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第5話

 私はハロルドに証拠を突きつけて理由を聞いた。

 そして言ったのがあの言葉だ。

 浮気をしているというスリルを味わいたいから、結婚をした。

 もの凄く本末転倒な結婚理由だ。

 それにもの凄くリスキーだ。


「それで、三人のお相手は、貴方のその趣味を知っているの?」

「そうだな、結婚しているとは言ったが、他に居るか居ないかまでは想像次第かな」

「よくそれで平気よね」

「お前も結構冷静だな」

「冷静?」


 今度は私が薄く笑った。


「そんな訳無いでしょう? 結婚した時あれでも処女だったのよ。それを捧げた相手が同時に三人の別の女に突っ込んでいると考えたら!」

「不潔! というのかい?」

「いいえ、何で私に子供ができないのかよく判ったわ」

「何だって?」

「だって貴方、種無しでしょう?」


 私はずばりと言った。 


「は? 何を言うんだ」

「あのね、貴方が最後に彼女達に会ったあと、私それぞれにお手紙を出したのよ」

「……ほう」

「それでこの間、皆で集まったの。貴方と関係がある女、皆でね」


 今度は彼が唖然とした。


「さすがに既婚者のアリスさんは避妊をできるだけしていた様だけど? 海綿とか用意して。だけどまだうら若きジェーン嬢も未亡人のエディットさんはむしろ子供を欲しがっていた様よ。そうすればまだ子供が居ない私とその立場が替われるんじゃないかって。だから避妊どころか、割と妊娠しやすい日に貴方と行為をしたって言ってるのよ。でもできないって言ってたわ。皆身体は健康。特にエディットさんには子供が一人居るの。妊娠できるの判っているのよね。でもできない。サックも使っていないらしいのに。さてどうかしら?」


 彼の目が泳ぐ。

 さすがに女達がそこまで考えていたとは彼は思っていなかったのか。


「……で、お前はどうしたいんだ? 離婚したいのか?」

「さてどうしようかしら」


 私はにやりと笑った。

 正直どっちでもいい、と思っている。

 確かに当初知った時には怒りが湧いた。

 それは彼に対しても、相手の女性に対しても。

 だが彼の三人の愛人達に会ってちょっと気が変わり。

 そして今さっき、彼の理由を聞いて馬鹿馬鹿しい程その気が冷めた。


「離婚するかどうかは私の気分次第ってことになるわね。ところで貴方はどうなの?」


 にっこりと笑って私は彼に問うた。


「俺か?」

「だってそうでしょう? 私は離婚しても、また家庭教師をすればいいわ。だってもうあの頃とは違って、結構歳もとってきたし、ふてぶてしくもなったし処女でもない。あの頃より押しも強くなったわ。子供もできなかった身一つだから、何とでもなる。けど貴方はどう?」

「どう、って」

「これで四つ股かけての離婚なんてことになったらそれはもう、さすがに弁護士としてやっていけないんじゃない? ああ、顔合わせした皆さんね、もし私が離婚という手をとったら協力しますって。そうしたら慰謝料要らないって言ったし。さあそういう貴方の評判はどうかしら?」

「ぐぬぬ」

「その辺りを無かったことにしても、貴方はこの先やっぱり子供ができないということでご両親に何かと言われるでしょうねえ。奥さんが変わったとしてもきっとそれは変わらないのだったら」

「お前は何を俺にさせたいんだ……」


 ハロルドはうめく様に私に問いかけた。  


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