奴隷、雑魚狩りをする
墓地に到着する。この場は瘴気に満ちており、とても臭かった。
腐敗臭と言うのだろうか。肉の腐った臭いがする。
死体は火葬した後に墓に埋めるのが普通なので、この腐敗臭は多分、この場で死んだ魔物だろう。
生命を羨み命を得ようとするアンデットが魔物を狩り、その魔物が死んで瘴気に犯されて、ゾンビになる。そしてゾンビから腐敗臭と瘴気が漏れ出る。
周囲を見れば、徘徊しているボロボロの武具を装備したスケルトンや魔物のゾンビが居る。
統制の取れた動きを見せるのスケルトン達を見れば、確実に誰かが指示を出しているのが分かる。
「それじゃ、探すか」
「海也」
「なんだ霧矢?」
「お前がアークリッチを殺れ。俺達は雑魚の処理をする」
「お? 良いのか。ミア、行くぞ」
「はい」
スケルトン達が向かっている場所を追って特定すれば、アークリッチを見つける事は可能だろう。ただ、気になったのはタナカの目が、何か違う気がしたのだ。
タナカは独特な形をした剣を抜いて、イシガミの前に出す。
「エンチャントを」
「オーケーオーケー。エンチャントマジック、ホーリーエレメンタル」
聖属性を付与し、剣が明るく発光する。
タナカは付近にいる敵に向けて剣を振るう。
「亜空切断!」
叫び、周囲のゾンビやスケルトンが切り裂かれて消滅して行く。
主人がスケルトン達が進む方向を見て、その先に向かって突き進む。私もその主人について行く。
神界のエネルギーを欲するアンデット。弱点だが、生命を羨み欲するアンデットは神界の力はとても欲するのだ。
よく分からない。成仏したいのが本能的にあるのかもしれない。
反対に地獄のエネルギーだとアンデットは圧倒的な強者だと悟り、逃げるようになる。
そして、私はその中間に位置する。その場合、アンデットはどのような反応をするのか。
答えは、一定の距離で止まるであった。
地獄の存在だから近づけない。しかし、神界の存在だから自分を成仏、或いは復活させてくれるから近づきたい。
そんな感じなのかな?
(スケルトンナイトが近づいて来ない? ま、良いや。既にターゲットは見つけているし。先手必勝だ!)
「我が声に応え、敵を打て、ホーリーショット!」
主人が空に向かって聖属性の弾丸を放つ。
私は少し集中して気配を探る。⋯⋯ふむ。主人はアークリッチに向けて魔法を放ったようだ。
それも正確に、確実にリッチに当たる軌道である。
「ち、意味なかったか」
それから数秒後、大量のスケルトンに武装させ、守らせている集団がある。その一番奥にリッチは居る。
スケルトン達はリッチに近い程、装備が良かった。リッチの傍に控えているスケルトンはフルプレートアーマーに大剣で、それもきちんと手入れのされた装備である。
「邪魔だな。属性付与、聖属性。剣技、高速連斬!」
目の前にいるスケルトン達を次々に切り伏せる。
私も仕事をしよう。
地面に手を触れて、神界の魔法を使って浄化して行く。
『かなり強い神聖な力を感じるな。あの人間は、強い。その奥は、更に強い。行け!』
スケルトン達が全員私達に向かって突き進んで来る。
私には接近して来ないと思ったが、一番武装が良いスケルトンが私の目の前まで来て、剣を振るう。
「おっと」
剣で受け流し、スケルトンの首を落とす。しかし、すぐに顔が浮かび上がり、首と顔をくっ付けて復活する。
「主人はリッチを」
「ああ。頼んだ!」
私も大分信頼されているようである。
私はスケルトンから距離をとる。
アンデットには聖属性や光属性、或いは火属性の魔法、私の場合は更に神聖魔法や神界のエネルギーを使った魔法など有効だ。
だが、他にもある。
「目には目を歯には歯を、アンデットにはアンデットを」
誰かに聞いたか忘れた言葉を言いながら、私はアンデットを作り出す。
ここにはアンデットの生命線、生まれてしまう元凶、瘴気が多い。後で浄化しておこう。
「クリエイトアンデット」
瘴気を固め、魔法により肉体を生成させ、地獄のエネルギーを込めて強化する。
生み出したのは地獄のソンビ。だが、強さは魔界の中辺りの強さの魔物程度で、大した強さはない。
真っ黒な腐敗した肉と骨を持ったゾンビがスケルトン達を倒し、その骨を食らっていく。
アンデットがアンデットを倒すのなら、相手の肉体をその身に吸収するしか方法がない。
下手にアンデットを呼び寄せるのが嫌だから、この方法を取ったが、少し非人道的だったか。
「ま、良いや」
◇
「ハッ!」
アンデット特攻レベル6、スケルトン系統キラーレベル2、更に属性付与レベル4での聖属性付与。
これでかなりのダメージを一回で出せる筈だ。
『ダークショット』
気迫と共に上段から振り下ろす剣を黒い弾丸の魔法で弾き返される。
左足を引いて、体勢を固定し、剣を手首のスナップを利用し振り上げる。
リッチの骨を少し削る。
『クソが。シャドウスフィア!』
影の弾丸が四つ飛んで来る。
「四枚刃」
剣術熟練度レベル14で手に入る剣技の技、同時に四本の斬撃を放つ技術スキルである。
シャドウスフィアを斬る事に成功し、小さな爆発を生み出し煙を出現させる。
その中を突き進み、煙から跳び出るとリッチを視界に収める。
「これで、終わりだ! 筋力増強!」
スキルを使い攻撃力を上げて、落下の遠心力も利用して、最大限の攻撃力で攻撃する。
この一撃でリッチは倒れる。
『見事』
「お前も良く近接相手に魔法で戦ったよ」
リッチとの戦いはそこそこ時間を要した。
近接で戦った事により大きな魔法は使わせなかったが、詠唱無しで速度の速い魔法で応戦された。
ショットやスフィア系の魔法で攻撃を弾かれ、更にそこで崩された体勢の俺に向かって魔法を放って来る。
俺は沢山のスキルを持っている代わりにそこまでレベルが高くない。故に、一撃で倒せると言うのは無かった。
「たっく。霧矢なら一撃だったな」
アイツの持っているチートスキルならこんな雑魚は敵にすら成らないだろう。
なんで俺にリッチを譲ったのだろうか?
「レベル上げしなくて良かったのか? いや、もうレベル上げも打ち止めなのか?」
リッチを倒した少しした後、俺の腹は背中から貫かれた。
「がは!」
視界が揺らがう。焦点が合わない。熱い。痛い。
違う。なんだこれ。俺は誰に? 索敵に魔物の反応は無かった。
口から大量の血が出る。腹から見える銀色の刀。この刀は⋯⋯。
「なん、で」
俺の意識がゆっくりと闇へと沈む。




