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奴隷、主人と盗賊退治に向かう

 主人が立ち直り、食事をしている時、後ろから主人を呼ぶ人が現れた。


「や、海也」


「お? 茉莉花じゃねえか」


 家系名で呼ぶなんて失礼極まりない奴だな。


 家系名はその名の通り、家系を表す名前であり、それを個として使う場合、相手に対して『家族無し』と言っているのと同じだ。


「あ、ミア紹介するな。こいつは石上茉莉花だ」


 主人もだった!


 イシガミ・マリカ⋯⋯家系名で呼び合う国でもあるのだろうか。


 主人の周囲にはこう言う名前構成の人が多いな。


「海也あんた⋯⋯」


「い、いや! これには訳が」


 魔法士メイジなのか、イシガミさんの格好はローブで、魔力循環の良い装備だ。武器は杖だった。


「霧矢と今度大きめの魔物を討伐しに行くんだよね。あんたも協力してくれない?」


「いや、でもお前らBランクだろ?」


「パーティ組めばルール的には問題ないよ。で、どう? 勿論、あんたの⋯⋯その子も連れて良いからさ」


「なんか勘違いしてないか? この子は戦闘のためになぁ」


「分かってる分かってる。海也も男の子だもんね〜」


「前含めて俺の方が年上なんですけど!」


「残念ここでは私の方が年上だから」


 仲がいい事だ。主人は独りかと思ったが、笑い合える友が居るのなら安心だ。


 ただ、その友は慎重に選ばないといけない。簡単に信じていいものか。


「分かった」


「そう来なくっちゃ。じゃ、三日後だから。絶対に空けておいてね」


「はいよ。ミア、勝手に決めてごめんな」


「いえ」


 イシガミさんが出て行った後にそう主人に言われた。


 イシガミさんはこれを言うためにわざわざここまで足を運んだのだろうか。


 どうしてここだと分かったのか。いや、主人は有名人だし、人に聞いたら分かるのか。


 今晩、私が宿の店主に布団を借りて、地面に敷いて寝ているフリをしていると、こちらの様子を伺ってから外に出る主人。


 私に黙って何処かに行っている。


 亜空間に装備はしまっているので安心だが、少し見るべきだろう。


 私は掌を上に向けて、創造魔法生物を形成する。


 禍々しいコウモリのような羽を持った眼球が出て来る。


 この眼球で見た物は瞬時に脳内に入り、見る事が出来る。


「行け」


 こいつに思考能力はない。私が意のままに操る事が出来る。


 窓を開けて外に放ち、主人を追い掛ける。


 主人は人通りの少ない路地へと入って行き、明るい場所に出た。


 そこに広がっていた光景は⋯⋯私はそっと眼球を消した。


 ま、あれだ。


「主人も男の子だね」


 ◇


 今日は冒険者ギルドで噂が立っていた盗賊退治に出向く事にした。


 なんでも商人が襲われ、護衛数名の命と引き換えに、生き残った護衛を引き連れて冒険者ギルドに訪れたようだ。


 その後、盗賊と言う犯罪者なので、この国の兵士にも伝えたそうだ。


 場所を調べた後に兵士達は編成して攻めるようだが、その前に動く事が出来るのは冒険者だ。


 めんどくさい書類などがないからね。冒険者は自由なのだ。


「急ごう。今でも被害にあっている人は居るかもしれない」


 私も賛成だ。


 聞いたのは『商人』と言う内容で、何を商品としているか分からなかったからだ。


 早めに調べておきたい。


「少しスピードをいつもよりも上げるよ! ハイスピード・ザ・マジック」


 私にまで強化魔法を掛けられても困るので、抵抗レジストする事にした。


 主人のスピードに合わせて走る。多分、普通の人よりも断然速い。


(急がないと。商人は徒歩だった。もうかなりの時間が経っている。また違う被害が出ている可能性もある。もう、絶対にやらせないぞ!)


 この程度のスピードが全力なのだろうか?


「主人もう少し速く走れますか?」


「これが最高速が出せる強化魔法なんだよ。俺が使える魔法は幅広くても、強力なのは少ないからな」


「そうですか」


(敏捷値2000を魔法で1.5倍にしているけど⋯⋯もっと速く走りたい。だけど、ミアに対して使える魔法やスキルがない。ソロだった弊害がここに来たか)


 ふむ、ならばここは私の出番と言う訳だな。


 スピードを上げる魔法、強化魔法なんて使うのはいつぶりだろうか。


「主人、強化魔法を使います。許可を」


「分かった!」


 創造の時のようなミスはしない。


 手加減して、人間の体でも耐えられる最大速度で、それでいて主人は人よりも頑丈だからもう少し速くていい。


「発動させます」


 魔法を使う。


 主人と私に青色の光が一瞬纏われ、速度が急激に増す。


 砂埃が激しく起こりながらも、私達は正面に向かって駆けた。


 ◆


「そろそろ潮時だな」


「ですねボス。前に逃した商人も今頃近くの国に辿り着いて、兵士でも呼んでいる頃でしょう」


「兵士は動くのに最低一日は掛かる。その前に冒険者が来るだろうな。その前にトンズラするぞ。てめぇら支度しろ」


『へい!』


 盗賊のボスは部下総勢六名に命令する。


 商人を何回も襲い、本来は二十名ほど居たが、護衛の兵士の努力の末、六名まで減っていた。


「あの、あいつらはどうします?」


「俺のお気に入りとお前ら一人づつお気に入りを連れて行け、他は殺せ」


「売り払う事は?」


「ただの邪魔になるお荷物だ。無駄な物は要らん。最小限に抑えろ」


「へい! 連れて行けるだけで最高ですわ」


 盗賊下っ端は根城の奥に進み、その中に入っている人物達を見る。


 そこには耳の長い人達が八名居た。


「お気に入り被りがあるからなぁ。この中から殺すのは四名か。結構減るな⋯⋯勿体ない。ボスのお気に入りはっと」


 最後にもう一人、ボスと言われている自分のお気に入りは違う牢屋に入っていた。


「へへ。お前らもようやく日の目を見られるぜ。ま、こっからもお前らにとっては地獄かもしれんがな。けけ」


 一人の耳の長い女性はそのゲスの笑みを浮かべた盗賊を睨む。


(バレないよな?)


 牢屋の鍵を取り出した瞬間、一人の盗賊の声が響き渡った。


「敵襲だ! 馬鹿げたスピードで向かって来ている! 人数は二人!」


「ち、仕事か」


 ◆


「うわあああああ! 止まんねえええええ!」


 加減ミスったあああああああ!


 一歩でかなり先に進み、地面は抉るわ木々は砕けるわの速度を出していた。


 流石に申し訳ないので、削った瞬間に地形を修復、木々などはある種の生命なので、蘇生させてお詫びにある程度の力を施していった。


 相手にも気づかれているし⋯⋯ま、こんな派手に移動してたら当たり前か。


「ッ! 主人、すみません」


 魔法を切って、主人の服を掴んで飛び退いた。


 目の前の爆薬の罠が発動され、爆発する。


 対人間用ではなく獣用である。

 捕獲罠⋯⋯獣と言うよりも魔獣か。魔物寄りの獣を魔獣と言う。


「よぉ、お客さん」


 私達は相手の根城に着いていたようだ。

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