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第6話

 結果、私は未だにハロルドと夫婦のままで居る。

 ただし、三人とは手を切ってもらった。

 と言うより、彼は彼女達にすっぱりと振られたのだ。

 さすがに本妻含めの四つ股には皆退いた。

 そして彼が種無しだと判れば、お嬢さんと未亡人はあっさり次の相手を探しにいった。

 ちなみに既婚者の彼女はどうも私が怖くなったと。

 浮気はしていたが、夫にばれることを実は怖れていたらしい。


「それでいいの?」


とパトリシアは尋ねる。


「構わないわ。だって、これでよく判ったと思うもの。隠したってこうやって私にばれるんだからスリルなんて意味は無いって」

「でも何かそれって負けた気がしない? 浮気した方が何もされずにって。いくら兄でもそう思うわ」

「あらパティ、彼には辛いと思うわよ」

「どうして?」

「わざわざ浮気のスリルを求めて結婚した彼が、浮気そのものができなくなるんですもの。それって下手に離婚して慰謝料取るより、彼には残酷だと思うわ」


 そう。

 彼のそれは性癖だ。

 たとえば人の行為をのぞき見することの方が、実際のそれより興奮するというひとが居る。

 麻酔や睡眠薬で動かなくなった女性にだけ(・・)興奮するという人も居る。

 ルイス・キャロルの少女趣味然り。

 なかなか人には言えない、理解されない性癖の人間というのは本当に居るのだ。

 まあ考えようによっては、あの家庭教師を後ろから馬の様に犯すのが好きという金持ち達もそうなのかもしれない。

 そしてハロルドは「結婚して」いる状態で「他の女に」しか(・・)欲情できないという性癖なのだ。

 裏返せば、結婚した状態で私以外の女に手を出せないということは、結構な苦痛だと思う。

 何せそんな欲望のためにわざわざ私を選んで三年かけて結婚した訳だ。

 自分に恩を感じて何もしないと思ったのだろう。

 残念なことだ!

 彼にとっての計算違いは、私には家庭教師ができる程度には考える頭があったことだ。

 そして彼自身、種無しと気付けなかったということ。

 これは実家に言わない、言えないらしい。

 すると子供ができないのは私が石女ということになる。

 それは彼の負い目となるだろう。


 ということで私はこの先も仕事をばりばりやって生活を豊かにしてくれる彼を縛ることができる。

 せっかくの永久就職場所を提供してくれたのだ。

 浮気が減ればストレスはたまるだろうが、下手な支出も減る。

 そのストレスで自滅したところで、私のせいではない。

 彼は見誤ったのだ。

 私がいつまでも状況に泣き寝入りしている女ではない、ということを。

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