木々を燃やす。


 刹那、大地は元に戻り木々は再生する。


 やはり再生魔法を混ぜておくのは正解だったな。悪魔にも良く効くし。当たってないけど。


「くらえ!」


 悪魔が高速で突きの攻撃を出して来るが、喉を正確に狙って来ているので避ける事自体は簡単だった。


 魔剣に炎を纏わせて振るう。


 槍の突き出しと合わされ、金属音と火花とは呼べない炎を周囲に撒き散らす。


 左手を悪魔に向けて、氷の魔法を放つ。


「コキュートスってしているか?」


「ッ!」


 悪魔は一瞬で私からかなりの距離を取る。


 冥界の川であるコキュートスは悪魔をも簡単に凍らせる事の出来る程温度が低い。


 地獄でも周囲が凍るくらいにはとても冷たい川だ。


 そこまでとはいかないが、それに近い感じの魔法を開発した者がいる。


 その魔法を悪魔に向かって氷のような透き通る水色のレーザーを放つ。


 悪魔は体を捻り、無理矢理方向転換してそのレーザーを躱す。


 空気中の水分が急速に固まり、霧を形成する。


 魔法をキャンセルして悪魔に接近する為に飛ぶ。


 霧の中で視界が悪くても、周囲の魔力を感知すれば地形などは普通に把握出来るし、魔力感知の力を伸ばせば色だって脳内に流れる。


 そして、周囲よりも膨大な魔力を持っている悪魔を見つけ出す事は簡単だ。


 霧を剣で薙ぎ払い、悪魔に向かって魔剣を振り下ろす。


 赤黒い剣筋を残しながら悪魔に振り下ろした攻撃は、槍を横に倒して防がれていた。


 力押しも出来ず、私は後ろに弾かれる。


「人間にしてはなかなかに強いな」


 私にとっての最大の褒め言葉、『人間』を聞きながら決定打に欠ける事を再認識する。


 魔剣のせいで長時間の戦いは不可。かと言って神界の武器を使って戦う事も出来ない。


 神器であいつを倒したら地獄に送る事が出来ず、そのまま昇天させてしまう。


 だから魔剣で戦っている。


「はぁ。お前が禁忌を犯さなければ」


 そもそも私があいつに触れなければさっさと倒せていた。後悔だ。


「禁忌禁忌と。何が禁忌なのだ」


「さっきの陣だよ。あれは天地の禁忌、そして禁忌を犯した者は最大の地獄を味わう。例え、地獄の魔王様だとしても、神界の至高神様方だろうと、禁忌を犯せばそれ相応の罪がある。お前はそれを使おうとした、それだけでも重罪だ」


「ほぅ。禁忌だと」


「ああ。それから、その魔法を何処で教わった?」


「言う訳ないだろ。そもそも我は地獄に行けぬ。人間にしては博識のようだが、だからどうしたと言うのだ。この魔法があれば魔王にだって勝てる! 我はいずれ地獄に舞い戻り魔王になる! そしたら、お前を悪魔にしてこき使ってやるよ」


「⋯⋯お前は、魔王様に刃を向けると言うのか」


「ああ! それが我に任せられた使命!」


「ああ、そうかい」


 私はガチギレした。多分、こいつに禁忌を教えたのは私の同僚──閻魔──の一人だ。


 そして、そいつは魔王様の座を狙っている。


 そんなに仕事がしたいのか知らないが、魔王様に、私の大大恩師に対して刃を向けるこいつに、私はキレた。


 愚かで、勝てる筈もない魔王様に刃を向けるという、無知な悪魔にキレた。


「魔王様は閻魔のまとめ役。それだけ忙しいお方だ。年中無休で椅子に座って仕事をするお方だ。お前のような雑魚に構っている暇はないんだよ」


「雑魚、だと! 魂魄破壊の陣!」


反魔法アンチマジック、魂魄破壊」


 真逆の魔法陣を使って打ち消す。


 これで二度目の禁忌に足を入れた悪魔。さらに、こいつは魔王様に刃を向けると言う、魔界出身のくせに反逆罪を犯した。ま、反逆罪には成らないだろうが、私の中ではそうだ。


「魔剣で殺せれば問題ないよね」


 私は領域を展開する。


 閻魔や上位神に上がった時に魂に刻まれる特殊能力。


 それが『領域能力』。私は二種類の領域を持っている。


「神界領域展開、神の礎となれ。虚空の領域アトス・ディメンション!」


 神界で上位神に上がる時、私は至高神アザトース様に領域を与えられた。


 つまり、私はアザトース様の直属の部下となり、虚空領域の名前もアザトース様の名前から付けている。


(ここは、何処だ)


 悪魔の視界は何もないのだろう。


 アトス・ディメンション内は虚無空間。


 使用者である私と私が認めた者以外は虚無に苛まれる。


 長時間この空間に居ると気が狂い、徐々に自分が何か分からなくなる。


 ま、悪魔には関係ないけどね。


 ただ、この空間内なら、私の神界での力が人間界ここでも完璧に使える。


 完璧、と言っても封印して力が弱っている中での全力だが。


「やっぱ悪魔にはこっちだよな」


 神聖魔法、悪魔に対しては最高の力と言えよう。


「何処だ! 何処にいる」


「悪魔よ。禁忌を犯したその罪、魔王様を侮辱したその罪、悔い改めよ。さすれば、最下層の地獄を数万年程度で解放されるかもしれんぞ」


「そこか!」


 この空間内で悪魔の使う魔法は作用されない。


 ま、地獄の熟練の悪魔なら、この程度の空間普通にぶち壊して来るだろうがな。


「神の怒りに沈め、審判の雷(ジャッジメント)!」


 左手を掲げ、振り下ろす。


 それに合わせるように空に巨大な魔法陣が出現し、中心に黄色のエネルギーが集中する。


 そして、悪魔に向かって一直線にエネルギーが稲妻と成って落ちる。


 轟音、その雷に悪魔は包み込まれる。


「死んでくれるなよ」


「うがああああああああああ!」


 肉体が浄化されながら電気に抉られる。


 雷が収まると、満身創痍の悪魔が空間の中に居た。


「な、なんだ。この力。て、天使か?」


「どうだろうね。何も見えず、何も分からず、何もかもが意味不明なまま、地獄の行け!」


 神界の領域や魔法を使っているせいで、震えまくっている魔剣を悪魔に突き刺した。


 悪魔の体が徐々に塵に成っていく。


「全く。ここまで力を使う事になろうとわ。もっとやりようはあったな。反省反省」


 地獄の武器庫に繋ぎ、再び魔剣を収納する。


 手を出したら、私の手がなかった。


「全く」


 すぐに再生出来る。


 理由は簡単、武器庫に私が使役していた獣が入って、私の手を甘噛みしてのだろう。


 今の私に対して甘噛みだけでも、簡単に体が千切られる。


 空間を消し、森を正し、時間停止を解除する。


 私は既に主人の背後におり、そして目を頑張って輝かせて叫ぶ。


「流石です主人! 悪魔をあんなあっさり!」


「え、あ? えと、へ?」


「流石です」


「いや。え? てか、いつの間に? 生きてた⋯⋯無傷?」


「はい! それより盗賊達を縛りましょう。その後、奥にいる人達のもとに行きましょう」


 いや〜珍しく長文早口で喋ってしまった。

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