転生、そして出会い、そして主人公
俺は小林海也。
ごくごく平凡の工場員だ。給料もそこまで高くない。
中卒で、今までただ働いていた。
働く事即ち人生である俺は今日も晩御飯を買って家に帰っているところだった。
妹から送られて来る姪っ子の写真を見て、傘をさす。
大雨だ。雷も鳴っている。
「天気予報役立たんな」
なーにが快晴だ。
そして、俺は雷に撃たれた。
目が覚めると、明るい煌びやかな所に居た。俺は、死んで居なかったのか?
いや、死んだからこんな所に居るのか?
そして、目の前に女性が居た。露出の多い、ボッキュッボンだ。
◇
「つまり、俺は女神の貴方の手違いで死んだと?」
「ハイハイそうです。十回目ですけど、分かりましたか?」
「ええ、つまり、こっから異世界に行くんですね!」
「あ、そうです」
「チートは!」
「あるんじゃないですか?」
「うっひょー!」
「ネットとかありませんよ?」
「良いですよ!」
「未練はありませんか?」
「ありません!」
「悲しいですね。それでは、行ってらっしゃい」
(まずは自分の確認をしてから魔法の確認、その後は冒険者ギルドだ! 楽しみだな!)
そして俺は異世界に転生した。
雷が直撃し、目覚めたら目の前に女神が居て、異世界転生ができた。
両親は事故で他界し、妹は玉の輿に乗って幸せで毎日のように姪っ子の自慢をして来て、俺の役目は終わっている。
だから、未練はない。
ネット? 妹を学校に通わせる為に中卒でガムシャラに働いた俺にネットはぶっちゃけ興味無い。
本当に、楽しみだ。二度目の人生はスローライフをエンジョイするぜ! ま、その前に冒険だな。
俺が居なく成った後の女神。
「頭のおかしい人間ですね。にしても別に間違いじゃないんですけど、マニュアルって変ですね。はぁミアさんが消えてから、その部下が私に流れて、管理しないといけないのに、今年の転生者送りは私の役目、はぁめんどくさい。まぁ地獄よりかは重労働ではないですけど、そこまで来る魂も無いし。閻魔さんが失踪してから何千年でしたっけ? 大丈夫でしょうかね? あそこは沢山魂が来るのに。ま、いいや。寝よ。今日の仕事終わり!」
◆
「生きて」
そう、私は母に突き飛ばされ、地獄に落ちた。母は白米帝国の兵士に殺された。
地獄は人間には生きにくい環境だった。だけど、必死にもがいて、いずれ生活に慣れて、弱い敵から狩って狩って生き残って狩って狩って死にかけて生きて生きて、その結果【閻魔】と呼ばれだした。
仕事は多忙だった。
何故なら、地獄に落ちる生物の魂は多いからだ。
罪に合った地獄を味わせる為に相手の罪を見てから決める。それを一人で行わいといけない。
人間界で夏になると蚊が大量に地獄に来る。邪魔である。
そして私は人間界に逃げて、いや、戻って、母の仇を打った。
私は人間を辞めていたのか、既にかなりの年月を生きていた。
私を殺しに天使が来たので、返り討ちにして天界に行き、そこで身分を隠して生活したら天使の力を手に入れた。
天使の仕事はあんまり覚えてない。
長年生きて、私は地獄の悪魔の力と神界の天使の力、両方とも使えるくらいには成長した。
今では上に立つ存在になり、下の者達の事を考えにくい立場に成った。
母の復讐を果たせている私は、あるか分かんなく成った寿命まで仕事をする予定だ。
しかし、下の者になってモノを考えたいと思い、私は人間界に行き、奴隷になった。
◇
現在、私【ミア・セツ・パンスペル】はボロい服にボロい鎖を腕と首につけている。
もう何万年、或いは何十万年と生きた私。
体は十六歳くらいで止まっていた。
奴隷になってから三年、未だに主が出来ない売れ残りである。
力を分離させ封印しているので、神界や地獄の方にも私の存在はバレてない。
「暇だ」
そこに商人と一人の青年が来た。青年の格好は冒険者だろうか?
「可愛い。紅い瞳、銀色の髪、吸血鬼?」
人間だと思うよ?
そして私は、青年に買われた。
奴隷紋、奴隷の証なのだが、効力が弱すぎて私には効かない。なのでバレないように自分で付ける。
場所を移動して宿、私はベットに座り、対面のベットには主が座っている。
「俺の名前は小林海也だ」
「コバヤシ・ウミヤ⋯⋯様?」
「様は要らないよ」
奴隷の主としてどうなのか? 主人とでも呼ぼうか。
「君の名前は?」
「ミア・セツ・パンスペルです」
「そうか。さて、今日はダンジョンに行く予定だったんだ。まずは君の武器を買おうか」
私は戦闘奴隷である。女性であるので性奴隷にされるかと思ったが、そもそも性奴隷は数十年前に廃止されたそうだ。
裏ではあるようだが。
にしても、奴隷にきちんと武器を持たせるのだな。少しでも戦力増強が良いのだろう。
私は片手剣を選び、軽装備を選んだ。
(ふむ。奴隷ってもう少し控えめの性格かと思ったけど、違うんだな)
まずい!
主人が凄い疑問な目を向けて来る。何か間違っていただろうか?
下の者の事を考えるために一番下の奴隷を選んだが、やはり難しいのだな。
何に対して疑問に思ったのか分からない。
そうやって私がオドオドしていると、何を勘違いしたのか、主人は「いいよ」と言って来る。いい笑顔だ。
何が良いのだろうか? しかし、分かった。
「ありがとうございます」
部下の天使や悪魔を思い出しながら言葉を絞る。
てか、なんで私は神と同じ土俵に立って仕事をしていたんだろう。
ダメだな。過去の話過ぎて全然覚えてないや。
ダンジョンに移動した。
C級ダンジョン。冒険者歴5年の中級者レベルの人達が来るレベル。
中は迷路形式だ。
「さーてと、サーチ!」
ゾワッと来た。気持ち悪さに反射的に反抗してしまった。
「あ、あれ? なんでサーチのスキルが発動しないんだろ? もう一回やるか」
す、スキル?
なんかどっかで聞いた事があるような? だけど、どうでも良かった気がする。
と、取り敢えずあれは主人がやった事か。
我慢我慢。
「サーチ! ⋯⋯出来た? マップ」
空間が歪んでいる。少し目に体内エネルギーを集中させて、見る。
半透明の地図が浮かんでいた。この迷宮の地図らしい。
「よし、こっちだ」
「はい」
ダンジョンは神が作り出した娯楽の一つである。確か⋯⋯覚えてないしいいや。
最初に遭遇した魔物はジャイアントオーク。
大きな二足歩行の豚だ。腹の部分が美味い。
「主人、お下がりを」
奴隷がこんな口を利いて良いのだろうか? 疑問である。
「いや、問題ない。ヘルフレア!」
濃い赤色の炎がオークを包み込み、骨まで溶かした。
ダンジョンの魔物は死ぬと塵になり、魔石だけを落とす。
ヘルフレアか。地獄の私の方の下っ端が使っていた気がするな。
それに比べると火力が低い。それで負けるオーク弱すぎだろ。
主人が魔石を回収してこっちを見てくる。
え、なに。私何かした? もしかして戦わなかったのを怒ってる?
ならば!
「ご、ごめんなさい!」
「なんで!」
驚かれた。主人は不思議だな。この世の人とは思えない気配がする。私も勘が狂ったのかな?
お読み下さりありがとうございます!